二百七十八話 日傘

「ごきげんよう」「神のご加護を…」

朝の清冽な空気の中、女子生徒の挨拶がこだまする…。

学校の校門をくぐると、そこは身も心も清らかな乙女の園…。

そう、ここは神田ミカエル女学院…。

中庭の大天使ミカエル像が、通う女子生徒たちを守護している…。

天界の大天使ミカエルは、ここに通う女子生徒たちを見て何を思うか…?

その御心は、まさに神のみぞ知るということなのだろう…。

ここに三年間通えば、お淑やかなお嬢様になって卒業できるという…。

制服は翻さないように、静かに歩き…。

清廉潔白で文部両道、それでいて純粋無垢な心を持った乙女たち…。

この学院には、そういった生徒しか存在しないのです…。

否、今日から新たに校門をくぐった、たった一人の生徒を除いて…。

神田ミカエル女学院に転入することになった私…。

教壇の前で、自己紹介することになったけれど…。

空腹と緊張で、教壇の前で気絶して倒れてしまう…。

私は身体が弱いふりをして、担任の先生に頼んで保健室登校をさせてもらう。

新しいクラスに馴染めそうになかったのだ…。

そんな毎日を送り、どうにか?学院生活にも少し慣れてきた頃…。

慣れてきた頃と思っていたら、なんと夏休みに突入してしまった。

明日から夏休みかー。七月も終わりで八月になった。

夏休みに入り、学校に行かなくていいので…。

惰眠を貪ろうと思ったら、グレモリーが起こしに来て…。

どうやら、私に来客があるらしかった…。

私に友達も知り合いもいないはずだったけれど…。

どうやら昨日トイレで知り合った鈴木藍さんが来てるらしかった。

藍さんをお家に招き入れ、3人で朝食を取る事にした。

女悪魔グレモリーが用意してくれたのは、なんとカップ飯…。

朝からカップ飯とは…?まぁ、しょうがないか…?

お湯を入れて待とうとしたら、蓋がパカパカしてしまう…。

それでは熱が逃げてしまうので、グレモリーが秘密道具?を出してくれた!?

なんとそれはヌードルストッパーフィギュア…!

アキバで買ってきたらしい…。

それを三体出してくれたので、それぞれの蓋にフィギュアを置く。

ちょ、ちょっと待って待って!?グレモリーの上に乗ってるフィギュアは?

私の推しキャラのフィギュアじゃない!?

私がリスペクトしてる中二病キャラのフィギュア…。

というわけで、グレモリーと私のフィギュアを交換してもらった。

やった!でかした!グレモリーさん!

このフィギュア、家宝にしようかしら…?

とかなんとか考えながら、カップ飯を各々食べていると…。

すぐに食べ終わってしまった…。

ふぅ、暑い夏にアツアツなカップ飯を朝から食べる…。

たまにはこういうのもいいのかしらね…?

そこにキンキンに冷えた麦茶を持ってきてくれるグレモリー。

おぉ、気が効くわね!?ちょうど暑いと思っていたのよ…?

「やっぱ夏と言ったら麦茶っすよね〜!」

藍さんもグラスに注がれた麦茶を一気に飲み干した!

私は一気に飲めなかったけど、麦茶美味しくいただいたわ…。

ふぅ、ごちそうさま…。

さて、どうしようかしら…?

グレモリーの家ってテレビも何もないのよね…。

藍さん遊びに来たけれど…。何もすることがないわ…。

「ねぇねぇノアっち、これから遊びに行かない?」

藍さんが私をチョンチョンと突っつき、言ってきた。

えぇぇぇぇっ!?この炎天下の中外に遊びに行くって!?

藍さんは太陽の使者、太陽の子、陽キャ中の陽キャ…!?

朝から30度超えてるこの大気なんて、どうとでもないというのか!?

私は嫌だ。私は陰の者。太陽の下に出たら死んでしまう…。

「ノアっち行こうよー、超かわいい服屋さん見つけたんだよぉ〜」

藍さんは私の腕を掴んで、ユッサユッサと振り回す…。

行かない!行かないってばー。日が沈むまで待って〜。

「ご主人様、ご友人もこう仰ってるのですから。遊びに行ってきてはどうでしょうか?」

グレモリーまでもが、私にそんなことを言う…。

いやぁ!嫌よ!お日様の光は堕天使の私にはキツすぎるのよぉ〜!

「藍さんごめんなさい。私、日に焼けるのが嫌なのよ…」

私はそう言って、藍さんに謝った…。

「もうノアっちったら、こんなに晴れていい天気なのに外出るの嫌だなんて」

藍さんはそういって、頬を膨らませた…。

フグみたいでかわいい…。なんて思ったら失礼かしら…?

「ご主人様、日に焼けるのがお嫌でしたら、これをどうぞ」

グレモリーはまた胸の谷間から何やら取り出した…。

便利な胸の谷間ね。私なんてどんだけ寄せても谷間なんてできないのに…。

グレモリーが取り出した物は、真っ黒な傘だった…。

「この傘、日傘なんですよぉ。魔法を込めたので紫外線99.8%もカットするんです」

グレモリーは私にコソコソ囁いてきた。

直射日光を遮断する魔法を込めた漆黒の日傘…!

さすがグレモリーさん。すっごい魔法アイテムゲットできたわ!

この日傘を差して街を歩けば、絶対日に焼けないわね!

ようやく、私は藍さんとお出かけする気になったのである…。

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