うつしおみ 第57話 自由と運命
魂はこの世界を自らの意志で生きていて、
その運命を変えられると信じていた。
自由意志は眩い希望であり、
人生模様を紡いでいく原動力となっている。
ときには絶望し生きる気力を失うが、
自由意志でそこから立ち上がることもできるのだ。
魂はその自由意志を自分だと思ってたが、
それがどこから来るのか知らなかった。
どこからか心に浮かんでくる意志を、
自分の意志だとして信じて疑わずにいた。
それは緻密に編み上げられた世界の意志であり、
魂の中で掘り起こされる未来の記憶だ。
その世界の意志の方向には唯一の真実があり、
それは魂の最終的な未来に設定されている。
散り散りになった魂たちはひとつになり、
そこで真実そのものになるのだ。
魂は遠い未来を知らずに生きているが、
それはいまも確実に最終地点へと向かっている。
大海原を航海する船のように、
水平線の向こうのまだ見ぬ新天地に到達するために。
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