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向ヶ丘遊園とばら苑の日

今日はもちろんちゃんと起きた。ぜんぜん眠れなかったけれど、9時半には起きた。今日は舞台の衣装に使えそうなものをジモティーで見つけたので、出品者の人と取り引きをする日だ。場所は向ヶ丘遊園。

ちゃんと起きた。けれどやっぱり少しダラダラしてしまって電車の時間ギリギリに家を出た。駅に近づくに連れて、日曜日の下北沢の混んだ道を走った。何とか目的の電車に間に合って座席に座ってから、取り引きの内容を改めて確認した。すると、取り引きは午後一時だと思っていたら、一時半だった。三十分も余裕があった。走らくても良かったのだ。急いでいてぶつかってしまったお姉さん、本当にごめんなさい。

向ヶ丘遊園駅に着いて、約束までの三十分をどう過ごそうかと考えていると、駅前で生田緑地の案内していた。向ヶ丘遊園については何も知らなかったが、どうやら大きな森があるらしい。そして通りすがりに聞こえてきたが、ばら苑、とやらがあるらしい。私は山とか草木、花、海、川といった自然が大好きだ。疲れるとすぐ「山へ帰る」などと口走る。そんな私にとって「ばら苑」は聞き捨てならないワードだ。ただ、今日は寝不足だし、ばら苑に行くなら、ばら苑っぽいファッションで行きたい、そもそも三十分で行って帰っては来られないから、取り引きが終わったあとに考えよう。
向ヶ丘遊園駅南口をウロウロしていると、ブックオフを見つけた。面白い本やDVDがないか店内を歩いた。するとカンザキイオリさんの「あの夏が飽和する」の小説を見つけた。初めて曲を聴いたとき、まるで小説のようだと感じた。いつか一人芝居をしてみたいと思って、一人でたまに、稽古とは言えないが、演じている。一人芝居のチャンスがあったときにやろうとしたが、みすみすそのチャンスを逃してしまったことを後悔している。本を開いて冒頭の文章を読んだ時に、感情が溢れるのを感じた。たったの冒頭だけで心を掴まれそうになった。曲からも感じ取れるが、カンザキイオリさんの文章は泣きたくなるほど正直で、苦しいことは苦しくて、どうしようもできないことや、痛み、そして、人間らしいこと、美しいだけでないことに対しての美しさを感じる。そういえば発売当時に買おうとして、買えないままだった。次の本は、多分これだ。

ブックオフで三十分潰して、駅前に戻り、出品者さんとの取り引きはスムーズに終わった。さて、どうするかと考えて、せっかく向ヶ丘遊園まできたのだと、やっぱりばら苑へ向かうことにした。向かう途中でもバラが沢山植えてあった。歩いて行く度花屋でバイトしていたときの知識が少し蘇った。道は川沿いで、川にはカモと白い大きな鳥がいた。白鷺だろうか?そして運がいいと思ったのはカワセミが飛んできてくれた。背中の青が綺麗だった。幸せの青い鳥、なんていうのをよく聞くが、きっとあんな青なんだろうな、なんて思っていた。

ばら苑へ向かう途中でとてつもなくお腹がすいてしまった。今朝は急いでいたから何も食べてこなかったんだった。何かお腹に入れたい、なんて思っていると、ちょうど目の前にカレー屋さんがあって、カレーパンを売っているそうだ。ばら苑までの道のりで食べながら歩こうと思って、買うことにした。民家を改造したようなお店は「スリランカカリー」。カレーパンは甘口らしい。辛いのが苦手なのでありがたい。確か270円。中には豆やお肉などの具材がぎっしりと入っていて、衣はサクサクと音を立てる。多分何かしらの穀物も入っているのだろう。健康に良さそう。香りも、ほんの少しシナモンのような、フルーティーな香りがして、多分ここでしか食べられないカレーパンだと感じた。

ばら苑は高台にあるみたいで、坂道と階段を沢山登った。ふと振り返って見ると、向ヶ丘遊園の街並みが見渡せた。景色にワクワクしてばら苑に入ると、沢山のバラが目に入ってきた。ちょうど雨が降り出したが、花弁に水滴が付いた姿はキラキラとして綺麗だった。様々な色、形のバラで彩られた場所は、まるで中世ヨーロッパの貴族たちの庭で行われるガーデンパーティーの様だった。それこそ、世界のプリンセスや女王の名前のついたバラの品種もあって、なんだかロイヤルな気分になった。どこかの楽団が来ていたようで、優雅な演奏と相まって、素敵な気持ちで胸がいっぱいになった。きっとクラシカルロリータとかを着て来たら様になるんだろうなぁ、次に来ることがあればそれらしい格好で来たい。

ばら苑に入ったとき、空気と匂いが違うのを感じた。山の心地がいい空気に混じって、バラの香りに溢れていた。バラは、もちろん種類にもよるが、よく香りがする花として知られている。種類によって香りは違うし、香り方も様々。ばら苑に来ている人達には、写真を撮ったり、眺めて楽しむ以外にも、花による香りの違いを嗅ぎ比べて楽しむ人も沢山いた。私もお気に入りの香りに出会えた気がした。また嗅いでみたいが、品種名を見損ねてしまった。

ばら苑を歩いて気づいたが、ばら苑へ来る人達には、バラへの愛が感じられた。バラの知識がある人達は、それぞれのバラについて話し合ったり、香りを嗅いでいる人も、とても優しくバラに触る。みんなが笑顔になっているように思えて、とても素敵な空間だった。でもあえて全部はしっかり見ないようにした。全部見られなかったからまた来よう、という口実のためだ。また一人で来るのもいいが、今度は誰かと着てみたい。バラも売っていたが、今回は買うのを諦めた。次は買って帰りたい。

ばら苑を後にしたあと、寝不足だったことを思い出して少々疲れてしまったので、せっかくだし喫茶店に寄ることにした。向ヶ丘遊園駅近くの、ルグラン向ヶ丘遊園店だ。アイスキャラメルラテとホットケーキを注文した。ホットケーキは久しぶりに食べた。二段重ねになっていて、中央にバターの乗ったシンプルなもので、メープルシロップをこれでもかとかけた。中央にかけて厚みがあって、表面と周りはカリカリで真ん中のふわふわなところに、バターとメープルシロップがよく染み込んで、口の中が一瞬で幸せを感じ取った。完食するでずっとニヤニヤしてしまっていた。是非また食べたい。
食べ終わってからは喫茶店恒例行事、本を読んだ。ちょうど食べ物にまつわるお話だったので読みながら笑ってしまった。やっぱり本を読むのは楽しい。最近、喫茶店には行けていなかった分、心の洗濯ができたと言えそうだ。夕飯時で店内が賑わう頃にキャラメルラテを飲み干して店を後にした。

下北沢に戻っても楽しい紀文が抜けず、古着屋に寄ってベージュのベストを買った。前から欲しいと思っていたし、800円で見つけられたので即購入した。それを使ってコーデを組むのが楽しみだ。何はともあれ、久しぶりに充実した日になった気がする。これで日常も頑張れる、と言いたいところだが、頑張る前に眠気が限界。そろそろ少し寝ようかな。

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