【簡易まとめ】イスラエルによるパレスチナ占領問題を国際法の観点から勉強するための補助資料
重要ポイントまとめ
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↓ ここだけでも抑えよう! ↓\\
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\textbf{<そもそも国際法とは?>}\\
・条約 (国連憲章など) や慣習国際法など、国家間で決めた、国家が守るべきルールの総称\\
・国際法に従って、国際司法裁判所等の国際司法機関が国家、国際機関等に対する裁判を行う\\
・国際的な裁判所には、検察や警察のような、刑罰を与え、法を強制執行する常設機関が無い\\
・刑罰が無くとも国際法に従う義務はある。これを「法的拘束力がある」と言う\\
・実質的には「違反すると国際的な地位を損なうリスクがある」という点が抑止力として重大\\ \hline
\textbf{<イスラエル-パレスチナ問題の国際法上の重要なポイント>}\\
❶パレスチナ難民とその子孫は、イスラエル領となった元の土地に帰還する権利「\textbf{帰還権}」を持つ\\
❷イスラエルの1967年以来のパレスチナ占領/入植/併合は「\textbf{武力による領土取得の禁止}」に抵触\\
❸イスラエルによる被占領地のパレスチナ人に対する制度的差別は「\textbf{人種差別撤廃条約}」違反\\
❹「\textbf{武力不行使原則}」の例外で国家に認められる「\textbf{自衛権}」は、自国の占領地に対して無効である\\
❺「\textbf{民族自決の原則}」によりパレスチナ人は武装闘争も含めて占領に抗する権利「\textbf{抵抗権}」を持つ\\
❻イスラエルの自衛戦争でもパレスチナ人の武装闘争でも民間人の殺害・拉致は\textbf{国際人道法}違反\\
❼個人の行っていない罪で集団を罰する「\textbf{集団懲罰}」(\textbf{飢餓の戦争利用}を含む) も\textbf{国際人道法}違反\\
❽イスラエルの2023年10月7日以降のガザ攻撃は「\textbf{ジェノサイド条約}」違反を提訴されている\\ \hline\hline
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1. 主要な国際司法機関について
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\textbf{1. 主要な} &\textbf{国際司法裁判所, ICJ} &\textbf{国際刑事裁判所, ICC} \\
\textbf{国際司法機関}&\text{International Court of Justice, ICJ}&\text{International Criminal Court}\\ \hline\hline
上位組織 &国連 {\tiny ※主要 6 機関 = 総会, 事務局, 国際司法裁判所,} &なし (独立機関) \\
&{\tiny 安全保障理事会, 経済社会理事会, 信託統治理事会}&\\ \hline
根拠となる条約 &国連憲章 第14章 &国際刑事裁判所ローマ規定 \\ \hline
設立年 &1945年 &2003年 \\ \hline
加盟国 &193ヵ国(国連加盟国全て) &123ヵ国 {\tiny ※ウクライナ、パレスチナは加盟} \\
{\tiny(条約批准国)}&& {\tiny ※米、中、露、イスラエルは非加盟} \\ \hline
法廷所在地 &オランダ ハーグ &オランダ ハーグ \\ \hline
特徴 &\textbf{国家}の国際法違反や国家間の係争を裁く &\textbf{個人}の国際人道法違反を裁く \\
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2. 国際法と国内法
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\textbf{2. 国際法} &\textbf{国際法} &\textbf{国内法} \\
\textbf{と国内法}&\text{International law}&\text{National law}\\\hline \hline
事典の説明&国家間の合意に基づいて、 &ある国の国内においてだけ \\
\tiny{(『デジタル大辞泉』)}&国家間の関係を規律する法。&効力をもっている法。\\ \hline
法源&● 条約\tiny{ (文書による国家間の合意)}&● 憲法・法律・政令 \\
\tiny{※裁判の基準となる}&● 慣習国際法\tiny{ (広く共通する諸国家の慣行)}&・判例\tiny{ (過去の司法判断 ※英米法では法源の中心)}\\
{\tiny 規範のこと}&・法の一般原則\tiny{ (国内法で適用してきた原則)}&・慣習法 \\
&・判例・学説&・学説\tiny{ (法源としての地位は補助的)}\\ \hline
適用範囲 &合意当事国 \tiny{ ※慣習国際法は普遍的に適用} &特定国家の領域内 \\ \hline
法的拘束力&ある。&ある。\\
{\tiny (従う義務)}&&\\ \hline
刑罰を &ない。&ある。\\
執行する機関&諸国が制裁によって代行する。&(警察)\\\hline\hline
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※(補足1) 以下は、国連憲章(条約)に基づいて国連加盟国全てに対して拘束力のある国際法である。\\
●国連安全保障理事会の決定 (国連憲章第25条) \\
●国際司法裁判所の判決および命令(国連憲章第94条) \\ \hline
※(補足2) 以下は、法的拘束力を持たないが、国際法を現実に適用する解釈の際に重視される。\\
●国連総会の決議 (国連憲章第10条)\\
●国際司法裁判所の勧告的意見 (国連憲章第96条) \\
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3. 二つの戦争法
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\textbf{3. 二種の戦争法} &\textbf{武力行使に関する法} &\textbf{国際人道法(戦時国際法)} \\ \hline \hline
ラテン語での言い方 &\textbf{“Jus ad bellum”} &\textbf{“Jus in bello”} \\
&(ユス・アド・ベルム)&(ユス・イン・ベロ)\\\hline
何を扱う? &武力行使を用いる権利の有無 &武力行使の方法・対象の制限 \\ \hline
具体例 &武力行使が認められ得る例&制限の例\\
&・「自衛権」の行使&・化学兵器の使用禁止\\
&・「(武装)抵抗権」の行使&・文民の殺害/拉致の禁止\\ \hline
イスラエルの適法性 &× 違法である可能性が高い&× 違法である可能性が高い\\ \hline
パレスチナの適法性 &○ 適法である可能性が高い&× 違法である可能性が高い\\ \hline\hline
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