北海道浦臼町・ジビエ処理加工センター「北海道シュヴルイユ浦臼工場」の視察研修。
8/30に、浦臼町にある、浦臼ジビエ処理加工センター「北海道シュヴルイユ浦臼工場」に会長・副会長の2名で見学に行ってきました。
(※今回、参加をご希望された会員さんも多かったのですが、昨今の世情を鑑みて、空知管内に居住する会員のみで訪問することにしました。)
(※解体の様子は、写真に掲載しておりませんが、枝肉の写真が下の方にあります。苦手な方は、閲覧をお控えください。)
地元・空知地方でも多い、鹿による農業被害を減らすため、また増えすぎた鹿(アイヌ語ではyuk《ユク》と言います。)を適正な頭数で維持するため、駆除した鹿肉の有効利用を担う施設として注目されています。
(適正な頭数とは?には、様々な意見がありますが、ここでは割愛させていただきます。エゾオオカミの絶滅など、考えるべきことが山積しています。)
見学に際し、加工センター工場長・新谷さん、町職員の内藤さんには、お忙しい中、時間を作っていただき、予定時間を超えての見学、説明をしていただきました。
(写真は、町職員の内藤さんと、副会長の菊谷です。)
とても丁寧にこちらの疑問にも答えていただき、この場を借りてお礼を申し上げます。
地元出身で、浦臼町をこよなく愛し、様々な事業を仕掛けている内藤さんは、まさに「スーパー公務員」そのものでした。
この見学から、これからの農業にとって、無くてはならない施設であることがとてもよく分かりました。
また、動物の命を頂くことも考えさせられる時間でした。
(浦臼町のクリアファイル。素敵ですよね!)
■ジビエ加工センターとは?
浦臼町が地域で年々被害が増えている害獣被害を減らすことを目的に、国のジビエ倍増モデル事業の補助金を利用して建設費の一部を賄う形で建設し、民間企業の㈱アイマトンに運営委託しています。
(アイマトンさんとは、同じ空知管内にある滝川市に拠点をもつ企業です。)
稼働は2019年1月から始まり、害獣駆除のため様々な認証を取得し、国の事業としては北海道で唯一の施設。
施設は「減量化施設」と「食肉加工施設」があります。
「減量化施設」とは鹿の解体で出た、内臓や皮、骨等を隣の微生物を利用した処理方法により、廃棄物としての量を減らす施設です。
(こちらの写真は、外から見た減量化施設。広大な敷地にゆとりをもって敷設されていました。)
食肉加工施設は、受け入れた個体を一次室で血抜き、内臓取り出し、解体し枝肉の状態になった鹿を、加工室で各部位ごとに切り分け、真空パックで個別包装し、異物検査を行い出荷までを行います。
ジビエ加工センターでは日々なにを行っているのか?
同センターでは、鹿を撃ってから2時間以内の個体を受け入れています。
(ちなみに移動式の処理場も、車2台ありました。↓)
受け入れ時間は、日の出の一時間後から日没までとなっており、日によって受け入れる数も変わり、多い日は何十頭と処理しなければならない日もあるそうです。
個体は受け入れ後、解体され、部位ごとに切り分けを行い、真空パックで包装し高温殺菌の後、最後にX線による異物残留の検査を行い出荷となります。
(真空パックの機械。安全にも配慮されていました。)
猟銃での捕獲だと銃弾の破片が混入してしまうのでは、と気になる方もいるかもしれません。
ですが、センターで行うX線の機械での検査では、0.2mmまでの異物が検知でき、これまでの金属探知機での検査よりも精度が数倍上がり、より安全に食べられるようになったそうです。
(こちら↓)
(↑日頃、鹿肉を食している会長・今野も熱湯での消毒工程に興味深々でした。)
より安心して食べられる仕組みもあります。
出荷の際に貼られるラベルに、QRコードがつけられ、これを読み込んで(株)アイマトンのウェブサイトを開き個体識別番号をいれると、いつ、だれが、どこで捕獲し、どのような個体で、どこの加工施設もわかるようになって販売されるそうです。
是非、お店でQRコード付きの鹿肉が売っていたら調べてみてください。
お住まいの地域の鹿かもしれません。
(アルカリ水と酸性水が出てくる機械。ここから各所に水が流れていきます。)
■センターの稼働状況は?
年間の目標頭数は、800頭となっています。
初年度は目標頭数には届かなかったそうですが、昨年は年間1400頭数を受け入れており、年間の目標頭数の800頭を大幅に超える受け入れがありました。
捕獲の地域は、芦別市、奈井江町、新十津川町と中空知が特に多いようです。これだけ捕獲しても、まだまだ、農業被害はでており、今後も捕獲は増えていくようです。
■食肉になる基準は?
受け入れ時に100点が与えられ、そこから、個体の大きさ、猟銃の被弾の位置、等の審査項目からの減点方式でチェックを受け、点数が75点以上の個体が食肉用になります。
75点を下回るとペット用として出荷されます。
中には、ペット用にもできない損傷の大きい個体も稀に入ってくるそうです。
そのような個体は、減量化施設でそのまま処理されることになります。
最近は、鹿肉のペットフードの需要が増えてきて、外国産が多いペットフードも国産の原料が注目されています。
当会の会員さんの声でも「ジビエを利用したいが、放射能の問題が気になって…。」というものがありましたね。
■鹿を撃つことの難しさ
被弾した部位で点数が決まりますが、頭や首の場合は減点がなく、高い点数が付きます。しかし、この頭や首に命中させるのも至難の技のようです。
動物相手なので、狙いを定めても動く上に、場所も山の中です。
視界も悪く足場も悪い中、頭や首に命中させるのは職人技といえますよね。
日々、狩猟で尽力されているハンターの方たちには頭の下がる思いです。
■ハンターの方たち
鹿の持ち込みが出来るのは、事前に登録されたハンターのみです。
現在は167名の方が登録し、南は長沼、北は留萌方面、そして石狩方面もいるそうです。
浦臼町では、4名の方が常時活動されています。
加工センターに登録しているハンター全体の年齢層はやはり高く、高齢化も著しく進んでいるそうです。
若いハンターの方もいらっしゃいますが、まだまだ、割合は少なく今後は新たな若い方たちの登録も進んでいくことが、望まれています。
また、ハンターの方達に継続して鹿の持ち込みをしてもらうには、利益還元も重要になってきます。安定して、鹿を受け入れることで、市場流通が進み、鹿肉の消費が増えることで、次年度のハンターに支払われる買取価格や持ち込み料金にも反映されることになるそうです。
一般消費者の私たちは、すこしでも消費に貢献することで、ハンターの方々に鹿肉を食べさせていただく恩返しもできますね。
■どこで鹿肉が買えるの?
一部スーパーでも鹿肉が購入できるそうです。
滝川では「生鮮おろし」というスーパー、札幌市内でも一部のジョイフルエーケーで購入できるようです。
私(菊谷)の住む岩見沢市では、まだ、購入できるお店を見つけられていませんが、買い物に行った際には、お肉コーナーをよく見てみてみようと思います。
鹿の塊肉に挑戦するのはハードルが高い方には、ドライブがてら浦臼町に行ってみるのもおすすめです。
町内の飲食店2店舗
・「館」さん
・「わか杉」さん
にて、鹿肉ソーセージを使った料理が味わえます!
メニューに載ってない場合があるので、お店の方に聞いてみてください♪
美味しい鹿肉ソーセージを使った食事が楽しめますよ。
さらに、町内のスーパーと道の駅では鹿肉ソーセージをお安く購入できます!
近くに行った際には是非、購入してみてください!
私も見学の帰りに早速購入して、家で焼いて食べましたが、むちゃくちゃジューシーで美味しくて臭みも殆どなく言われなければ、鹿肉だとわからないくらいです。
とっても美味しいのでお勧めです。
人の行いで生態系が壊れ、増えてしまった鹿に罪は無いですが、農業被害は年々増えている現状も放置できません。
そこで、私たち一般消費者にできることは、駆除された鹿を食べることなのではと強く思いました。
と難しい個人の思いは置いておいて、難しいことを考えなくても鹿肉は何より美味しいお肉です。
鹿肉は高たんぱく、低脂肪、そしてコレステロールも低いとってもヘルシーな食材です。
鉄分も多く、青魚に含まれるDHAも取ることができます。お子さんや妊婦さん、ご高齢の方は特に積極的に取ると良いお肉と言えます。
そして鹿肉というと「臭い」と思われがちですが、撃ってから2時間以内に加工工場に持ち込まれ新鮮な状態で加工されるので、思っているほど臭みはありません。まして、羊肉を食べる文化のある北海道人であれば、物足りなさを感じるかもしれません。
是非、お店で鹿肉を探してみてください。
【文・副会長:みひろ】
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