うつしおみ 第27話 森の静寂
森の奥深く、魂はそこで立ち止まって、
自分が生きているのを感じてみた。
新緑の森では風が花の香を運び、
楽しげな鳥たちの鳴き声が響いている。
それらは夢のように過ぎ去っていくのだが、
魂が生きていることは明らかな現実なのだ。
その証となる心臓の鼓動が、
そこに在る圧倒的な静寂の中に飲み込まれていく。
ふと見上げれば、
木立の向こうに青空が見え、雲がゆっくりと流れていた。
魂はあの空に消えてしまいたいと願うが、
この大地が足をつかんで離さない。
自分のあまりにも小さいことに驚き、
無辺の静寂から起こる波を受けて息が止まった。
それでも確かに魂はそこにいて、
森の清廉な空気をその身にまとって揺れている。
時折、風が奏でる木の葉のさざめきは、
そこにいて欲しいという願いにも聞こえる。
魂が抱いている存在は決して失われることなく、
それはその静寂にも息づいているのだ。
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