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【書評・あらすじ】レーエンデ国物語(多崎礼)

シリーズの第3作目。

舞台は貧しくなったレーエンデにある娼館。

娼館で双子の男の子が生まれ、成長するに従いそれぞれの生き方を選ぶことに。

アーロンは男娼として、リーアンは劇作家として。

お互いを心の支えとしていた二人にとって、生きる世界が変わることはとても苦しいことだった。

しかし、互いの気持ちが通じることはなく思いがすれ違い、軋轢が生じてしまう。


しかし、成長した二人の絆が再び結びつくように。

かつて存在したレーエンデの英雄「テッサ」の存在が二人を引き寄せたのだ。

今あるレーエンデ国民の扱いに納得がいかない二人は「テッサ」にまつわる情報を集め、演劇にしようと画策する。

演劇には種族を超えて一丸となる魔法のような力がある。

その力を用いて、今レーエンデ国民とイジョルニ人に真の歴史を伝え、レーエンデに矜持を取り戻そうと奮闘する。

新たな革命の物語。




双子の青年のすれ違い

双子はそれぞれ自分の気持ちに素直になれず、思っていることとは裏腹な言葉を発してしまう。

そう、絵にかいたようなツンデレだ。

お互いのことがすごーく大切なのに、どうしてもぞんざいな言葉を投げかけてしまう。

ツンデレの原因には過去のトラウマがあり、現在の反発心が関わっているのだが…

ながーい時間をかけて、お互いを真に理解するまでの過程がもどかしい。

でも、二人の成長を見守っている感覚にもなり、なんだかほほえましい感じもする。


兄弟を思う愛の深さ

すれ違いを乗り越え、互いを理解した双子。

言葉にはできなくても、実は心の底から互いを案じ、愛していた。

その事実が判明したのはすごくいいこと。

でも、運命は残酷にも二人を引き裂こうとする…

愛がはっきりと伝わるまでにも、ところどころお互いを気遣う場面があり、ほっこりする。

「あー、素直になれないのねー」

と、なぜか親目線で温かく見守っている自分がいた。(笑)

レーエンデへの誇りを忘れない気持ち

時代は変われど、レーエンデを思う気持ちが費えることはない。

第1作である「レーエンデ国物語」の時代から何百年も経っている。

第1作の主人公「ユリア・シュライヴァ」が抱いたレーエンデへの愛を

第2作の「月と太陽」の主人公「テッサ」が引き継ぎ、

第3作の主人公である「アーロンとリーアン」が「テッサ」の思いを引き継ぐ。

例え、革命の歴史が伏せられようと、密かに語り継がれ矜持が受け継がれていく。

暗いレーエンデに一筋の光が差し、何百年もかけてやっと思いが報われる。

ここまで故郷や自国を想うことができるのは、本当にすごいと思う。

「自分にはどうすることもできない」

「このまま滅びてゆくんだ」

と嘆くのではなく

「どうにかしないと!」

「種族を超えて、一丸になるんだ」

と行動を起こすのはとてもエネルギーがいる。


私は基本、受け身の姿勢が多い。

主人公たちの熱い気持ちを見習って、行動を起こす勇気を持とうと思う。

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