ジブリが誇る傑作、『千と千尋の神隠し』。時代や世代や国境を超えて多くの人々に愛される作品の共通点は、人生というものやこの世の成り立ち方に対するある程度の真実が含まれているというところにある。性別・年齢・時代・国籍・人種・バックグラウンドに関係なく、人間ならでは誰しも共有している唯一の情緒(私はこれを「良心」と言いたい)、それに訴えられる作品は大衆的に評価される場合が多い。もちろん、内容が深すぎたりして的確に解釈しないと作品の中の真実に辿り着けないことも多い。だから映画やドラマを通して何か知見を広げたり悟りを得たりしたければ十分な注意を払って解釈すべきで、特に良心的に何か感じられるものがあるとしたら、その正体を詳細に探る必要がある。映像鑑賞の際にも「意味」を求めるような方々に向けて言っている。本当の意味を見つけるためには、良心に頼るべきだ。
千尋はカオナシの誘惑を拒むとき、「私が欲しいものは、あなたには絶対出せない」と言った。とても意味深い台詞だ。
千尋が欲していたのは幸福ではなかった。親やハクへの愛と彼らを救うこと。それ以上求めていなかった。(愛と幸福は絶妙に異なる概念だ。)愛と崇高な目標だけで武装した千尋が、実は魔法使いでお金持ちのカオナシより遥かに強い存在であることを私たちは知っている。千尋は自分が必要としているものと自分に必要なものとそれを手に入れられる正しい方法を知っていた。そしてカオナシとはそれが無縁だと判断ができた。賢くて純粋で一途な、それで無敵になれた千尋の生き様から私は人生の意味を学ぶ。
私にとって「失うことのできないもの」は何だろう。失いたくないもの、手放したくないもの、最後の最後まで守りたいもの。それこそが私という人間の本性を教えてくれるのではないだろうか。
私は、心の中に刻まれているあの真実を守り抜く人になりたい。そうやって周りを感動させる存在になって、豚に変わってしまった親も、鬼婆の捕虜になったハクも救えるような人生を歩んでいきたい。
PS. 私の愛する、人生と愛の意味が詰まっている『悪の法則』については、後々深く語ることにしよう。
sorakotoba