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空寝ひつじ
2021年12月18日 19:48
はじめに戦前から戦後にかけてできた、“大衆”や“我々”といった羊の群れのような概念がある。そこからこぼれ落ちてしまったその一匹は、群れに溶け込めず、怠惰な生を続けるには文学に縋るしかなかったと思う。文学は異端者を受け止めてくれる。どんな人間でも、変幻自在に受け入れてくれる。そう思う。令和。僕は異端ではなかった。別に、ごく普通の、よくいる、いい感じの家庭で生まれ育って、そこそこ
2021年12月31日 20:02
【99匹のうちの1匹】一度僕が死んだとして、それは正常でいわゆる正義なのだと思った。悲しいのも、さみしいのも、全部、死人のものじゃなかった。感情を抱えるのは現世の特権。死んでゆく夜を捕まえて、お前はまだ死ぬなと叫んだ日、代わりに僕が少しずつ死んでいるような気がして、だんだん、だんだん、季節の狭間の溝に、浸かっていった。僕がこのまま夜に浸かって消えて無くなってしまっても、僕は僕のことを