正しかったわけでも 間違いだったわけでもない 正誤の裁きを受けられるほど 何かを成した者でも 何かを成す者でもなかった
もしもふたり… 例えばふたり… あるいはふたり… 今のふたりを否定するもの 今のふたり以外を肯定するもの 今のふたり以外のふたりを存在させるもの 前も後ろもない 上も下もない 始末がつかないそんな世界に 開かるようにして 僕はここにいるから 僕はここで終わるから 僕はここを生きるから
最後の年 あなたに訪れた季節は今も巡り 最後の月 あなたが重ねた空は今も広がり 最後の日 あなたに向けられた狂気は今も絶えず 最後の時 あなたが失ったあなたは今も何処かに
あやまちとあやまちとが織りなす そんな人生 どこを取っても まやかしの正しささえ見つからない それでもあなたは それなのにあなたは 目覚めた時 隣にいる人物を見つめながら 『この人でよかった』と そう思える夜明けを いつか…迎えることができるの? 正解を見出せない問いかけに彷徨う夜は 正解を葬るような謎解きに挑む朝は こう呟いてみる 『人生なんて暇つぶしみたいなものだよ』
始発を待つ人の群れ 時の操るまま 命の赴くままに 行き交う者たち 言い知れぬ虚しさ隠すように 僕もまた紛れ込む そんな中に独り 鋭く研いだ心 剥き出しにして 佇む少年 足早に過ぎ行くよれた靴に 唾を吐き捨て 何に勝利する? 黒く塗り潰された その瞳で 何を裁く? 僕はそこに いつかの自分を見ていた 行く先を阻む 目の前のものすべて敵にして その向こうにあるはずの 《自由》という名の虚像を 疑わなかった日々 信じられるものがなければ 人を愛することもできず 誰かを傷
あの街には今も 終わらない2人を引きずり歩く 私がいる 葬る術も 見つけられないまま 手向ける愛も 見出せないまま あてもなく 在処もなく 彷徨い続ける あなたに求められた私は あの人への優しさを 切り開くための堅木ならば もう痕をつける隙間さえない 昨日はうまく笑えただろうか 今日は正しく愛せるだろうか 明日は迷わず許せるだろうか 心はきれいに仕舞えるだろうか 体は潔く引き下がるだろうか 命は何も残さず絶えるだろうか そして街は静かな朝を迎えるだろうか
〜微笑む先に笑顔のあなたがいてほしい〜 一つの終わりと一つの始まり 抱えた時の築き上げたものに押し潰されて 笑って『愛してる』と言い合えた場所は消えても 二人はまた巡り会えたから どんなに寒くて凍えてしまう夜でも もう あなたは私の手を探さないけど この想いだけ しっかり掴み 微笑んでみる私に あなた 笑顔をください 寄り添う心に感じた鋭さ 怯えるままに深い痕残して求めた日々も いずれは懐かしさを呼び起こすだけのものへと それでも真実は生きてゆく どんなに険しく躓きそ
長い時を経て 人々の手に繋がれ 私の元へと届いた あなたからの手紙 戦場からの最初で最後の手紙 佇む文字に伸びる影を追いかけて 砕かれた言葉の欠片を拾い集めて 伝えることを断たれたそのすべてを 私はこれから探し続けていくでしょう 迷い込んだ闇の中に潜むものは 両手で抱えた瞬間 激しく痛むものは 決して見つけることのできない確かなものは あなたの あなたの あなたの かつてあなたを見送った秋は幾度巡り あなたが見上げた空と 私が見上げた空が今… 約束の場所になる
あなたが受けた衝撃を あなたが強いられた恐怖を あなたが下した絶望を 知った気になって 何が言えるだろう あなたが失った微笑みを あなたが奪われた安らぎを あなたが信じた明日を 知りもせず 何を言うべきだろう あなたが斃れたこの地に立ち あなたが馳せたこの空を見上げ 今 言葉を越えて 溢れてくるもの 今 心を解いて 放たれてゆくもの ただそれだけ ただそれだけを どうかあなたに
私に見えている悲劇 あなたが見ている悲劇 私に聞こえている叫び あなたが聞いている叫び 私に感じられる痛み あなたが感じている痛み 一つたりとも その一片すら 重なることはない 時は 結ばれていても 地は 繋がっていても 空は 続いていても いつかの一粒の涙が 伝い落ち 沁み渡り やがて 黒い雨になった
咲く事を忘れた桜 咲く事を知らない桜 咲く事を絶たれた桜 咲く事を背いた桜 魅せる花も 散らす花もない 何ものでありながら 何ものにもなれず それでもまた季節は巡り 果たせぬ乞いを重ねてゆく
この声を失って はぐれた人混みから 君を導くこともできず この瞳を失って 救いを求める君の涙に 気づくこともできず この心を失って あの日君と交わした約束を 果たすこともできず 僕は僕でなくなった 盤上に転がった命 進むべき先はない ここにあるのは 生と死の衝動のみ ただふと甦るのは かつて 僕の喉に触れ 僕の瞼を濡らし 僕の胸から去っていった人の温もり そして僕は 僕でしかなかった 僕でなくなった僕は 僕でしかなかった
祈りといえば 呪うことしか育たないような こんな戦さ場で 希望といえば 失望の目眩ましにしかなり得ない こんなまやかしの世で この胸に生まれた唯一さえ 怒りと偽りに奪われていく 遠く離れた君へ 君と 君と誰かが見上げたその空へ いつかの 果てしない青さを かつての 澄みきった青さを 僕は贈ることができずに 今日 この地で果ててゆく 最期 暗く 重く 一面に覆われた雲の隙間から 微かに見えた ほら… いつかの ほら… か
人生という有限の中でひしめき合う哀しみ その隙間から滲み出た愛しさ 心という無限の中で広がり続ける闇黒 そこに射す点にも満たない光 不可算なものは やがて果てまでも沁み渡り 存在を明かすことなく いつか僕に溶けてゆくだろう
誰が追いつめた というわけじゃなく 僕はこの場に立っている そして 自分の弱さが 行くべきところを示している 存亡の決断を放棄し 旅立つための力溢れる 空を見上げてごらん 最後 君に伝えたいものがあるとすれば 今 僕が感じるそのものすべてだよ 君のためになる というわけじゃなく 僕はこの場を去ってゆく そして 両手広げて 解くべき想いを放っている 身魂の訣別に逆らい 飛び立つための一歩踏み出す 空を見上げてごらん 最後 君に伝えたいものがあるとすれば 今 君が感