ソウルドアウトとロカリオがともに描く地方デジタルマーケティングの未来図 - トップインタビュー -
2023年4月から業務提携を開始した博報堂DYグループのソウルドアウトとロカリオ。
国内最大級の地方を含む中堅・中小企業市場のデジタルマーケティング支援組織として、さらなる躍進を目指しています。
ロカリオは、「地方を元気に、デジタルマーケティングの力で」をスローガンに、統合デジタルマーケティングエージェンシーの株式会社アイレップから生まれたデジタルマーケティング支援企業です。
株式会社ロカリオの代表取締役社長である辻 純也さんと、業務提携のプロジェクトを推進してきたソウルドアウト株式会社の執行役員である葛谷 篤志さんに、本提携で生み出されるシナジーや、今後の展望を伺いました!
日本全国のデジタル化を加速
─── まず、自己紹介をお願いします!SMB領域のデジタルマーケティング支援で取り組んできたことを中心に教えてください。
辻:2006年7月に博報堂DYグループのアイレップに入社し、大阪営業所の立ち上げに携わりました。その後、福岡営業所や名古屋営業所の立ち上げにも携わり、西日本エリアでSMB(中堅・中小企業)領域の企業をご支援してきました。
当時の西日本エリアでは、デジタルマーケティングはほとんど浸透しておらず、アイレップの名前もあまり知られていませんでしたね。
2012年、中堅・中小企業向けに特化したデジタルマーケティングサービスを提供する子会社としてロカリオが設立され、私は2022年に代表に就任しました。
葛谷:私はオプトへ新卒入社した後、ソウルドアウトの立ち上げに参画し、創業期から地方営業所の立ち上げを担ってきました。2011年に、埼玉、横浜、新潟、静岡の4拠点の営業所を設立しました。
その後、新規営業組織の部門長や、Webメディア「LISKUL」の運営を含めたマーケティング責任者を経て、SMB領域の事業責任者などを務めてきました。
現在は執行役員として、地方の市場に向き合うエリアビジネス本部と、マーケティング予算が潤沢にはないような企業と向き合うグロースデザイン本部を管掌しています。
─── では、現在取り組まれていることと、そのミッションを教えてください。
葛谷:私のミッションは、日本全体のデジタル化を加速させることです。
大阪や名古屋、福岡のような商圏でのデジタルの利活用は、既に進んできていると思います。しかし、日本の国力を上げるためには、仕事が減って過疎化していく地域で、デジタルの利活用を推進し、新たなマーケットを開発していく必要があるのです。
その実現のため、ソウルドアウトには、全国20拠点(*2023年9月時点)にデジタル人材を配置し、地域に密着して市場に向き合っていますが、東名阪福以外の地域11拠点を担当するエリアビジネス本部と、ローカルtoローカルのビジネスを展開し、マーケティングの予算として潤沢な資金をおもちではない企業を支援するグロースデザイン本部があります。私はこの二つの部門の管掌をしています。
そして4月からは、辻さんとともにロカリオの取締役を務めており、大きく3つの事業の責任者を務めています。
辻:私も葛谷さんと同じミッションに向き合っています。
デジタル化を加速させるために、まずは地方におけるデジタル広告のシェアを引き上げていくこと。首都圏に比べ地方のデジタル化はまだまだ後れを取っているのが現状です。
そして、シェアを拡大しながら収益化していくこと。基本的にデジタル広告はマージン(手数料)で収益を得るビジネスであり、予算が大きくない企業の支援では、人件費を考えると投下できるコストが限定されてしまいがち。ビジネスとして成立させることが難しいんですよね。
また、ロカリオの代表としては、会社全体の成長速度を加速させていくことです。これから先、5年かけて実現しようとしていたことを、この協業によって3年に短縮する。建前だけの協業には絶対にできません。私もソウルドアウトの執行役員としてジョインしたので、お互いに経営に入り込んでいきながら、ミッション実現のためにコミットしていきます。
“必然だった”業務提携の背景
地方のデジタル人材を増やし、デジタル化をさらに加速
─── 業務提携の背景やきっかけになった出来事を教えてください。
辻:前提として、ロカリオとソウルドアウトの業務提携は、必然だったと思っています。
私たちはこれまで、同じ想いをもって、地方やSMB領域の支援をそれぞれやってきました。それが今回、ソウルドアウトが博報堂DYグループにジョインし、二社が同じグループとなったことがきっかけで、業務提携の話がもちあがりました。
葛谷:二社がパートナーとなって強固な連携を取ることで、地方のデジタル化をダイナミックに加速させていくことができます。
─── 大きな影響を与えられるようになる、ということですね。
葛谷:そうです。各地域の営業所に配置できるデジタル人材が増える、ということもその一つです。
先ほど辻さんがおっしゃっていたように、デジタル広告はマージン(手数料)で収益を得ます。薄利多売のビジネスであり、まだデジタル広告が主流でない地域では、営業拠点に配置できる人材に限りがある。私たちソウルドアウトも、2011年から営業所を出店し続けてきたものの、一部の営業所に関しては、縮小していかざるを得ないところもありました。
また、デジタルエージェンシーあるあるで、人材の離職や退職のサイクルが速い。出店して人を配置しても、人が抜けてしまうと補充しなければならず、それがリスクにもなり得る。
ソウルドアウトとロカリオがタッグを組むことで、そのリスクを緩和できるようになりますし、中堅規模のデジタルエージェンシーと遜色ないサイズの営業所をもてるようになります。
辻:人が抜けてしまうと、支援していた企業が離れていってしまったり、新しい企業を支援したいけれど収益性の観点で難しかったり、といった問題があったんです。
各エリアでお互いに力を合わせ、壁を乗り越えたい。経営としては、問題を解決して、次のチャレンジ、投資をしたいです。まずは足場を固めて、全国の拠点が絶対的に、安定的に継続していけるようにしたいと考えています。
─── まずはデジタル人材の人手不足の解消。人材が増えれば、できることも増えていくのではないでしょうか。
葛谷:おっしゃる通りです。
デジタルのソリューションは、全国どこにいても使うことができますし、恩恵を受けることができます。エリアの垣根はなく、地方の企業なのか、東京の企業なのかは関係ありません。
そういったときに、地方にいるデジタル人材に何が求められているのかというと、クオリティをいかに上げていくのか、いかにスピーディーに実行していくのか、ということです。
拠点に一人、二人しかいなければ、できることは限られます。ですがもし10人いれば、一つの拠点において提供できるサービスは10倍になり、スピードも品質も向上する。人材を配置できるということは、それだけ大きな価値があるんです。
コロナ禍で、ローカル・SMBに注目が集まる
─── 地方では手薄になりがちな支援を強固にしていきたいという思いがあるんですね。では、昨今のデジタルマーケティング業界におけるSMB領域への注目度の高まりも、業務提携の背景にあるのでしょうか?
辻:そうですね。
コロナ禍で、日本経済は激しく落ち込み、デジタルマーケティング業界にも大きなインパクトを及ぼしました。デジタルメディアへの広告出稿量は、ほとんどの企業で前年比100%を切っていた一方、SMB領域に関しては伸長していたんです。SMBにはポテンシャルがあり、強化していくべきだと、博報堂DYグループの中で話がされていましたし、ロカリオへの期待値もかなり高まっていましたね。
しかし、グループ全体でもデジタル人材が足りない状況で、人材を確保したい、増やしたいという思いがずっとありました。そんなときに様々なご縁があり、ソウルドアウトがグループにジョインしてくれたことは、非常に大きな変化であり、期待も大きいです。
葛谷:コロナ禍以降、博報堂DYグループを含めて大手のデジタルエージェンシーは、AIなどの新しいテクノロジーはもちろんのこと、「グローバル」または「ローカル」のマーケットに注目していました。
「ローカル」において、先行して営業所を出店してきたソウルドアウトとロカリオが連携することで、国内でかなり稀有な存在になれると考えています。
お互いの得意領域を掛け合わせ、提供できる価値の幅が広がる
─── それでは、二社が業務提携することによるシナジーを教えてください。
葛谷:業務提携によって、二社がもつ強みを掛け合わせた支援が可能になります。
ソウルドアウトは、オプト(現 株式会社デジタルホールディングス)の社内ベンチャーとして生まれた会社。ロカリオは、アイレップ発の会社であり、ともに業界最高水準の運用力やクリエイティブ供給力を有しています。一方で、領域によっては強みと弱みがあります。
今回の業務提携によって、二社の得意領域を掛け合わせて支援できるようになりました。双方で補完、研磨し合うことでお取引先に提供できるサービスのクオリティが上がり、寄り添うことのできる面や幅が広くなったと思います。
辻:地方やSMBの企業の場合、広告代理店として支援を始めてしまうと、あまり受け入れてもらえない気がしています。デジタルに投資できる予算がまだまだ潤沢にはないことを踏まえると、広告代理店の枠に収まっていては、重要視されずに終わってしまうでしょう。
事業を成長させるためには、広告代理店としてではなく、パートナーとして深く事業に入り込んでいく。そのためには、営業力だけでも、運用技術だけでも足りません。この業務提携によって、企業に寄り添い、必要とされる会社になっていくことができると思います。
─── 業務提携後、具体的な取り組みは始まっていますか?
葛谷:まずは、各拠点で同じ地域に所属しているメンバー同士の交流や情報交換を通して、メンバーの心のゆとりを広くしていくことにチャレンジしています。
ある意味ライバルだったソウルドアウトとロカリオですが、今は協力体制を築いて作戦会議を行なったり、地方拠点の博報堂の方々に対して、デジタルマーケティングの勉強会を開催したりしています。
─── 業務提携前は、同じ地域に向き合っているメンバー同士でぶつかることはあったのでしょうか?
辻:ほぼなかったですよ(笑)。もちろん競合という位置付けではありましたが、敵視することはなかったです。
拠点によっては、仲良く交流していたところもあります。お互いにリスペクトの気持ちを持っていました。メンバー自身、ぶつかるのは意味のないことだ、という共通認識があったんだと思います。協力してデジタル化を推進していこう、自分たちのいる地域を盛り上げよう、という想いをもっていたと思います。
業務提携が始まってからは、変な遠慮のようなものがなくなり、お互いに腹を割って話せるようになったと思います。
ソウルドアウトとロカリオが描く未来図
“この地域ならソウルドアウト・ロカリオだ”という第一想起を
─── 今後、目指す姿を教えてください!
葛谷:その地域におけるデジタルエージェンシーといえばソウルドアウト・ロカリオだ、という認知が市場に定着している状態をつくりたいです。
辻:デジタル広告を始めてみようとか、今取り組んでいることに課題を感じているとか、そういったときにソウルドアウトとロカリオが第一想起に入るといいですね。そのためにも、地方のデジタル広告市場におけるシェアを広げていきます。
葛谷:各都道府県のデジタル広告の流通額ランキングでまずは3位以内を目指したいです!
あとは、各拠点で対外的な発信をもっと増やして、私たちの認知を広げていきたい。デジタルの情報流通を加速することで、デジタルでできることの選択肢や可能性を知ってもらいたいです。
採用領域でも地域に貢献し、還元していく
─── ソウルドアウトとロカリオが第一想起に入るために、市場シェアの拡大、デジタルの啓蒙をしていくということですね。ほかにも考えていることはありますか?
葛谷:もう一つは採用領域ですね。
おかげさまで、二社とも、10年以上地方に出店し続けており、デジタルエージェンシーとしては珍しいポジショニングとなっています。地方大学などにもパイプラインがあるので、雇用を生み出せるようになりたいです。その地域における学生さんを採用し、育成する。地域へ貢献し、還元することができればと考えています。
辻:地方においての教育や採用は、私たちが取り組まなければならない領域であり、未来のデジタル人材の創出はとても重要です。地方ではまだまだ、デジタルの企業やデジタル領域の仕事は多くありません。そこに私たちが何か仕掛けていきたい。
就職の際、もしもご縁があってロカリオやソウルドアウトに行きたいと思ってくれればもちろん嬉しいですが、支援企業側に就職することになっても、とても嬉しいです。それは地域への還元に繋がると思います。
地域のデジタルの支援だけではなく、地域に根差し、経済を盛り上げていくために何ができるのか。そういったことを考え、実現できると、メンバー自身も仕事に対する誇りがより一層大きくなると思うんですよね。
覚悟をもって成長を志す
─── 地方やSMBへの期待について教えてください!
辻:地方やSMB市場は、まだまだ成長できるポテンシャルがあります。企業の数や底力をみても、可能性は無限大です。地方発全国、地方発世界も実現できます。それを志していくとき、私たちが力になれるよう、技術を磨いていきます。
葛谷:デジタルは、手法でしかありません。デジタルを使うかどうかに関わらず、グローバルを志す企業が一社でも増えていくことが、日本の成長につながるでしょう。
私たちの使命は、シンプルに、チャレンジャーを一人でも、一社でも多く創出することだと思っています。
─── 地方のチャレンジャーを増やしていく。これからがとても楽しみです!では、これからのSMBのデジタルマーケティングで必要とされることは何だと思いますか?
葛谷:知識やリテラシーを身につけ、自己判断力をもつことだと思っています。
例えば、デジタル広告一つとっても、どのメディアに出稿するのか?いつ出稿するのか?どのようなメッセージを出すのか?などの判断を代理店に任せてしまうのでは、力はつきませんし、弱くなってしまうでしょう。コロナ禍では、そういったことが一因で、助成金で騙されてしまったというニュースが飛び交っていました。
マーケティングは、会社の売上を上げていく根幹にあるものです。その根幹を誰かに任せっきりになるのではなく、自分たちで考え、覚悟をもって成長を志していかなければ、本質的な変化は生まれません。
─── なるほど。考え方を変えるのはなかなか難しいのでは、と感じました。
葛谷:そうですね。日本で古くから根付いている、卸の文化からくる考え方だと思います。ほかの人からおすすめされるものの中でしか、最適なものを選べなくなってしまっているんですよね。
ですが、考え方を変えなければ、成長できる企業とできない企業とで二極化してしまうでしょう。いくらデジタル技術が発達して、私たちが啓蒙活動を行なったとしても、そこが育っていかなければ、企業は成長できません。
メンバーの熱い想いを実現する
─── では最後に、改めての決意を教えてください!
辻:業務提携の最大のシナジーは、ロカリオとソウルドアウトには地方、SMBに対して熱い想いをもっているメンバーがたくさんいて、一緒に仕事をするようになって、大きな力を発揮できるようになることです。
これまで、葛谷さんと二人で全国の拠点を回りました。メンバーの熱い想いに触れて感動したんです。同じ思いや夢をもった仲間が増えるということは、こんなにも大きく、強い力になるんだと実感しています。
私自身も、葛谷さんとの出会いは非常に大きな出来事でした。これまで同じ業界で同じような想いで仕事をしてきたのに、ほとんど接点がなかったんですよね。それが本格的に一緒に仕事をするようになりました。まだ半年ほどですが、こんなに話がわかり合える人がいるんだ、と刺激になっています。
メンバーだけに任せるつもりはありません。私たち自身がまずはシナジーを生み出していきたいです。
葛谷:辻さんがおっしゃったように、同じ志をもつ仲間が一緒になり、大きな力となって挑んでいけることは非常に大きなシナジーだと思います。
この業務提携が進んだ背景も、ソウルドアウトとロカリオがともにミッション経営であることが大きいですね。「誰かのために」という意識が強いんです。今日のインタビューの中でも、お客さまのためとか、場合によっては市場のため、マーケットのため、という共通言語で話せていることが、業務提携に至った最も大きな理由なのではないでしょうか。
─── ソウルドアウトもロカリオも、目指す方向が一緒。ともに歩んでいくことになり、これから大きく前進していけそうな予感がします。葛谷さんは、今後取り組んでいきたいことはありますか?
葛谷:ソウルドアウトとロカリオのメンバー皆に、私たちの経験をつないでいきたいです。
ソウルドアウトもロカリオも、地方のお客さまは、何年もお取引させていただいている企業が多く、5年、10年の取引は当たり前です。これは地方ならではであり、お客さまに長く愛されてきたことを感じています。
地方のお客さまから学ばせていただくことはとても多いですし、地方に貢献できている実感をもって働くことができます。地方に出店している私たちだからこそ得られる経験です。
この経験をより多くの社員にしてほしいですし、自身のキャリアの血肉になっていくと思います。そうすれば、胸を張っていろいろなキャリアをも描いていけるでしょう。私は、そのバトンを社員に渡していくことが目標です。
─── 最後に、私たちメンバーへのメッセージも伺うことができ、嬉しいです。インタビュー、ありがとうございました!
【インタビュー・執筆:みやたけ(@udon_miyatake)】
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