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「カルチャーフィット採用」と真剣に向き合い続け編み出した、情報発信と見極めのコツを公開

こんにちは、Ubieのsonopyです。
Ubieは創業4年弱の医療AIスタートアップです。カルチャーに極めて強いこだわりを持っており、フィットする人材「だけ」で組織構成するための手段を創業からずっと模索・追求してきました。カルチャー濃度を高めるために最もレバレッジがきき、かつ不可逆でリスクもあるのが「採用」です。2020年に社員数が倍以上(2021年1月現在約100名)に増えるにあたっては、採用のプロセスを刷新しました。
今回はUbieのDevチーム(70名規模)の事例を紹介しつつ、企業と新入社員のカルチャーフィットを「入社時点で」いかにして高めるか。すなわち採用活動でカルチャーマッチ度合いを(相互に)見極めるために企業側はどんな努力ができるか、について書いていきます。

画面の向こうの「職場の雰囲気」を見極めるのは難しい

平時でも、多くの人にとってスタートアップやベンチャー企業への転職は勇気が要るものです。
経営者と意見が衝突したりしないだろうか?成果をどのように出していけるだろうか?メンバーとすぐに馴染めるだろうか?…こうした数多の不安をクリアして入社を決めてくれます。(ありがたい)
さらに昨今の求職者は、「画面越しの面接3回程度で職場の実態や雰囲気を見極め、見たこともない職場・会ったこともない同僚を選ぶ」ケースが多く、(特に心理的に)難しい判断になります。もちろんリモートでも情報収集は充分にできたり心理的な抵抗が全くなかったりする人もいますが、不安に思う人も多いはずです。
元来、採用活動/転職活動には情報の非対称性がつきものです。ことリモート中心となると、これまで以上にカルチャーフィット採用に取り組む必要性が増していると感じています。

そんな背景もありUbieでもここ一年試行錯誤しながら追求してきた内容を、3つのポイントでご紹介してみようと思います。

1)「質と量」の観点で最大限情報開示を行う

採用活動において、特にスタートアップは基本的にどんな会社か外部に正しく伝わっていません。
Ubieでは、候補者から見てカルチャーフィットするかどうかの判断がつきやすいように、情報の「質と量」を軸に情報開示を行っています。

【質】無難で伝わらないよりは、好き嫌いの分かれる「パクチー採用」

「自由と責任」を掲げるNetflix社は、尖ったカルチャーの情報発信によってフィットする人材を惹きつけ、合わない人材を遠ざけている代表的な事例です。Webサイトでもカルチャーについて比較的強い表現で説明しています。

Ubieでも、採用の情報開示においては、特徴を明確に表現することにしています。これを、「好きな人は好きだが嫌われる場合もある」といった意味で「パクチー採用」と呼び、社内で促進しています。

スタートアップのチームはPMF前の未完成なプロダクトと同じです。足りない機能だらけの状況であらゆる顧客に好かれる必要はなく、ビジョンに共感しコアな機能を使い倒してくれるユーザーに見つけてもらうことの方が重要です。

どの企業でも言える情報、誰にも嫌われない当たり障りない情報は、採用活動においては情報の質が高いとは言えません。
画面の向こうの候補者に良し悪しや好き嫌いを見極めてもらうためには、「好きじゃない人もいるかも」と思う部分でも、そういう部分こそ、これまで以上にハッキリと言語化していくべきだと考えています。

【質】基軸となる情報をまとめた 「カルチャーガイド」

Ubieでは、ビジョン・事業・組織・行動指針を言語化したカルチャーガイドを公開しています。Ubieのあらゆる情報・考え方がこのカルチャーガイドを基に説明出来るようになっています。これが「パクチー」の基盤です。ここからズレないようにしつつ情報発信していきます。

カルチャーガイド

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カルチャーガイドは、職種や志向性問わずどんな候補者にも必ず入社意思決定前に読んでもらっています。基軸となる考え方について理解・納得した上で入社を決めてもらうと、大きなミスマッチが起こる可能性を減らせるはずと考えるからです。

【量】あらゆるメンバーが自分の言葉で語る多角的情報

ここまで情報開示の「質」について書きましたが、発信の方向性を定めた上で「量の発信」も重要です。採用候補者の職種・状況・タイミングによって必要な情報は異なるので、様々な角度からの情報公開で、候補者から見た企業の姿を立体的にしていきます
情報量という意味では業務委託などで一緒に仕事できるのが早い(Ubieも業務委託経由で入社に至るケースは多い)ですが、そうもいかない場合も多いです。
そこで、Ubieでは具体的に、以下のような取り組みを行っています。

<採用資料>
会社全体だけではなく、いくつかの職種/チームが紹介資料を公開しています。人事などではなくその職種/チームのメンバーが、何をどう伝えるべきかメッセージや構成から考え作成しています。

<個人のブログ/note>
候補者の様々なニーズに対応できるよう、個々のメンバーの発信に注力しています。(noteマガジン)
オウンドメディアなどは情報を編集しすぎてしまう可能性があるので、あえて注力していません。

<Twitter>
就業時間中のTwitterはもちろん禁止ではなく推奨です。メンバーリストなども公開しています。

<イベント / 動画配信>
オンライン説明会UbieDayや、エンジニア運営のUbie Tech Talkなどを行っています。他にもYoutubeでのオフィス訪問動画なども準備中です。

<音声配信>
音声での発信にも力を入れています。共同代表 エンジニア @quvo の devchat.fm のほかに、ビジネス職種のstand.fmも準備中です。
直近ではClubhouseの配信なども行っています。

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特に音声配信やnoteなどは慣れないこともあり四苦八苦してはいますが、選考中の方などがかなり読んでくれており、内定辞退阻止などにもつながっています。

このように、方向性を定めて(=質)、あらゆる情報を出していく(=量)と、ファネル全体にポジティブな影響があります。

2)「カルチャーフィットする人材とは何か」を徹底的に言語化する

次に、企業側が候補者のカルチャーフィットをどう見極めるか。(上から目線にも感じるので書きにくい内容ではあるのですが、採用は相互に見極めるマッチングの活動なので、見極めの話は避けては通れません)

「この人はカルチャーフィットしそう!」と思うのは、どんな時でしょう?
「なんとなくフィーリングで!」とは言わないまでも、具体的な言語化が難しい場合もあるのではないでしょうか。
「なんとなくフィーリング」は初期のスタートアップにおいては機能しますが、規模が大きくなってきたりリモート環境下だったりすると「なんとなく」の認識が人によってズレてきます。また、次の面接官に残論点を適切に引き継いで選考プロセス全体の精度を上げる意味でも、「なんとなく」は最善策ではありません。

そこでまずやるべきことは、カルチャーフィットする人材の言語化です。
人材要件を定めている企業は多いですが、「人材要件とカルチャーの接続の定義」については行っていないケースがありそうです。
人材要件とカルチャーの関係性が明示的でないと、人材要件以外の理由でカルチャーフィットを評価するようになり、結局「なんとなく」の判断につながったり、人材要件が形骸化したりしがちです。

Ubieの場合は、カルチャーフィットする人材=バリューを体現可能な人材と定義しており、バリュー体現可能な人材の要件を6つの人材要件(Ubieness)に落とし込んでいます。

会社によって整理の仕方は異なるので、必ずしも「カルチャーフィット=人材要件」である必要はありません。例えば人材要件がスキル寄りの場合は「スキル要件」と「カルチャー要件」の2つに分けるなど、差分の言語化が重要です。

オススメの言語化ポイントです。以下を目次として言語化していくと、カルチャーフィットする人材とその見極め方の大枠が明文化できます。

◆前提
・要件を定める目的
・要件の要素一覧
・要件間の優先順位やMust/Want(あれば)
◆各要件の詳細
・各要件の定義文
・各要件の存在意義(あると何が起こるか/ないと何が起こるか)
・各要件を見極める際の要点
・要件ごとの想定質問(+深堀り質問)
・要件ごとの評価基準
◆選考基準
・選考プロセス全体での評価基準(スキル要件とカルチャー要件のバランスや、平均X点以下は不合格など)

Ubieの場合はこれらを詳細に定めており、いわゆる構造化面接に近い内容になっています。これらを言語化・刷新したことで、要件の認識が高いレベルで揃ってきています。

3)面接力が強化されていく学習材料とオペレーション設計

最後に、代表や古参など特定のメンバー以外、特にカルチャーフィットの見極め経験が少ない新入社員でも面接できるような仕組みをつくっていきます。

「カルチャー」は各企業固有の内容であり、極めて定性的なテーマでもあるので、いくら優秀なメンバーでも「入社即完璧」にはなりにくいです。例えばGoogle出身者がGoogle基準での見極め、マッキンゼー出身者がマッキンゼー基準での見極めができるからといって、自社のカルチャーフィットの見極めができるかというと別問題です。
そこでUbieでは、以下のように習熟度を高める材料と仕組み作りを行っています。

<ドキュメント整備>
要件定義以外にも、面談をサポートするドキュメントを用意しています。
▼Notionの目次から抜粋

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<模擬面談の動画>
各要件について、社員同士で模擬面談を行った動画が共有されています。想定質問に対しての回答、深堀り質問、評価などの情報を収集可能です。

<面接官のグルーピング>
カルチャー見極めの習熟度ごとに面接官を3段階に分類しています。入社後間もないのメンバーは必ず習熟度の高いメンバーと同席するなど、組み合わせに利用しています。

<面談の録画>
候補者の方に許可をいただけた場合、面談を録画しています。
・判断に迷うポイントがあった場合に、面談に参加していないメンバーも動画を見て議論する
・2次以降の面接官が事前にキャッチアップする
といった用途で利用しています。

<面談結果入力フォーム>
要件を組織に実装するにはこれが一番肝心です!
結果入力は面談を実施するたびに行うので、フォームを工夫しておくと、要件・質問・基準などを陳腐化させず運用にのせることができます。

ポイント
 ・ナレッジ詳細へのリンク集を兼ねる
 ・要件と評価基準のサマリを記載する
 ・面談結果と共に、同席者へのフィードバック項目も入れる

▼フォーム冒頭にリンク集を追加

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▼要件と基準のサマリ
確認しながら評点をつけられるようにします

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▼同席者へのフィードバック

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見極めについてはかなり細かいところまで紹介してみました。組織の価値観や取り組みの浸透にはこうしたオペレーションへの組み込みが重要です。
これらの仕組みは、基本的に「全員がカルチャーの見極めをできるようにすること」を前提で用意しています。また、要件そのものの刷新や評価基準、今回紹介した一連のドキュメントも、社内有志のプロジェクトチームで作成しています。中長期的なカルチャー強化のためには、特定のメンバーだけに任せず全社員でカルチャー形成への責務と権利を持つことが効果的だからです。

まとめ

サマリ
・画面の向こうの「職場の雰囲気」が立体的に伝わるような情報開示
・一部の人に多少敬遠されても自社の持ち味を表現する「質」の情報開示
・メンバーが自分の言葉で情報を出しまくる「量」の情報開示
・カルチャーフィット人材の徹底的な言語化
・面接力が強化されていくオペレーション設計

この記事を書きながら、「内容は当たり前のことしか言っていないけど、結局やりきれるかが差別化ポイントになるなー」と思ったりしました。
事業モデルに合った強いカルチャーは事業拡大を後押しするアセットであり、よいと信じられるカルチャーの存在はメンバーにとって最高の福利厚生にもなり得ます。カルチャーフィットは定性的なテーマで評価も難しいですが、だからといって「難しいなー」と思考停止せず、今後も追求し続けていく所存です。
最後まで読んで下さりありがとうございました!

おまけ:入社後のカルチャーオンボーディングについてはこちら

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