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思い出のそばにはいつもサイダーがあった

「ママ、シュワシュワ買って!」

息子に言われてサイダーを手に取る。
するといつも思い出す光景がある。

私が小学生の頃の記憶。
昔の夏休みは長かった。
たしか42日ぐらいあったように思う。

両親は仕事で出掛けている。
兄と私と妹でお留守番。
クーラーもない暑い部屋で
喧嘩しながら遊びながら過ごしていると
誰かが冷蔵庫を開ける。
「三ツ矢サイダーあるよ!」

めいめい好きなグラスを持ってきてサイダーを注ぐ。

ふと思いついて
サイダーを凍らせてみようと言う。

まだかな、まだかなとみんなで冷凍庫のドアを
開けたり閉めたりしながら
ワクワクと凍るのを待つ。
さっきまで喧嘩していたのもすっかり忘れてしまった。

ようやく凍ったサイダーをスプーンですくって口に含む。
凍っているのにシュワシュワするのはなんでだろう。

それから夏になると誰から言うわけでもなく
サイダーを凍らせるのが兄妹の夏のきまりとなった。

思い返してみれば
楽しい思い出のそばにはいつもサイダーがあった。

夏休み、お誕生日、初めてのデート、久しぶりに会う家族との集まり。

シュワシュワとはじける炭酸の泡を見ていると
楽しかった思い出が呼び起こされる。

もう意識することがないくらいに
当たり前にサイダーがそばにある。

今日も夫と息子と私の分、サイダーをカゴに入れてレジへ向かう。



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