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【フランス日記】パン屋の袋が粋な件

パンはもちろん味が第一ですが、商品そのものの品質だけでなく、お店の外観や内装も店舗に付加価値を与える要素だと感じます。
そんな中、フランスの中でも特にパリのパン屋はパンを包装する紙袋へのこだわりを感じます。今日は個人的に面白いと思った袋や好感を抱いたパン屋の袋をご紹介します。

Tranché, Rochechouart店

Tranchéの袋がこちら。

Tranchéの紙袋
紙袋の上に書いてある一文。

「Ici la seule routine, c'est se faire plaisir.」
直訳すると「ここでの唯一の日課は、楽しませること」になりますが、「当店の唯一の掟は皆を喜ばせること」と言うニュアンスに近い文が書かれています。この日Tranchéで頂いた商品のコスパに大変感動していたので思わず「すごい!実践してる!」と一人で歓喜しました。

作者が感動し、紙袋の文言と同意するきっかけをくれた商品:『昨晩の半額シュークリーム』。新鮮じゃなくてあんなに美味しいなら当日のシュークリームには一生手を出さなくていいと思いました

続いて面白い紙袋を取り扱うパン屋をご紹介します。

Panade

平日の午前中でも店の外まで行列が出来る人気店、Panade。

Panadeのクロワッサン

こんな美しすぎるクロワッサンを販売している店の紙袋には…

2行目の « since pas longtemps (since そんなに長くない期間) »

英語とフランス語混ぜているこの一文は、本来「(例)since 2002 (2002年創業)」など創業何年を伝える為に使われる言葉ですが « pas longtemps (そんなに長くない期間) »とアバウトにしてる感じが現代らしくて粋だなと思います。

続いて同じ類で面白いパン袋を提供するパン屋がこちら。

The French Bastards

« French Bastards »を訳すると「フランスのバカ達」「フランス人バカ達」になります。店名から中々エッジが効いてます。

ショーウィンドウ用にディスプレイされているパン

フランスの様々なパン屋で思う事ですが、一個一個のパンが芸術作品のようで見惚れてしまいます。日本のパン屋で売られている美しいパンにも見惚れますが、フランスではパンのプレゼン方法が優れているせいか一段と魅力的に見えます。

店内の装飾品

「Bastards make it butter」。Butter(バター)をbetter(より良い)にかけています。そもそも直訳しようがありませんが、より近い翻訳をすると「バカはバターで作る」という意味になるのでクスッと心の中で笑いそうになります。
取り扱っている商品はバカとは無縁な芸術作品のように美しいパンです。

The French Bastards の甘い系パン

そんなThe French Bastardsの紙袋がこちら。

« Maison fondée hier. (創業昨日。)» 「そんな訳あるか!」とツッコミたくなります

また別のサイズの袋にはこんなメッセージも…

«  Boulangerie pâtisserie bastarderie (パン屋 ケーキ屋 バカ屋) »

フランスには boulangerie (パン屋)と pâtisserie( ケーキ屋・パティスリー専門店)それぞれ個別ジャンルだけで無く「boulangerie pâtisserie」(パンとパティスリー専門店) と言うジャンルの店が存在し、それにかけてbastarderieと書かれています。もちろん「bastarderie」と言う言葉は存在しない造語です。

« Hey there you bastards (やぁそこのバカ達) »

このお店は紙ナプキンもバカ推し。私はバカな自覚があるので「はい、バカですが何か?」と返したくなります。

おまけ

粋じゃないけど、強い意志を感じる紙袋をご紹介します。

この愛らしいクロワッサンが入った紙袋は…
「文字量!」と突っ込みたくなる紙袋

ちょっとした作文みたいな文字量。要約するとお店の理念、パン作りの製法、使用している食材の産地や特徴、パン選びの注意点などが書かれています。はい、要約できない程色々書かれています。
これだけ丁寧に書かれているのにこんな1文にまとめたら怒られそうですが、「うち、全てにこだわってます!」と言う感じです。
こんな作文紙袋をかかげてくるパン屋がこちら。

La Maison d'Isabelle

店構えから結構ストロングスタイル。La Maison d'Isabelleと言うパン屋ですが、店名の「La Maison d'Isabelle」より上に書かれている「1e Prix 2018 (2018年1位優勝)」の表記が目立ちます。「2018年1位」の下にはイル=ド=フランス地域のクロワッサン1位を受賞した事が書かれています。更に下に英訳した同じ内容の文も書かれています。

店舗の中でも…

「2018年優勝クロワッサン」とラベルされているクロワッサン

余談ですが、ほぼ全てのパン屋に共通する謎があります。それは必ずしもそれぞれのお店専用の袋が存在しても、その専用袋に入れてくれるわけではない事。オリジナル紙袋の在庫が足りないせいなのか原因は不明ですが、そこそこの頻度で無地の何の変哲もない白い紙袋やベージュの紙袋に入った商品を受け取ったりもします。「前回クロワッサンを購入した時あの袋に入ってたのに、今日は違う…(同じクロワッサン一個なのに)」みたいな感じで同じ商品を購入してもこう言ったケースが発生するので商品別に別の袋が割り当てられているからくりではない様子。実際、La Maison d'Isabelleでは2024年から2025年の期間に何度か購入しましたが、あの長文の紙袋に入れてもらったのは2回だけでした。

まとめ

2023年のデータに基づくと、パリを含むパリ近郊エリアには5400軒ものパン屋があるそうです。ちなみに大阪府にはコンビニが4041軒あるらしいので、コンビニ感覚でパン屋があると思うとフランス人のパン愛の強さを伺えます。
もはや何と比較してどうこの5400と言う数字を受け止めればいいのかわかりませんが、競争率が半端ない事だけはわかります。
パリのパン屋さんは味以外でも勝負しないといけない社会なのかな、と無知なただのパン大好き女は思いましたとさ。

Maison d’Isabelleの袋 表面

以上、恐らく人類の大半にとって心底どうでもいいパン屋の紙袋の話でした。

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