本当は猫でいたいよ。
あなたの前から突然いなくなってしまいたいと、
いつも思っている。
だから髪の毛はなるべく落とさないようにするし、
アクセサリーの忘れ物なんてもってのほか。
借りた部屋着が軽く畳んであること。
ソファのクッションがあなたの枕の隣に並んでいること。
それ以外、日常と何ら変わりない部屋があなたを迎えることでしょう。
猫の精神というものを知っている?
あの、死期を予感したらふらりとどこかへ行くような。
そんなつもりで私は心に猫を飼っている、
気まぐれな女でいたいから。
それを忠実に守る私は忠犬さんだよね。わかっているよ、どうせ私は忠犬さんなんだよ、あなたにも。
だから忠実に守る。
インターホンに映る私のビジュを確認してから、
そっと削除する。
あの部屋のにおいを少し盗んで、
するりと逃げるように去る。
帰り道は決して振り向かない。
そして、もう二度とここへは来ない、かも、と濁す。
毎度まいど忠実に。にゃん、
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