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【あらすじ・感想】宿神 夢枕獏

「宿神」

それは、もの・植物・動物すべてに宿る神

またの名を「後戸の神」「魔多羅神」ともいう。

芸を生業とする浮世離れした人々の信仰神でもある。


佐藤義清は平清盛とともに「北面の者」として

上皇の身辺警護をしている。

蹴鞠を得意とし、弓矢の技術に秀でた義清は上皇のお気に入りでもあった。

上皇と親交を深める中、側室の待賢門院に恋をする。

また、蹴鞠をしている最中に宿神を目にする。

神の存在、恋、自身の立場。

様々な陰謀が渦巻く乱世を生き抜く義清の目を通し、

時代の移り変わりを読み解いていく。

シリーズは全4巻で構成されており、

平安時代周辺を舞台に、時代の移り変わりや

一族同士の熾烈な戦い・争いが描かれている。

一冊一冊の厚みがあり、読み切るまでに時間を要した。

でも、読めてよかった!

そんな作品。



時代小説とは思えない読みやすさ

パッと見、厚みがあって4巻もあって、時代小説…

読みにくいんだろうな、と思った矢先、

読んでみるとスイスイ読める!

文体が難しくなくて、登場人物の会話も現代風で

とっても読みやすかった!

ページ数があるため、1冊を読み終えるのに時間がかかったものの、

時代小説に苦手意識のある人にもぜひ、お勧めしたい。


登場人物のキャラが濃い

主人公の名は、佐藤義清

…初めて聞く名前。

歴史の教科書に載るほどの有名人ではないようだ。

歴史の知識がかなり浅い私にとっては初めましてだった。

しかし、あの平清盛と盟友であるからしてかなりの重要人物のよう。


時代小説を読んでいると、こういう裏方人物を知ることができるのも楽しみの一つと言える。

そして、この佐藤さんはとんでもない経験を積み重ねてゆく。

本書はたくさんの資料を基に、彼の生きた道や考えを描いている。

佐藤義清さんについて知ることができたことに感謝!

また、そのほかにも佐藤さんの身の回りにはキャラの濃い人たちがわんさかといる。

時代ならではのキャラも引き立っており、読みごたえ抜群だ。

また、当時盛んだった和歌もたくさん紹介されており、言葉遊びのおもしろさも垣間見えた。


教科書の裏で活躍した人物

佐藤義清さんのように、表舞台とは別の舞台で活躍した人物はたくさんいる。

上皇の政治に大きく影響を与えた側室、

国家転覆という陰謀を企んでいる賊、

殺されるはずだった逆賊の子など…

そういった人物の言動も描かれている。

はるか昔に起きた戦いや駆け引きにひやひやしたり、

人間とは思えない所業に怒ったり、

感情を揺さぶられながら、たくさんの出来事を知ることができた。


ほんとに「読むことができてよかった」と思える作品。


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