三百三十二話 クラス委員長
「ごきげんよう」「神のご加護を…」
朝の清冽な空気の中、女子生徒の挨拶がこだまする…。
学校の校門をくぐると、そこは身も心も清らかな乙女の園…。
そう、ここは神田ミカエル女学院…。
中庭の大天使ミカエル像が、通う女子生徒たちを守護している…。
天界の大天使ミカエルは、ここに通う女子生徒たちを見て何を思うか…?
その御心は、まさに神のみぞ知るということなのだろう…。
ここに三年間通えば、お淑やかなお嬢様になって卒業できるという…。
制服は翻さないように、静かに歩き…。
清廉潔白で文部両道、それでいて純粋無垢な心を持った乙女たち…。
この学院には、そういった生徒しか存在しないのです…。
否、今日から新たに校門をくぐった、たった一人の生徒を除いて。
謹慎が明けて、理事長先生の所に行ったあと…。
そのあと、担任の田中先生が私たちを向かいに来て…。
私たちのクラス、二年薔薇組に向かった…。
私のズッ友の藍さんも今日から学校に転入することになった。
私はちゃんと自己紹介できるかすごい不安だった…。
前の自己紹介の時は不安と緊張で…。
気絶して倒れてしまったのだ…。
そのあと、ずっと保健室登校して…。
保健室で今まで授業を受けていたのである…。
そろそろ、理事長先生からクラスで授業を受けなさいと。
打診があり、今日からクラスで授業を受けることになったのだ。
うぅぅ、でも不安と緊張で胃が既に痛い…。
胃がキリキリ痛いけれど…。
もうすでに薔薇組に着いてしまって…。
田中先生は教室に入ってしまったのだった…。
私たちも教室に入って…。
田中先生から私たちの簡単な紹介があり…。
自己紹介することになった…。
藍さんはすごいフレンドリーな自己紹介をして…。
なんとウィンクまでしてしまう始末…。
クラスメイトはどよめいてしまって…。
教室のクラスメイトは割れんばかりの拍手を送っている。
藍さんがすっごいクラスメイトの人気者になっている。
私の自己紹介はお辞儀するだけで済んだ…。
はぁぁ、よかった…。自己紹介無事に済んだ…。
私と藍さんは窓際の後ろの席になった…。
私は本当に一番端の後ろの席…。
藍さんは私の前の席だった…。
転入生ってこの席にされることが多いらしい。
まさか、自分が転入してこの席に座るとは…。
隣の席から何か視線を感じて…。
ふと見るとショートカットで眼鏡の生徒が見つめてくる…。
じっとこちらを見つめてくるので…。
私何か悪いことしたかなぁ?と思ってしまうほどであった。
ずっと見つめてきて、怖いので…。
私は無視することにした…。
ほどなくして、ホームルームが終わり。
授業が始まった…。
この学校は授業をタブレットで行う。
私はタブレットを持っていなかったから…。
一瞬、焦ったけれど…。
机の一部がせり上がり、タブレットが出てきたのである。
タブレットは机に備わっていたのだ…。
よかった。これで授業を受けれる。
私は大事な箇所をノートに書き写して…。
必死に授業についていかなければならなかった。
もともと、頭の良い方ではないし…。
この学校で初めて教室で授業を受ける…。
緊張もあってか、頭が痛くなってくる…。
かといって、保健室に行くわけにもいかず。
我慢して授業を受けるしかなかった…。
やっと、昼休み開始のチャイムがなった。
今日の授業、8割ぐらい終わったぞ。
すっごい疲れたー。
休み時間になるたびに藍さんの周りに生徒が集まっている。
うぅ、ギャルで陽キャの藍さんはすごい人気だな。
常に十数人ぐらい女生徒が集まって、楽しそうに会話している。
私と話す余裕がないぐらい人気があっていいですね!
陰キャの私の元には、誰も来ませんよー。
ところが、昼休みになり昼食どうしようかと思った時。
となりのショートカット眼鏡の生徒が話しかけてきた。
「真島さんだっけ?ちょっと話いいかしら?」
眼鏡をクイっと持ち上げて、棘のある言い方をする。
なんだろう?でも私は思わず、はいと返事してしまった。
眼鏡の生徒は、外で話そうと持ちかけてくる。
藍さんの方を見ると、生徒に囲まれて会話が弾んでいる。
本当は藍さんと昼食食べようと思ったけれどしょうがないか。
私は眼鏡の生徒についていくことにした。
学校の中庭まで来た…。
そこにはベンチがあって、生徒が座れるようになっている。
私と眼鏡の生徒はそこに座った。
「私の名前は奥井優子。クラス委員長をしているわ」
奥井さんか、委員長をしているのね…。
なるほど、道理で真面目そうな雰囲気だ…。
私も自己紹介をしようとすると…。
「知ってるわ、真島乃亜さんでしょ?」
奥井さんは、私のことを知っているらしい。
まぁ、私は転入初日で気絶して倒れたから知ってるか。
「あなた、ミサで守護天使も授かってないわよね?」
奥井さんは、ものすごい胡散臭そうに私を見ている。
ミサ?守護天使?なんだろう?
そういえば、この学校は天使側の人間を育成しているとか?
そのことを言っているのだろうだか?
私はどちらかと言うと悪魔側の人間なので…。
守護天使など授かっているわけがなかった。
「ごめんなさい、授かっていない…」
私は正直に答えてしまう…。
「やっぱり!この学院では生徒は守護天使を授かっていないと!」
奥井さんは立ち上がって、何やら怒っている様子…。
「それにあなた…。魔力係数が私たちと違う気がするのよね」
私はドキッとしてしまう。悪魔側の人間だとバレているのだろうか?
「鈴木さんは眩しいぐらいの光属性の魔力っぽいけれど…」
確かに藍さんはめちゃくちゃ明るい光属性でしょう…。
「真島さん、あなたの魔力は闇しか感じないわ…」
闇しか感じないか…。中二病の私なら喜んでしまうところかな?
「私はクラス委員長として、あなたの闇を祓わないといけない!」
奥井さんが語気を荒げると、背後に天使が召喚された。
まさか、奥井さん私と戦う気なのか!?
『ノア!やばいぞ!あいつはやる気だ!』
私の脳内にもう1人の私の声が反響する…。
もう1人の私、堕天使魔王のノアの声であった。
『ノア!魔王覚醒モードを使え!』
私もそう思った…。けれども…。
理事長先生が今朝、私に託してくれたカードがある…。
私は制服のポケットからそのカードを出した…。
プラチナ色に光り輝く天使のカードを…。
「あ、あなたそのカードをどこで!?」
奥井さんはすごい驚いて、召喚した天使も消えてしまった。
「そ、それは大天使カードじゃない!世界に四枚しかないはず!?」
奥井さんは驚きすぎて、ベンチに尻餅をついた…。
「今朝、理事長先生からもらったの…」
私は今朝、理事長先生からカードをもらったと説明した。
り、理事長先生から直接!?と奥井さんがすごいびっくりしている。
「わ、わかったわ、真島さん。疑ってごめんなさい…」
奥井さんはそう言うと、立ち上がってフラフラとどこか行ってしまった。
はぁ、誤解が解けてよかった…。
まさか戦うのかと思って、私もすごいびっくりしてしまった…。