2021/03/18の日記
上品な花柄のスカートが欲しい。ひらひらと、風をたくさん含むもの。それから、かろやかなパンプスも欲しい。色は、やわらかな春色がいい。
昨年は何かのために服を選ぶ、ということがめっきりなくなった。仕事中はスーツだったし、休日も家の中でじっとしていた。季節の移り変わりは、窓枠の中でだけ見つめるものになった。同時に、服も。もういつから買っていないのだろう。思い出せないくらいには、前なのだ。快適さという名の楽さを重視し、わたしのワードローブはなんだか野暮ったいものになっていた。
今日は郵便物を出すために外へ出た。「自転車で行けば」と母は言ったが、なんとなく歩いて向かいたかった。たった数分の道のり。日差しがすっかり春のそれだ。花が咲いている。風があたたかい。鳥が鳴いている。散歩中の犬の後ろ姿が、心なしか幸せそうに見えた。
もともとインドア派だったのでステイホームはそれほど苦ではなかったが、それでも春の陽気はわたしのような蓑虫でさえも浮足立たせる。思わず走ろうとしたけれど、できなかった。履き古したスキニーでは脚がもつれる。ぼろぼろのスニーカーでは重すぎる。
新調しなければ。
いち、にの、さんでコツンと地面を蹴り、一気に風を含んで飛べるような。
今のわたしの身体にまとわりつく憂いがほどけるくらいの。
変わらずやってきた春の景色の中に、わたしも入りたいのだ。