タルトタタンの夢
夢はきっと妄想
月がきれいに頭上で輝いている間に
わたしが勝手にいろんな世界をかけめぐって
はちゃめちゃに好きなことをやってしまうんだ
そんなときわたしは本当にわたしで
他の要素や物質なんて何ひとつも持ち合わせていない
あのカフェは
モンマントルの坂を上がってそして下って
ちょっと西の方角の道を歩いていった角に建つ
朝は、濃いエスプレッソ
夜はきっと特別においしいワインとあたたかい煮込み料理
日曜日には恋人たちのために特別なブランチを用意しているような
そんなふつうのカフェ
お店のインテリアは小洒落ていて
床は白くて所々にダイヤの形をした赤と黒のタイルがはめ込まれている
天井は洋館らしく高くて
チープだけどちゃんと金属で作られたシャンデリアだってかかりそうだ
高く開けれられた窓の外は静かな道
たまに石畳を音を鳴らしながら歩く細身の男の子がちらっとこちらをむいたりする
そんな時、
きっとわたしのテーブルの左角には
白いお皿に乗せられたタルトタタンがある
かわいい響きをもつあのお菓子
その日の朝にもぎ 取られたりんごは
まだ夜の香を含んだまま
オーブンの中で真っ黒になって色を変えてケーキの形になる
りんごはすこし酸っぱくて
その横に添えられたバニラビーンズがたっぷり練り込まれた
アイスクリームはきっとこのためにあって
もしそこに 真っ赤なラズベリーが乗っていれば
白昼の夢がみられるにちがいない
〈 today’s art 〉
Title : Red and white thread on the Japanese paper
/ textile art
/ Japanese paper / sumi / thread
/ Yuko