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ヘルメス・トリスメギストス

三越本店の正面入口にそびえるヘルメス。
神秘主義特有のポーズに加え、男女が統合した性器を有し、その腕には二元性の統合を表すヘルメスの杖を持っている。

さらに入口にはソロモン神殿のように2頭のライオン像が威風堂々と構えている。

建物の柱にはオリエントやミトラ教の創世神話に見られる世界卵が刻印され、さらにはあごひげを生やした山羊が顔を出している。

お隣の三井本館にもまた、ヘルメスの杖のシンボルが彫刻されているが、ロスチャイルド家の息がかかった三井家がヘルメスに特別なこだわりがあることを物語る。

そのまた隣の日本銀行にもまた入口には2頭のライオンが、柱には同じ花のシンボルが彫刻されている。

ここでいうヘルメスとは、ヘルメス・トリスメギストスのことであり、紀元前後に興ったヘルメス主義の神である。

ヘルメス主義について我々も少しばかり知っておいた方が良い理由は、現代の反ワク運動のリーダー達がほとんどヘルメス主義の思想だからである。

このヘルメス主義は実のところスピリチュアルの源流の一つであり、その内容もまたスピリチュアルの根幹教義と全く同じなのであるが、これに気付いている人がまだまだ少ないように思われる。

スピリチュアルの教えの本質は決してふわふわしたものではない。

スピリチュアルの教えとは、すべての宗教思想を貫く究極の秘密教義を継承し、それを現代風にカジュアルにしたものなのだ。

たしかにイエス・キリストを抜きにして真理を探究すると、最終的にはスピリチュアルの教えに辿り着き、紀元前後まで遡ればヘルメス主義に至る。

これが精神世界の真実なのだ。

ヘルメス主義とは、ヘルメス・トリスメギストスという著者によって啓示されたとされる、 古代の神秘主義的な一群の文献である「ヘルメス文書」に基づく哲学的・宗教的思想の総称である。

ヘルメス文書は、紀元前3-後3世紀にエジプトで生まれた。

ヘレニズム期においてその中心はエジプトのアレクサンドリアであったが、ここでギリシャ、エジプト、バビロニア、 ペルシャ、ユダヤの思想、宗教、天文学、占星術等が折衷し、ヘルメス主義のみならず、グノーシス主義やユダヤ神秘主義(メタトロン=メルカバ神秘主義)などの新しい思想が発展した。

中世以降、ヘルメス文書の一部分がひとまとまりのものとして扱われており、この部分をラテン語では「コルプス・ヘルメティクム(Corpus Hermeticum)」と呼び、日本においては「ヘルメス選集」と訳されている。

ヘルメス文書の真の著者とされている「ヘルメス・トリスメギストス」は、もともと古代ギリシャのオリンポス神の一柱「ヘルメス」が、ヘレニズム期にエジプトの知恵の神である「トト」やローマの神である「メルクリウス」と融合して生み出された神格である。

ヘルメス・トリスメギストスは、あらゆる知識、秘密の知恵の保有者であると考えられ、 この力によって彼は「すべてを知り、すべてを成すことができる」とされて、暗闇の力に打ち克つ「すべての魔術師の指導者」とみなされた。

15世紀にはヘルメス主義はアラビア経由でヨーロッパに入り、ルネサンス時代において大流行した魔術・錬金術の原理となった。

また、ヘルメスが錬金術の奥義を書いたとされる「エメラルド・タブレット」は、錬金術師の聖書として愛読された。しかしながらエメラルド・タブレットは学術的な資料として挙げられることはまずなく、この名が登場するのは伝承・伝説に関する部分でのみである。

科学革命によって占星術や魔術、錬金術は徐々にその影を潜めていくが、ヘルメス・トリスメギストスは「錬金術の祖」として非常に長い間、錬金術や占星術、魔術の世界に影響を与え続けた。

ヘルメス主義は、現代日本におけるスピリチュアルブームでもエメラルド・タブレットを中心に度々取り上げられ、その思想の復興を遂げている。

ヘルメス文書の中の一部であるヘルメス選集は、18編の比較的短いギリシャ語文書の集成であり、ヘルメス・トリスメギストスからの啓示が主に記されているが、これはあくまでも文書集であって、文書ごとに書かれた時代も著者も異なる。

したがって思想内容も文章ごとに様々だが、全体的には「プラトン哲学」の系譜を引く、古代末期ギリシャ哲学が核となった思想であるといえる。

ヘルメス主義の中心的思想は

「万物照応」である。

万物照応とは「上なるものは下なるものの如し」という、大宇宙(マクロコスモス)と小宇宙(ミクロコスモス)の対応関係のことである。

ヘルメス主義の宇宙観では、新プラトン主義の流出説が採用されており、宇宙に存在する物質はすべて唯一の神(一者)から流出したもであると考えられている。

すべての物質の基本となる神の霊は体内を流れる動物の血液のようなもので、宇宙全体が一個の有機体(動物)として考えられた。

宇宙が一個の有機体である以上、どんなに遠く離れた部分にも必然的なつながりがあるため、大宇宙である天体と小宇宙である人間の間には対応関係が成り立つと考えられたのである。

すなわち、宇宙の天体等の動きや変化が人間の運命に影響を与え、反対に人間も修行などをして完成に近づけば宇宙全体も完成に近づく(影響を与える)と考えられたのである。

古代ギリシャの哲学やグノーシス主義にもみられるこの思想は、古代バビロニアの思想が最古の起源であると推測されるが、この人間の完成とはすなわち一者なる神への帰昇であり、あらゆる二元性を超越して統合する、本来の両性具有性と神性への回帰である。この思想は錬金術の原理であり目的となっている。

ヘルメス選集の中でも特に「ポイマンドレース」や「アスクレピオス」は、同時期にアレクサンドリアを中心に発展したキリスト教グノーシス主義思想との高い類似性が見出される。

実際、グノーシス研究における最重要資料である「ナグ・ハマディ写本」にも、ヘルメス文書の一部が含まれていることから、両者が互いに影響し合っていることが容易に推測される。

詳述は避けるがポイマンドレースはその内容から、インドのウパニシャッドにおける梵我一如、 宇宙的周期性(輪廻)、バビロニア占星術起源の天球層、オルフェウス密儀の内なる神、プラトン哲学・新プラトン主義の両性具有性と統合、グノーシス主義の知ることによる目覚めと救済、ミトラス教の天球層上昇の秘儀など、さまざまな思想が折衷していることがわかる。この思想は後世、現代に至るまで影響を与え続けている。

世界の支配者達は、このヘルメス主義が大好きであり、これが理性的な真理であると結論付けているのだが、一つ確実に言えることは、ヘルメスの杖も、山羊も世界卵もライオン神も、すべて徹底的な反聖書・アンチキリストの思想継承であることだ。

西洋の歴史は聖書を抜きにしては語ることが出来ないが、彼ら支配者達は何故そこまで聖書に反逆するのだろうか。

その答えはいたってシンプルであり、それは聖書が支配者達にとって都合が悪い書物であるからである。

地上のすべての書物の中で、彼らにとって最も都合が悪い書物が聖書なのである。

支配者達はこの数千年に渡り、世界の歴史の隅々で聖書を燃やし、隠し、撲滅し、カモフラージュしてきた。

しかし聖書は彼らの思惑とは正反対に、撲滅されるどころか世界一の大ベストセラーとなってしまった。

これは神のなさったことである。

支配者がこれから加速度的に仕掛ける全体主義社会に対する唯一の根本解決策が、実は聖書には書かれている。

聖書さえも沢山ある参考文献の中の一つに統合してしまう、ヘルメス主義から脱却した者は本当に幸いである。

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主要参考文献:
・荒井献、柴田有 訳「ヘルメス文書」1980
・アルフレッド・モーリー「魔術と占星術(ヘルメス叢書;7)」1978
・草野巧「図解 錬金術」2006
・草野巧「図解 魔術の歴史」2019
・ミルチア・エリアーデ「世界宗教史2」2000
・ミルチア・エリアーデ「悪魔と両性具有」1973
・リンディー・エイブラハム「錬金術のイメージ・シンボル事典」2017
・東條真人「ミトラ教の歴史」2019
・荒井献「原始キリスト教とグノーシス主義」1971
・筒井賢治「グノーシス 古代キリスト教の〈異端思想〉」2004
・大田俊寛「グノーシス主義の思想〈父〉というフィクション」2009
・大貫隆、荒井献 訳「ナグ・ハマディ文書・チャコス文書 グノーシスの変容」2010
・松本正夫「絶対他者と絶対自己の理念的対決-キリスト教的実在論に対するアートマン的観念論の挑戦-」
・聖書 : 新改訳 3 版 新改訳聖書刊行会 訳,日本聖書刊行会, 2003.11

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