老舗総合繊維メーカーの挑戦に伴走。福井から全国区のブランドを目指す /【事例】セーレン
創業135年の総合繊維メーカー・セーレン株式会社。
社名「セーレン」の由来は絹の「精練作業」。精練業から創業し、現在では、福井から世界に発信する総合繊維カンパニーとして、衣料などの繊維製品はもちろん、車輛内装材事業、エレクトロニクス・宇宙産業、そして今回取り上げる化粧品など幅広い事業を展開しています。
祖業ともいえる精練業の想いを引き継ぐのが、今回インタビューを行なった化粧品事業のブランド「コモエース」チームの皆さんです。全国区のブランドを目指して、挑戦を重ねてきました。
ソウルドアウトとの出会いは、2012年の福井営業所の開設時まで遡るそう。福井営業所と「コモエース」の挑戦と、これから目指していきたいことを伺いました。
創業135年の老舗総合繊維メーカー
「toC強化」の会社方針のもとで重要なミッションを背負う
──── 最初に、セーレンさんのご紹介をお願いします!
舘:私たちセーレンは、1889年に絹織物の精練業で創業した総合繊維メーカーです。130年を超える繊維技術を強みに、様々なフィールドで事業を展開しています。
主力の車輌資材事業では、世界トップクラスのシェアを誇り、国内でも多くの自動車にセーレンの製品が採用されています。「セーレンといえばカーシート」という印象をもたれる方も多いです。
メーカーではありますが、toC事業にも力を入れています。その一つが美容領域の化粧品事業です。ブランド「コモエース」の拡大に、ソウルドアウトさんと一緒に取り組んでいます。
──── ありがとうございます。では、舘さんのご経歴や職務内容を教えてください。
舘:住生活資材・メディカル販売部コモエース販売課の課長を務めており、コモエースの販売拡大に取り組んでいます。
私はセーレンに入社して2年ほど福井本社で管理部門を経験し、5年ほど東京でファッション事業の営業としてアパレルメーカー向けにテキスタイルの販売を行なっていました。
その後、会社として化粧品事業を強化する動きがあり、現在の部署に異動。最初の6年はtoB事業を拡大して足場固めを行なうため、商品の取扱店数を増やす取り組みや、天然保湿成分「ピュアセリシン™」を使った化粧品OEM事業に従事していました。そして3年ほど前からtoC事業に参画しています。
会社の方針としても「toC事業の強化」は長年のテーマであり、会社のなかでも重要なミッションを担っています。
創業時の想いを引き継ぐ化粧品事業
──── では、化粧品ブランド「コモエース」の特徴を教えてください!
舘:「コモエース(comoace)」は、今年で26年目のブランドです。主力商品には、薬用BBクリームのリンクルリペアBB、美容液のPSリキッドやラメラエッセンス、美白エイジングケアのセリサージュ クリスタル シリーズなどがあります。
特徴は、独自成分である「ピュアセリシン™」を使っていることです。セリシンは絹から抽出される天然の保湿成分で、本来は絹を水洗いして光沢を出す「精練作業」で取り除かれてしまうものです。
セーレンでは、精練職人の手が冬でもきれいだったことをヒントに、1889年からセリシンの研究を始めました。セリシンは、人間の肌の成分にきわめて近い組成をしており、肌との相性が良く、理想的な天然保湿成分だといわれています。
通常セリシンの大きさには、天然物ならではのサイズばらつきがあります。セーレンは、セリシンのなかでも効果が高いとされる粒の大きさのみを精製する、世界初の独自製法を用いて「ピュアセリシン™」を開発しました。
この「ピュアセリシン™」は肌に素早く浸透し、肌の保湿やターンオーバーの動きを助けてくれたり、シミの生成を防いでくれたりと、様々な働きをしてくれることがわかっています。
──── 「ピュアセリシン™」という成分が特徴的なんですね。
舘:そうです。一つの成分で多くの機能を持つことは、肌リスクも少なく、化粧品の成分としても強みだと考えています。
私たちセーレンは「ピュアセリシン™」が生み出される「精練業」から創業し、精練業は社名の由来でもあります。また、本社ビルは精練業を象徴する「繭」をイメージしたデザインになっています。
ピュアセリシン™をキー成分とする化粧品事業は、セーレンが祖業として続けてきた事業を請け負っている部署であり、会社としても思い入れが強い領域です。様々ある事業フィールドのなかでも存在感を出していきたいですね。
──── 創業当時の想いを引き継ぐ事業に携わっていることに対しての「誇り」を感じます。
10年以上の取り組みを経て
コールセンター発の化粧品がインターネットで集客できるようになるまで
──── それでは、ソウルドアウトとの取り組みについて伺います。どのようなきっかけで取り組みが始まったのでしょうか?
舘:最初は、ソウルドアウトさんが2012年に福井営業所を立ち上げた頃にお会いしたと記憶しています。
当時の化粧品事業は、楽天市場にはショップがありましたが、自社のECサイトは十分に運用できておらず開店休業状態でした。リスティング広告で指名キーワードのみ、少額からスタートしました。
その次のタイミングとしては、3年前の2021年頃です。化粧品事業拡大を強化するなかで、ECにも注力したいと思い、さらに取り組みを強化していくことになりました。
なのでソウルドアウトさんとは、10年以上お付き合いさせていただいていますね。
──── ありがとうございます!ECには2021年頃から本格的に取り組みはじめたんですね。
舘:そうです。ECサイトのなかでも、アイテムを絞って広告をスタートさせました。
ですが1年ほどはなかなか成果が出ず……。お金をかけて広告を出しても購入してくれる新規のお客さまは思ったように増えませんでした。
それまで私たちはコールセンター中心で事業を伸ばしてきましたし、インターネット上ではリスティング広告しかやったことがありません。商品も、訴求も、同じまま。どうやったら売れるのか正攻法が全く掴めずにいました。
ですが、試行錯誤を重ねているうちにインターネットで購入するお客さまの購買動機や打ち出し方が徐々にわかってきました。思い切って広告で売り出す商品を変えると、だんだんと成果が出るようになっていったんです。
──── これまで売れていた商品と、インターネット上で売れる商品が違っていたということですね。どのような商品に変えたのでしょうか?
舘:BBクリームです。最初は、代表商品である美容液で戦おうとしていました。
ですが、世の中にある数々の美容液と比較したときになかなか商品の良さを伝えられなかったんですよね。訴求が被ってしまい、埋もれてしまって。
広告を出稿して、数ある商品のなかから新規のお客さまに選んでもらうにはどうすればいいのか。インターネットで戦っていくには、視覚的にも良さを伝えられて、訴求がわかりやすい商品にするべきだ。ならば、「しわ改善」「シミ予防」といった武器で戦うことができる医薬部外品にしよう。
そこで、美容液からBBクリームに舵を切りました。
すると、好循環が回るようになってきたんです。広告予算を変えなくても、10倍、15倍の新規のお客さまに購入してもらえるようになりました。
──── インターネットで売るためには、商材の選定が大事だということですね。
舘:まさに、商材選定の重要性を体感しましたね。
売れない時期は、「自分たちのブランドやモノが悪いのだろうか」「このままでいいのだろうか」と考えてしまっていました。疑心暗鬼になっていたんですよね。
ですが「やり方を変えよう」と頭が切り替わった瞬間、新規のお客さまに届けられるようになると、「私たちは間違っていなかった」という安心感につながりました。自分たちに欠けていたのはやり方だったんです。
私たちメーカーの一丁目一番地はものづくりであり、そこは自信をもつべきだと思うことができました。
──── すばらしいです……!
舘:ありがとうございます。
特長があっても、広告で訴求できないようでは売っていくのは難しい。薬機法でも問題がないようにしなければならない。かつ、季節に関わらず訴求できることがあるといい。夏用の訴求、冬用の訴求というように、多面的に様々な切り口でも訴求していきたい。
開発担当者と試行錯誤してできあがったのがBBクリームであり、ECで売るには非常に向いている商品になったと思います。
小宮:BBクリームは、市場的なニーズがあることと、薬機法の範囲内で訴求できる情報が多いこと、この二つを満たしている商品です。
私たちソウルドアウトは、媒体審査に依拠しない独自の審査ポリシー・ガイドラインを遵守した上で広告を出稿しています。
実際にBBクリームは、広告でも幅広い表現での訴求を実施できています。様々な表現を試し、お客さまに受け入れられやすい表現を探ることができました。正直なところ、もっと言いたい製品の特長はあるのですが……。薬機法上言えないこともあるので気をつけています。
「インターネットで売る」ノウハウを活かして、ほかの商品にもチャレンジ
──── それでは現在の成果状況はいかがでしょうか?
舘:現在は、新規のお客さまの数を増やすという点では、かなり良い成果を得られていると思います。
BBクリームは、2022年12月頃から500円のトライアル商品の販売を始めており、非常に好調ですね。トライアル商品が新規のお客さまの入口となっています。
ソウルドアウトさんには、広告のターゲティングなど運用面については一任しています。バナーなど制作物については、私たちが表現したいことをソウルドアウトさんに共有し、広告媒体のトレンドを押さえながらアイディアを出し合い、一緒に制作またはソウルドアウトさんに制作していただいています。それがいい成果につながっているんだと思います。
最近だと、目標KPIの3分の1程度で推移していますね。
小宮:ありがとうございます。商品の特徴と、お客さまが「気になる」「使ってみたい」と思う部分が重なるような表現や訴求を意識していますね。
そこに500円という「ワンコインで試せる」という訴求も相まって、たくさんの方にお試しいただけているのだと思います。
──── 目標の3分の1ですか!かなり良い成果ですね。
舘:最近では、BBクリームで新規のお客さまにアプローチしつつ、ほかのスキンケア商品でもチャレンジしようとしています。
以前の美容液商品のようにうまくいかなかったらどうしよう、という怖い部分もありますが、直近2か月ほどはそれほど悪くない結果で推移できていますね。これまでの経験から得たインターネットで売るノウハウを活かして、今後もさらに良い成果をあげられるようにいろいろな施策を試していきたいです。
ロイヤリティを高めることが課題
──── 新規のお客さまの獲得にはつながっていることが伺えました。では、課題に感じていることはありますか?
舘:トライアル商品の購入から本品の購入や、ほかの商品の購入へとつなげていくことに苦戦しています。
BBクリーム本品の購入に結びついても、持ちがいいので、次回の購入まで4か月ほど空いてしまうんです。商品がすばらしいということなのですが、LTVは伸び悩んでいます。
トライアル商品は売れた瞬間は赤字。商品自体のコストはもちろんですが、広告や配送のコストなどもかかっているので。リピートしてもらってはじめてLTVが伸び、売上増加につながります。まだまだこれからですね……。
小宮:2回目、3回目と定着するためには、ブランドをきちんと知ってもらうことが重要だと考えています。初めて購入した段階でお伝えするのか、また次のタイミングでお伝えするのか、様々な方法があると思うので、一緒にいろいろと試してみています。
舘:新規のお客さまにアプローチする方法はだんだんと掴めてきました。これからはどうやってファンになってもらうか、ロイヤリティを高めていくか、という領域ですね。
ソウルドアウトさんと目指す最終的なゴールは、広告成果の最大化ではなく、コモエースの売上最大化です。お互いに目線を合わせたうえで、日々試行錯誤を重ねています。
──── ロイヤリティを高めることでLTVを伸ばし、売上につなげていくということですね。
舘:直近では、トライアル商品ではなく、本品の広告配信にシフトしつつあります。
500円のトライアル商品に比べると、LTVは当然高まります。トライアル商品であれば、購入時に生じた赤字幅を取り戻すために時間がかかっていましたが、その速度も速い。そして何より、500円でお試し商品を購入するよりも、3,000円以上の金額を払うことで、お客さま自身の商品に対するロイヤリティも高くなるんです。
成果はまずまずで、トライアル商品の広告配信で設定していた目標KPIと変わらない成果を得られています。
トライアル商品から本品の購入へと引き上げていく、という施策に長い間取り組んできましたが、別の手法をやってみても案外とうまくいきましたね。
今後も、過去の成功事例にとらわれずに、柔軟な頭をもって新しいやり方に挑戦していきたいです。
小宮:広告運用で設計している配信方法やターゲティングといったテクニック的な部分と、コモエースご担当者が制作するクリエイティブの相乗効果で成果が出ているのだと思います。
また、クリエイティブという点では、コモエースのInstagramアカウントで発信しているコンテンツもすごく良いんです。とても見やすくてわかりやすく、「優しさ」を感じます。
ともに歩んできた「コモエース」と「ソウルドアウト福井営業所」
──── では、10年以上のお付き合いとなるソウルドアウトには、どのような印象をおもちでしょうか?
舘:ソウルドアウトさんは、私たちコモエースに対する理解度が深いと感じています。
3年前の2021年、実は数社の代理店さんの提案を受けたうえで、ソウルドアウトさんにお願いすることにしたんです。ソウルドアウトさんは、私たちの規模感にあっている提案をしてくれました。
私たちコモエースの母体は「セーレン」という大きな会社なので、大きい金額でのお話をいただいたり、ほかの大企業さんでも言えるようなお話をいただいたりしていたんです。これはすごく当然のことでもあると思うのですが……。
そんななか、ソウルドアウトさんは「コモエース」として見てくれました。会社のなかでどのような立ち位置なのか、どのようなメンバーで構成されているのか、といったことまで理解したうえでお話していただけました。本当に「伴走」という言葉がぴったりだと思います。
あとは、小宮さんが福井にいらっしゃることもかなり大きいですね。「地域密着」といいますか。オフラインで顔を突き合わせて話し合いができることに感謝しています。
小宮:ありがとうございます!
商品知識に関しては、舘さんをはじめとするコモエースの皆さんの足元にも及びません……。なので、いつも皆さんから学ばせていただいています。
私の役割としては、デジタル広告の業界の動きや最新情報をお伝えすることや、お客さまの目線に立って「もっとこうしたほうがいいのではないか」というご提案をさせていただくことだと思っています。
コモエースの魅力を、お客さまのニーズに合う形でもっと多くの方に広げていきたいですね。
「コモエース」を全国区のブランドへ
デジタルでのコミュニケーションを強化し、ブランド力をつける
──── 最後に、これから目指していきたい姿を教えてください!
舘:「コモエース」を全国区のブランドにしていきたいです。福井県内だと、ブランドの知名度はもちろん、セーレンが化粧品事業に取り組んでいることもある程度知られているのですが、全国でみるとまだまだこれからです。
私たちはメーカーとして、ものづくりには非常にこだわりをもっています。一人でも多くの方へ、こだわりのコモエースを届けていきたいです。
──── 全国区のブランドにするためには、先ほどおっしゃっていたロイヤリティを高めるという課題に今後取り組んでいかれるということでしょうか?
舘:そうですね。ロイヤリティを高めるために、お客さまとのコミュニケーションを強化していきたいです。
以前コールセンターでお客さまの対応をしていたときには、「寄り添ってくれる」「丁寧だ」という声をいただいていました。お客さまと直接お話ができると、ファンになってくれる方も多かったように思います。
ですが、ECだとそう簡単にはいきません。メールや同梱物を通じたコミュニケーションしかできず、お客さまとの関係が希薄化してしまっているように感じています。
デジタルで、どのようにコミュニケーションを強めていくか。お客さまに選んでもらえるようなコミュニケーションをどうやって実行するか。ソウルドアウトさんと模索中です。
小宮:売上最大化はもちろんですが、そのためにはまずファンになってもらうことが大切です。広告だけでは難しいと思うので、ほかの手段も使いながら良い方法を見つけていきたいですね。
舘:デジタルのいいところは、テストから始められるところだと思っています。まずは小さく、挑戦していきたいです。
新しいことへのチャレンジに前向きな会社
──── 化粧品事業は会社としても注力領域だというお話が冒頭にあったのですが、これからも方針は変わらないのでしょうか?
舘:そうですね。「toC強化」という方針は変わらないと思います。
上司も非常に柔軟な方で、とにかく新しいことにチャレンジしなさい、従来の延長戦ではなく、視点を変えて新しい施策を取り入れなさい、というスタンスです。
セーレンには、高性能消臭インナーを展開する「デオエスト」というブランドがあります。ECでの成果が右肩上がりで、今年一年に勝負をかけて「チャレンジ元年」だと定め、様々な施策にチャレンジしています。
私たちコモエースも、チャレンジ元年だと捉えたいと思っています。BBクリームで培ったノウハウを活かして、ほかのスキンケア商品に挑戦していますし、新商品が出るタイミングなどで、もう一度アクセルを踏みたいと考えています。
小宮:足元をしっかり固めて、果敢にチャレンジしていきたいですね!コモエースは、新規のお客さまにアプローチしていく段階から、一つ上の階段をのぼって、ロイヤリティを高めていく段階にあります。
これからもどんどん上にのぼっていけるように、コモエースチーム一丸となってがんばりましょう!
舘:事業を拡大し、より多くの人にピュアセリシンの良さ、コモエースの良さを伝えていくことが、私たちの使命だと考えています。
新しいことにどんどんチャレンジして売上につなげていきたい。ソウルドアウトさんとも、関係を深めていきたいですし、もっと大きい規模感の取り組みができるようになっていきたいですね。チームのメンバーも増えるといいな、と考えています。
これからもよろしくお願いします!
編集後記
舘さんから感じた「誇り」に感動しました。創業135年のセーレンの祖業といえる化粧品事業を拡大するという使命感。ソウルドアウトチームとしてもそこに伴走しつづけたいと感じています。
【インタビュー・執筆・編集:みやたけ(@udon_miyatake)】
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