連載童話「桜と一粒の砂」(第五話 激流)
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その日は、突然おとずれました・・・。
朝から降り出した雨は、時間とともに激しさを増していったのです。
そして、雨は止む気配もなく降り続けました。
その降り様といったら、まるで海の底が抜けたようにザー、ザーと振り続けたのです。
こんなにも大雨は、もしかしたら長い長いあいだそこにいた渓流の大岩にとっても、初めての経験だったのかも知れません・・・。
そのうな激しい雨の降り方でしたから。
山奥を流れる細い渓流は、あっという間に激しい濁流が流れる川となってしまったのです。
濁流が、渓流の中にいる大岩にも、容赦なく水しぶきを打ち付けています。
ですが大岩は、濁流の中でも流れに負けまいとしっかりと足を踏ん張っていてビクともしませんでした・・・。
しかし、その猛烈に強い水の流れは、大岩の体で左右に分断され流れを変えていたのです。
その変わった水の流れが、桜の木が立つ、崖の下の土を少しづつガリッ、ゴォゴォォー、ガリッ、と削り始めているのです・・・。
大雨は、止むことなく降り続けています。
このままでは、濁流に、桜の木が立つ崖の土は削り取られてしまいます。
そうなれば、きっと森の中で誰からも愛されている桜の木は、濁流に飲み込まれてしまうことでしょう・・・。
大岩は、祈るように空を見上げました。
しかし、叩きつけるように降る雨が止む様子はありません・・・。
大岩は、そっと目を閉じました。
そして、考えました。
「自分が、この渓流の中に留まる事は、この美しい桜の命を奪ってしまうかもしれない」と・・・。
「桜と一粒の砂」第五話 おわり
次回「桜と一粒の砂」第六話へつづく
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使用画像 イラストAC 写真ACより CanvaAI画像より
2024.3.19加筆 3.21加筆 3.25修正 4.3加筆
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