お伽小説「壺」
この作品はフィクションであり創作ですので、実在の人物や団体等とは一切関係ありません。
「男」
ある年の事、
一国の長に成りしも、やることなす事、ことごとく上手くいかずに無能と蔑まれ、石のつぶてで国を追われた者あり。
その男、歯噛みして、この仇はきっと取ると心に誓った。
それから、男は国々を彷徨い、身も心も荒び果て歳月だけが流れていった。
そしてこの男、ある時は、山賊、追剥の頭に成りかけた事もありけり・・・。
「飢饉」
しかし、ある年の事、
諸々の国が飢饉に襲われる事あり。
男が長だった国も、それは例外ではなく、
国々は僅かな食い物を取り合い争った。
「滝」
このような世の為、男は、這う這うの体で、命ばかりはと深山に逃げ込んだ。
そして空腹の内に、山を分け入ると二条の流れる大滝にでた。
男は、これ幸いと、水面に顔を付け、流れる水をゴクゴクと飲んだ。
すると、天井から大きな声が響き渡った。
「右と左、どちらが良い」
男が、不思議に思って天を見上げると。
更に大きな声で、
「右は、お前を助けてやる。
左は、国々の者を助けてやる」
と・・・。
その問いに、男は、少しだけ考えてから
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