こんにちは、SOMPO Digital Labデザインチームでプロダクトデザイナーをしている林です!私は入社1年目・チーム最年少のデザイナーで、現在は先輩のサポートデザイナーとして日々の業務に携わっています。
私のターンでは、新米デザイナーとしての日々の学びの記録を更新していければと思っています。そんな学習記録の1つ目のテーマは「ユーザーの脳や認知の仕組み」についてです。
ユーザーに寄り添ったデザインをするためには、デザイナーがユーザーの脳や認知の仕組みを理解していることが大切ですよね。「認知心理学」は、複雑なユーザー心理を理解するのを助ける重要な知見ですが、学問的な説明が多く、実践まで落とし込むには少しハードルが高い印象がありました。
デザイナーとして認知心理学を実践的に活用していくためには、どのような点に気をつければよいのでしょうか? その答えを求めて法則が効果的に働いているデザインの具体例や共通パターンを探究してみた結果、導き出された「UIデザイン上のテクニック」を整理し、法則の「逆引き」の形でまとめてみました🙆♀️
行動・体験について
1.「ピーク」と「エンド」の瞬間に細心の注意を払う
「感情のピーク」と「最後」の瞬間が体験全体の印象に影響するため、ユーザージャーニーの中では特にこの2つに注意することが大切です。
2.最初の状態から進展があった場合、その状態を明示することでモチベーションを引き出す
初回ログインポイントやスタンプカードによってリピート率が高まるように、アプリやサービスを登録した最初の状態から何らかの進展があった場合、その状態を明示することで、ユーザーは利用状況が進行したという実感が湧き、継続して利用したくなります。
3.ユーザーとのタッチポイントを複数設ける
SNSや広告・チラシなどを通じて同じ情報に何度も触れることで、関心や好意を持ちやすくなるという心理的な効果が期待できます。ただし、接触が頻繁過ぎたり、1回の接触あたりの内容が過激だと、しつこい印象を与えてしまう場合があるためバランスに注意しましょう。
4.ユーザーに継続を促したい場合は、行動の履歴を可視化する
「もったいない」という感情は、時に判断を誤らせることもあるものの、物事を継続するためのモチベーションとしても効果的に働きます。ユーザーの行動履歴をバッジやログインボーナスとして可視化することで、継続的な利用を促すことができます。
5.ユーザーが複雑なタスクを実行しているときは、過度なインタラクションや装飾を控える
ユーザーが複雑で難しい作業をしているときは、過剰なインタラクションや装飾を控えストレスレベルを下げ、タスクに集中させましょう。
6.ユーザーが次のアクションを起こしたくなるような報酬を用意する
行動の先に報酬があることを学習すると、ユーザーは自発的に次のアクションに進みやすくなります。ポイントなどのインセンティブ・行動に対するフィードバックなどを有効活用しましょう。
7.ユーザー自身が自由にカスタマイズできる範囲を提供する
ユーザーが自由にカスタマイズできるよう、選択肢を設けましょう。選択するという行為を通して、ユーザーは「パーソナライズされたサービスを享受している」という実感を得やすく、サービスやプロダクトへの愛着心に繋がります。
8.大幅なデザインリニューアルをする際は旧デザインにも戻れるようにする
アプリやサイトのデザインの大きなリニューアルは、顧客体験の向上に大きく貢献するものだったとしても、見慣れるまで時間がかかり不便を感じるものです。移行期間を設けることで、ユーザーは緩やかに新しいデザインに慣れることができます。
9.思い切って機能を削ることも検討する
機能が増えると、その分脳が処理しなければならない情報も増え、ユーザーは使いにくさを感じます。機能を検討する際には、なければ成り立たないものなのか・念の為あってもよい程度のものなのか、必要性を十分に考慮しましょう。
10.エラーを防ぐ対策は複数設ける
1つのエラーは複数の要因が重なって生じるものです。複数の対策を設けておくことで、要因の連鎖を防止し、エラーの発生を避けることができます。
11.「共通点」は可視化する
共通点の提示は、同じ集団に所属しているという意識を働かせるために効果的です。1つの集団への帰属意識が働くと、同じ集団に所属しているメンバーに対して好意的な印象を持ちやすくなります。
12.ユーザーに複雑さを意識させない
簡略化できない複雑な設定・プロセスがある場合には、ユーザー側にその作業の労力を負担させるのではなくデザインやシステムで吸収できるようにしましょう。
13.「きっかけ」「簡単さ」「モチベーション」を意識する
ユーザーの行動を変えるデザインを行うためには、「きっかけを作る」「簡単で使いやすくする」「モチベーションを育成する」ことを意識したサービス設計をしましょう。
14.ユーザーは最初に接した情報に引きずられやすいことを考慮する
ユーザーが得た第一印象を覆すのは簡単ではありません。サービスの推し出したい特徴やメリットは、先に提示されることでユーザーの印象に残りやすくなります。その後に得た情報は最初のものと無意識のうちに比較検討されます。
情報の配置について
15.同一の場面で使われるボタンは、近接させて配置しグループ化する
ユーザーの位置から近い対象・サイズが大きい対象ほど選びやすく、ユーザーから遠い対象・サイズが小さい対象ほど選びにくいため、対象の「距離」や「大きさ」に考慮してデザインしましょう。例えば距離に注目した場合、一緒に使われそうなボタンはまとめてグループ化することで、ユーザーがよりスムーズにタスクを進められるようになります。
16.情報はチャンク化して提供する
個々の要素「チャンク(情報の塊)」としてまとめて提示することで、ユーザーが情報を認識・記憶しやすいようにしましょう。
17.優先度の高い情報は視覚的な区別をつけて目立たせる
見た目にメリハリを付けることで、情報の優先度を正しくユーザーに伝えましょう。
18.不必要に情報を隠さないようにする
ユーザーはどの機能がどこに隠されているのかは覚えていないものという前提の上で、デザインを行いましょう。特に使用頻度が高いものに関しては、常に画面上に表示しておくのが望ましいです。
19.重要な情報は上部か下部に配置する
コンテンツの重要度に合わせて、配置順序を考慮しましょう。
選択・決定・記憶について
20.よく選ばれている人気がある選択肢を提示し、ユーザーの意思決定に関する迷いを軽減する
ユーザーは、無意識に他人が選んだ選択肢に影響されやすいという特徴を持っています。選択肢が多数存在する場合、他人が選択した選択肢を提示することで「数が多すぎて何を選んだらよいかわからない」というユーザーの心理負担を解消できます。
21.一度に選択できる選択肢の数は段階的に絞って提供する
選択肢が多い場合には、いくつかのチャンクに纏め、ユーザーが一度に見る選択肢の数を抑えましょう。
22.決定作業を途中で中断したり延期したりできるようにする
決定という作業はユーザーに大きな心理的ストレスを与えてしまうため、決定の前にその判断が妥当かを検討できる余地を与えましょう。
23.目的に達するまでに複数の可能性を提示することで、選択行為における満足感を高める
さまざまな検討プロセスを用意することで、ユーザーは検討を重ねたという実感を持つことができ、満足感を持って最終的な選択・決定を行うことができます。
24.目的を達成するために最も負荷がかからない方法手段を提供する
ログインや決済など、いくつかの方法をユーザーに提示する際には、最も負荷がかからない方法を提示できるようにしましょう。
25.二択で回答すると思い込みやすい設問では、選択肢にプルダウンよりラジオボタンを使う
プルダウンでは選択肢が1つしか目に入らないことにより、 質問内容によっては、 無意識のうちに2択と勘違いさせる可能性があります。全ての選択肢が同時に目に入るラジオボタンであれば、選択肢を見落としたり、二択であると勘違いしたりすることがなくなります。
演出・表現・効果について
26.世に広まっている機能のデザインは積極的に取り入れる
チャットによるメッセージ送受信やカメラによる撮影など、すでに世間的に多く存在している機能に対して、ユーザーは「こういう挙動になるはず」という期待値を持っています。期待に沿ったデザインを行い、ユーザーの認知負荷を軽減しましょう。
27.見た目を整えることで、ユーザーに「使いやすい」印象を与える
WEBサイトを見た人は0.5秒以内にそのサイトに対して脳内で評価を下しているといいます。整列や適切なホワイトスペース、粗さのない画素数などを考慮し、見た目を整えることでユーザーは直感的に「使いやすそうなプロダクトだ」という印象を抱きやすくなります。
28.色の持つ常識的なイメージを逸脱しない
「危険:赤」「男性:青・女性:赤」のように、世間で浸透しているカラーイメージに沿っていない場合、ユーザーが困惑し、正しい情報が伝わらなくなってしまいます。
29.ユーザーが期待する結果を裏切らない
「押せると思ったボタンが押せなかった」「飛べると思ったリンクに飛べなかった」など、プロダクトの挙動がユーザーの期待に沿わなかった場合、ユーザーは不快感を感じてしまいます。
30.商品やモノの演出は、理想的な使用シーンや体験と紐付けると効果的
ユーザーに連想してほしいイメージに沿った複数の画像を使用することで、画像間に相互関係が生じ、受け取ってほしいメッセージを表現することができます。
31.ユーザーの位置感覚とデザイン上の表現が矛盾しないようにする
日本やアメリカなどの文化圏では、ユーザーは「左→右」という流れでプロダクトは組まれているものという認識があります(※アラビア圏など逆の文化圏もあります)。そのため、ユーザーの方向感覚に沿った要素の配置を行うことが大切です。
32.ユーザーに特定のアクションを促すためには、そのアクションを起こしたくなるような演出をする
ユーザーに起こしてほしいアクションがある場合には、どんな感情の時にそのアクションを起こしたくなるのかを考え、演出に取り入れましょう。
33.ユーザーの共感を促すような演出を意識する
感情は相互に作用する習性があります。この習性を用いて、サービス・プロダクトと接する中でユーザーに感じてほしい感情に、ユーザー自身を促すことができます。
34.目の錯覚を踏まえて視覚調整を行う
目から入った情報が、その物理的な実体とは異なるように見えることがあります。その時、人間の目の錯覚を考慮しデザインの調整を施すことで、視覚的な違和感を軽減できます。
35.ユーザーが自分ごと化しやすいように、属性に関する情報は具体的にする
訴求力がほしい際には、ターゲットに即した具体的な情報を提示し、ユーザーに「自分と関係のある情報だ」という印象を与えることが効果的です。
36.伝えたいメッセージを一番強調できる見せ方を検討する
同じ情報を扱っていても、見せ方を変えることで、アピールしたいメッセージをより強調してユーザーに伝えることができます。
機能・システムについて
37.ページの読み込み時間を考慮する
ページの読み込み時間が長いとユーザーの離脱につながってしまいます。デザインの段階からレスポンスに負担がかからないように以下のような工夫を行いましょう。
画像データの軽量化
Webフォントの使用はなるべく控える
不要なインタラクションをなくす
38.システム上の制約をユーザーに強要しない
操作上の負担を軽減するため、全角禁止や入力フォームの分割などユーザーにとって入力作業に不便を強いるような制約は可能な限り無くしましょう。
とてもボリュームのある記事になってしまいましたが(笑)、ここまでお読みいただいた忍耐ある皆さん、誠にありがとうございます。「なぜこのデザインはよいのか?」「なぜ自分はこのUIを使いやすいと感じるのか?」を言語化する上で、認知心理学はとても良い足掛かりでした。デザイナーでもデザイナーでなくても、よりよいユーザー体験を目指し、目の前のプロダクトと向き合っている全ての皆さんの参考になれば幸いです。
✍️参考資料はこちら