「オンボロ屋敷の桃色ヤモリくん」第17話
「カッパが、で、でた?」その3
オンボロ屋敷のハルオとサクラは、陶芸家で釣り好きなゴダイさんが、ずぶ濡れで家に駆けこんで来ただけでもビックリしたのに。
ゴダイさんが、
「たた、大変だー。で、で、出た、カッパがでたんだよーーー」
と言ったことにさらに驚いたのだった。
しかし、ゴダイさんの真っ青な顔を見ると、とても嘘やイタズラを言っているとも思えなかったのであった。
サクラがもって来たコーヒーを、興奮してハルオに話しかけていたいたゴダイさんに手渡すと。
コーヒーを飲んで少し落ち着いたのか、立ち上がっていたゴダイさんが、椅子に座ろうとした。
すると、ゴダイさんの、足元に来ていた猫のコムギの尻尾を踏んでしまったのであった。
猫のコムギは、「フンギャーーーーーー」
と大声で叫んで駆け出したかと思ったら。
今度は、その声に驚いたゴダイさんが、持っていたコーヒーをズボンにこぼしてゴダイさんも、
「ウワッ、ギィヤ、アッーーーーー」
と叫んで、足をバタバタとさせて床を踏み鳴らしたものだから、オンボロ屋敷の中は大騒ぎとなった・・・。
ハルオは、コムギを抱きかかえて落ち着かせ、サクラは、ゴダイさんのこぼしたコーヒーを拭いて落ち着かせたのだった。
それから、やっとゴダイさんの話しを詳しく聴いたのだったが。
ハルオもサクラも、
「まさか、カッパだなんていわれても・・・」
と最初は半信半疑であったのだった。
しかしゴダイさんの話は、余りにもリアリティーがあって、まんざら嘘とも思えなかったので。
話を聴き終わったハルオとサクラは、どうしたものかとお互いの顔を見合わせたのだった。
ゴダイさんは、それでもハルオとサクラの顔を見つめながら、真剣な表情であれは絶対にカッパだったと言うのだった・・・。
ハルオは、少し考えてから、ゴダイさんとサクラの方を見て
「では、これから3人で、その現場まで見に行ってみましょうか」
と言ったのだった・・・。
「ブルルル、ブルルルルン、スコスコ、プス、ブルルル、ブルルルン」
と、ハルオの運転するオンボロ車は、3人を乗せて川の近くまで走って行ったのだった。
しかし、途中から細いデコボコ道が続くのと、雨でぬかるんでいるために車を降りて3人は傘を差して現場に向かう事にした。
その場所に到着すると、ゴダイさんが、放り捨ててきた釣り竿や釣道具が、そのままの形でその場所にのこされていた。
だが、ゴダイさんが指さす方向には、何も見えなかったし何もいなかったのである。
しかし、ゴダイさんは、ハルオとサクラに確かに見たのだと手足を使って説明するのだった。
「そこそこ、その場所をカッパが上流の方から、ゆっくりと泳いできたんだよ」
と、カッパが泳ぐ格好をして見せたのだった・・・。
3人は、下流の方にも行ってみようと川沿いを下っていった。
すると、ハルオが木の枝に引っ掛かっている緑色の雨合羽を見つけたのだった。
ハルオは、ゴダイさんとサクラを呼び寄せると、木の枝に引っ掛かっている緑色の雨合羽を指さして
「ゴダイさんが、カッパだと思ったのはきっとこの雨合羽だったんですよ」
と言った。
それにサクラも同調し、
「なーんだ、ゴダイさんが見たのは、カッパはカッパでも雨合羽だったんだー。もう、ゴダイさんたら、相変わらずそそっかしいんだから」
と言って、ハルオとサクラは笑いあったのだった。
しかし、ゴダイさんは、
「おかしいなー、確かにカッパだと思ったんだがなー」
と腕組みをして首をひねるのであった・・・。
その後、ゴダイさんは首をひねりながら、キコキコ、キコキコと自転車のペダルを漕ぎながら家に帰ったのだった。
ゴダイさんが家に帰ると、ハルオは、サクラに
「でもサクラ、もしかしたらゴダイさんの見たのは本当にカッパだったのかも知れないよ」
と言った。
そして、こう続けたのだった。
「じつは、2人には言わなかったのだけれども、あの木に引っ掛かっていた合羽のあった場所にね、食べかけのキュウリが落ちていたんだよ・・・」
と・・・。
それを聴いたサクラは、
「えっ、じゃあどうして、その場でそことを言わなかったの?」
と尋ねると、ハルオはこう答えたのだった。
「だって、そんなこと言っても、きっとゴダイさん以外は誰も信じやしないだろ。それにだよ、もしも、仮に本当にカッパがいたとしてもだよ。
なにも悪戯をしないのなら、そっと静かにあの川で暮らしていたって良いじゃないかと思ったのさ・・・」
これが、ゴダイさんのカッパ騒動の話しなのだが、その年の夏にハルオとサクラのオンボロ屋敷では、なんとも不思議な出来事が起きたのだった・・・。
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連載小説(不定期)
「オンボロ屋敷の桃色ヤモリくん」第17話「カッパが、で、でた?」その3
終り
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「オンボロ屋敷の桃色ヤモリくん」第18話「ヤモリくんの夢のお告げに〇〇〇くんが現れる」その1へつづく
第16話はこちら
第18話はこちら
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2020.11.7 11.13一部修正 2023.12.22加筆修正
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