うつしおみ 第53話 無垢と鎧
魂は無垢な姿でこの世界に誕生し、
何事かの智慧を拾いながら生きている。
その智慧が無垢な魂を鎧となって覆い、
それによって世界で生きる安心を得る。
その智慧が魂から剥がされることは、
自分の弱さが露呈するようで不安を覚える。
魂は無知で脆弱な者ではなく、
その鎧による強固で見栄えのする存在であろうとした。
だが、その強固さは無垢な魂を隠し、
その真実をも跳ね返すものとなった。
鎧は鎧でありそれは魂自身ではなく、
その内でほのかに光る無垢な存在こそが魂なのだ。
歳月が過ぎれば、鎧はその強固さと美しさを失い、
魂から脆くも剥がれ落ちていく。
そうして魂はこの世界でその弱さを晒され、
何も知らないという失意の内に去っていく。
魂は暗闇の中で無垢な姿に戻され、
その無防備さから鎧を求めてまた世界を探すのだ。
無垢な姿こそ最も力強いものだと魂が気づくまで、
こうして生滅は繰り返される。
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