思い出の鶏うどん

20代の頃、やたらとホームパーティーを開きたがる友人がいて、わたしもよくお招きしてもらっていた。
ホームパーティーと言っても、
「一品料理を持ち寄りましょ」みたいな
オシャレなやつではなくて、冷凍のたこやきとか、ピザとかから揚げとかをわいわいつまみながら、飲める人はお酒も飲んでとにかく騒ぐというジャンキーな集まりだった。
こういうのは、心身が若かったからできたように思う。

盛り上がってくると、今度は家主が七輪を引っ張り出してきてベランダで餅を焼きだしたり、
「もう食べれないってば」と言っているのにさらに新しい食べ物をチンしようとしたりして、
結局それも食べつくすというカオスな会だった。

ひとしきり、盛り上がった後は、しばらくまったりタイム。
床でごろごろしながらテレビを見たりおしゃべりを始める者、家主の息子とギターをいじり始める者、ベランダでたばこを吸いながら何やら話し込む者など、それぞれ勝手なことをやりだす。

そして、宴もたけなわとなり・・・

しめの鶏うどんが振舞われる。

これは、大鍋に骨付きの鶏肉をいくつか入れて、数時間煮込み、
塩とコショウで味を整えただけのスープに冷凍うどんをぶち込んだもの。

数時間とは、パーティー開始時から終り頃までなので、3~4時間くらいである。
それだけ煮込むと鶏肉や骨からだしがいい具合に染み出して、鶏肉はほろほろに柔らかくなり、簡単に骨から分離させることができる。

ジャンキーなパーティーのしめくくりには、シンプルなだし味の、あたたかいうどんをつるつるっと食べるわけだ。

これが本当においしかった。

味の濃いものばかり食べていたわたしたちだけど、
だしの効いたスープは味も風味も優しくて、でもほろほろの鶏肉がちょっとアクセントになり、うどんはつるつると胃の中に入って心身を満足させてくれた。

大勢で食べたからというのも理由になるかもしれないが、わたしはこの鶏うどんが、これまで食べたおいしいものトップ5に入る気がする。
高級な食材とか、有名レストランの味とはまたちがった種類のおいしさだった。

今でもわたしは自分でこのうどんを作ることがある。

さすがに3時間煮込むことはしないが、小さい鍋に骨付きチキンをひとつ入れて1時間強は煮込むことにしている。
塩とコショウで味付けすると、ちゃんとあの時の味になる。
いや、さすがに大鍋で3時間にはかなわないか。

それでも、夏バテにやられた身体に、このうどんは優しく力を与えてくれる。
冬の寒い夜にのんびり食べるのもよい。
たまに気分でショウガを少し入れても美味。

なかなか大勢で集まることはできなくなってしまったが、
またいつか、みんなで食べたいな。
近況報告でもしながら?
いや、結局はどうでもいいようなふざけた話で大騒ぎするのだろう。

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