見出し画像

【感想・あらすじ】夜明けのはざま 町田そのこ

芥子実庵という家族葬専門の葬儀社で働く人たちの物語。

友人の死を目にし葬儀担当者として精一杯の葬儀を執り行う女性。

貧しい家庭に生まれ、母の葬儀をまともに行えなかった新人社員の男性。

妻子を失い、葬儀社でしか働こうとしない男性。

葬儀社社長なのにも関わらず「死」に対する恐怖を克服できない男性。

だれもが、心にわだかまりを抱えているが、葬儀を通して自分と向き合っていく。

仕事への誇りを胸に、葛藤しつつも決心を固めていく。




「死」に対する考え方が変わる

「死ぬこと」にはマイナスなイメージがどうしてもある。

もちろん、命が終わることは悲しいこと。

しかし、この作品を読むことで「死」に対する考えが少し優しいものになった。

身内が亡くなった時、周りは涙して悲しみに暮れる。

しかし、葬儀では

「故人が喜ぶ方法で送ってあげたい」

という気持ちを尊重した葬儀を執り行う場面がある。

中には、

「自分が死んだときにはこのように送り出してほしい」

というエンディングノートを遺している人もいた。

葬儀には、本人の気持ちを尊重して送り出してあげられる、という素晴らしさがあることを知った。

エンディングノートについては徐々に知られるようになってきたが、

まだまだ浸透していないように感じる。

もっと広まってほしいと感じた。


葬儀社への偏見

世の中では

「女性なんだから死体に触る仕事はしてほしくない」

という考えを持つ人もいるよう。

正直、そこまで真剣に考えたことはなかったので驚いた。

私は病院勤務の看護師なので、永眠された方の処置をする機会がある。

そのこと自体に嫌悪感を感じたことはなく

「頑張ったね」

と丁寧な処置をして送り出してあげたいと思っている。

また、葬儀社ともなると生前の故人のように顔色をよく見えるよう

お化粧をしたり、けががひどい場合は綿を使って見た目だけでも修復することがある。

故人だけでなく、ご遺族への配慮も考えられた素晴らしい仕事だと思う。

「葬儀ディレクターは愛の詰まった優しい仕事」

本書を通じてたくさんの人に届いてほしい。


仕事と人生のはざまでの決断

私生活を充実させたい、そう思う人は少なくない。

でも、今の仕事が大好きで誇りを感じている。

そんな折に、仕事と私生活のどちらを優先させるか、

という重大な決断を迫られる瞬間が来るかもしれない。

本作の女性主人公は、悩みに悩んだ。

自分にとって今の仕事は簡単にやめられるものなのか。

自分の仕事を理解してくれないパートナー。

そして、どうしてもどちらかを選ばないといけなくなった…

流されることなく、自分の気持ちに正直になって決断をした。

強い心を持つ女性の姿が印象的だった。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集