ワタシは宇宙人 「あっという間に」 #30
わたしは22歳で母親になり、毎日毎日子育てに奮闘していた。
息子はすくすくと成長して行った。あれほど出産は二度としないと心に決めたはずなのに、
翌年、2人目を身篭った。
年子だ。
夫は年子の兄がいて、小さい頃はいつも双子に間違えられたそうだ。それがどこか満更でもなさそうだった。そして「双子みたいで可愛いだろうし、どうせ育てるなら年が近い方が良い」と言って喜んでいた。
そっか…またあの痛みが来るのか。
生まれて初めての出産は、ついこの間のようなもので、思い出すと身震いがする。
「今度こそ先に破水だけはご勘弁」と神さまに祈りながらも、あとは成るように成ると開き直るように腹をくくった。
2人目の妊娠は前回とは全く異なった。ツワリも無ければ、貧血と闘うことも全く無かった。1人目とはこうも違うものなのだろうか。
ひどい便秘に悩まされること以外は、自分が妊婦であることすら忘れる程だった。
気づくと、何かに捕まって「よっこいしょ」と掛け声をかけて立つ程に、お腹はあっという間に大きくなっていた。
重くなった長男を抱っこしたり、おんぶしたりと子育てに忙しくて、お腹の赤ん坊に構っている暇はなかった。
2002年8月。
臨月を目前に、長男が1歳の誕生日を迎えた。まだ歩けない長男が、もうすぐ兄になるとは複雑な気持ちになる。
翌月9月上旬。
朝起きると、1人目では見られなかった「おしるし」があった。おしるしとはお産が近づくと生理のように薄い出血があることだ。
そしてその日の夕方4時頃、軽い陣痛が始まった。それは30分置きでやってくる。
よしよし、これだよ。これが普通なんだよ。
前回の壮絶な出産に比べて、よく聞くマニアル通りの陣痛のスタートに喜びを感じる。
仕事に出ている夫に連絡を入れると、相変わらず声は落ち着いていたが、夕方いつもより早めに仕事から帰宅していた。
助産院に連絡を入れると、痛みが強くなったらいつでも来て良いとのことだった。
夜7時を回っていた。
陣痛の波は定期的に来るが、まだ余裕で耐えられる痛みだ。何せ、1人目の時の痛みはこんな程度では無かったのだ。
とりあえず、痛みが強くなるまで夫とテレビゲームをして過ごした。
夜10時過ぎ。そろそろ痛みが強くなってきたので助産院に向かう。
助産院に到着して、内診したら子宮口はほぼ全開とのこと。
それから30分後、わたしは分娩台に登り、間もなく破水。それから20分後には第2子を出産していた。
女の子だった。
長女が生まれるまで、病院について1時間程の出来事だった。あっという間にお産の全てが終わった。
お産が終わると、先生に
もっと余裕を持って来なさい!
と言われた。
長男を産んだ時とは雲泥の差がありすぎて、まさかこんなに早いとは驚いた。
自宅で待つ両親に電話で「女の子」が生まれた事を報告をすると
「えっっ!?もう?」
「さっき家を出たとこなのに?」
と疑う程だった。
そうだ、忘れていた。わたしは極端な人間だったのだ。一体どうなっているんだ?
こうしてわたしの2度目のスピード出産は終わったのだ。