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【書評・あらすじ】犬のかたちをしているもの(高瀬隼子)

第43回すばる文学賞受賞作。

主人公は彼氏と二人で暮らしている、30歳代の女性。

ある日、彼氏がお金を使って女性と関係を持ち、彼女を妊娠させてしまう。

主人公カップルと例の女性が3人で会うことになるが、

女性は「産んだらあげる」という。

妊娠・出産を「クリアすることで認められる」という独特の考えを持っているよう。

主人公カップルの将来が、生まれてくる子どもに翻弄されていく。


3人の「これから」を主人公目線で追っていく物語。




主人公の心理描写が切ない

主人公は、数年前に卵巣の手術をしており妊娠が難しい体。

また、3か月たつと男性との夜の関係に嫌気がさしてしまう、という悩みを持っている。

現在の彼氏とも関係がなくなってから数年たっている。

そんな中で、ありえないけど彼氏の遺伝子を持つ子どもを「もらえる」という話は魅力的だった。

表面上では「ふざけんな」と思いつつ、子どもをもらってからのことを想像してしまう。

その心情がなんとも切ない。

浮気は許せない。

でも、子どもを持つことが可能なのかも。

終盤に主人公の気持ちが覆されることになり、

「あぁ、やっぱりか…」と空しくなった。


浮気相手の女性の考え方が尖がってる

なんといっても、浮気相手の女性がヤバい!

「ヤバい」の一言で伝えきれない。

とにかく、世間から認められることを重視している。

「妊娠・出産することで、人生の一つのステージをクリアできる」

「とりあえず子どもを産んでおけば、周りから認められる」

うん、尖りまくり。

周りの目を気にして生きているような、

なんとしてでも自分の存在を認めさせたいような、

なにか必死さも感じる。

気持ちがわかるような、わからないような…

でも、子どもを産まなくても、その人はその人。

自分の存在価値を他人の判断に決めさせるのは、どうなのか。

自分が自分であると自信をもって言えることが、

1番大事なのではないか。

なんだか、色々考えさせられた。




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