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第6回 世界唎酒師コンクールから見えた日本の現実と日本酒の未来
こんにちは、ソムリエ シャスラです。
2月20日(木)、世界唎酒師コンクールの決勝が開催されました。
ライブ観戦しながら私が強く感じたのは、日本と世界の「経済格差」、そして「日本酒の未来」です。
世界唎酒師コンクールとは?
世界唎酒師コンクールは、日本酒・焼酎の魅力を的確に伝える世界一の唎酒師を決める大会。
過去5回の開催を経て、世界中の唎酒師たちが知識・技術・ホスピタリティを競い合ってきました。
私も2018年の第5回大会に出場し、国内予選を突破。
世界大会でクォーターファイナリストになりました。
今回はエントリーして国内1次予選を通過したものの、持病の悪化で沖縄へ転地療養することになり、国内最終予選を辞退。
しかし、決勝戦は選手目線でじっくりと観戦し、前回大会でともに世界を相手に戦った日本代表の唎酒師・ソムリエを応援していました。
目の当たりにした「日本の貧困化」
決勝戦のロールプレイングのひとつは、「日本人のサラリーマンの父親と21歳の娘が乾杯酒として日本酒を選ぶ」
というシチュエーションで、唎酒師・ソムリエが日本酒を一銘柄選び、その魅力をプレゼンするというもの。
6名の決勝進出者の中で、私が最も素晴らしいと感じたのは、日本代表の20代女性唎酒師でした。
彼女が選んだのは京都の日本酒。
20代女性にとって親しみやすく、父親世代にも馴染みがある。
そして価格は2,640円前後と手の届きやすいもの。
まさにベストな選択。
しかし、その後の展開に驚かされました。
台湾代表とアメリカ代表の唎酒師・ソムリエが選んだのは、
「SAKE HUNDRED 百光 別誂」
その価格、なんと 28,600円!?
日本代表の選択した酒の10倍以上の価格です。
確かに日本酒業界では、高級スパークリング日本酒を推進する動きがあります。
日本酒業界が”AWA SAKE”をブランド化した「awa酒協会」を設立し、スパークリング日本酒を乾杯酒やアペリティフとして促進するムーブメントがあります。
しかし、価格はここまで高くはありません。
海外の代表選手が勧めた「SAKE HUNDRED 百光 別誂」は、まさにフレンチの高級レストランで「ドン ペリニヨン」クラスのシャンパーニュを薦めるようなものです。
しかし、日本のサラリーマン家庭の乾杯酒に、この価格帯の日本酒を選ぶのは現実的ではない。
「一体どれだけのセレブ層が想定されているのか?」
しかし、実際には海外のレストランやリカーショップでは、このクラスの日本酒が普通に売れているのです。
その背景には、
世界的な可処分所得の増加
円安の影響による価格競争力の向上
があります。
日本は、「失われた30年」と称される経済の停滞で、知らず知らずのうちに「日本の貧困化」に陥っていることを思い知らされました。
日本酒業界にとって追い風となるか?
サッカー元日本代表で、現在日本酒を世界にプロモートする事業をされている中田英寿さんは、
「日本酒は、本来の価値に見合った価格で評価されるべき」
と語っています。
日本酒は、安さだけで選ばれる時代から、**「本当に美味しいものを求める時代」**へと変わりつつあるのです。
台湾代表やアメリカ代表の唎酒師・ソムリエは、その変化を肌で感じていたからこそ、「SAKE HUNDRED 百光 別誂」を選んだのでしょう。
高級路線で海外市場に目を向ければ、ボルドーやブルゴーニュワインのように、日本酒も世界的ブランドになり得るかもしれません。
この流れが加速すれば、日本の酒造メーカーが酒類の世界市場でトップ企業へと成長する未来も見えてくるのではないでしょうか。
それによって、日本が再び経済大国として甦る未来が到来することも…
世界唎酒師コンクールの教訓
今大会で優勝したのは、台湾代表の唎酒師・ソムリエでした。
日本代表も素晴らしいパフォーマンスでしたが、勝敗を分けたのは、**「普段から世界市場を見据えているか」**ではないかと感じました。
世界唎酒師コンクールの大人としての目的は、日本酒をいかに世界へ広め、売上を伸ばすか。
日本の唎酒師・ソムリエは、国内市場の縮小にとらわれず、もっと**「世界に目を向けたセールスプロモーション」**を意識すべきなのかもしれません。
たとえば、日本発祥の「柔道」がオリンピック種目として採用された後に「JUDO」として国際化したように…
「唎酒師」も「KIKI SAKE SHI」へと変化し、日本人が再び世界チャンピオンになる日が来るのではないでしょうか。
そんな未来を楽しみにしています。
これからの日本酒を楽しむために
日本国内でも、高級日本酒を日常に取り入れる文化が広がりつつあります。
もし、「特別な日の乾杯酒」として選ぶなら、海外の唎酒師・ソムリエがセレクトした、「SAKE HUNDRED 百光 別誂」
これを機に、あなたも「世界基準の日本酒の楽しみ方」を体験してみてはいかがでしょうか?
お読みいただきありがとうございました。
この記事の執筆者
ソムリエ シャスラ
スイス プロフェッショナル ソムリエ協会(ASSP)所属ソムリエ/国際唎酒師(英語)/世界唎酒師コンクールクォーターファイナリスト
もうひとつのブログを書いています。