影を描く
勧めてもらった短編小説を読んでいたら、絵を描く時にモチーフそのものを描かず影とか空間を描くことで浮かび上がらせるやり方を思い出した。
表現したいことそのものを文章にすると息苦しくなってしまうし、想像する楽しみも奪われる。
登場人物の行動や情景を冷静に切り取ることで、何が起きたかだけではなく、空気感や時間の経過まで描き出すことができる。
この小説は全体を通して、一見何を表現しようとしているのか、何を伝えたいのかはっきりしないまま、余白のようなものだけが提供され続ける。
にも関わらず、簡潔な文体であるがゆえに心地よい呼吸を保ったまま読み進めることができた。
その小説は英語のまま読んでみた。
英文を読んでいると眠くなってしまうことが多いが、今回はストーリーが展開していくことを期待し続けて目が冴えてしまった。
そのくらい読ませる文章だったんだと思っている。
結局その場では何も起こらないが、ぽつぽつと語られる少しグロテスクなエピソードがなんともいえない印象を残した。
長い間小説を読んでいなかったが、これを期にまた何か読んでみようという気になってきた。
何かかよさげな本がないか探してみようかな。
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