Solas
旅のエッセイ
霧のナカを走るようにうまれてくるモノ イメージの果てにあるモノにアクセスしてみる ぼやけた視界から見えてくるモノに それは結晶のようなモノ ”霧の中を走る”という言葉がよぎる “霧” 1メートル先も見えないほどの感覚さえ鈍るような深い霧 昔、インドを旅した時に早朝の霧の中を次の目的地までバスで飛ばしていた。確か、ラージギルのあたりだったと思う。 バスは割と早い速度で、薄まった朝の道を進んでいく。 ドライバーが、私の知らない言葉で何か喋っていたけれども、きっとたいした意味
朝、 早く起きれなかっとしても ゴミ出しにちょっと間に合わなかったとしても さっきまですぐそこにあっただろう朝の気配 それを追いかけるように 濃いめのコーヒーを淹れて ギーをのせたトーストを焼く モカの甘い香りと ギーの甘いとろみ 部屋に流れる小さな音は 沈黙のひかりの中で ポーンという音を奏でて ここの日常と交差する それだけで幸せな時間で この星は美しいと思う 〈 today’s art 〉 Title : in the church / photograph
絶望の淵から 白いひかりがみえる 小さな白のひかり その白は銀のようにも見える ずっと見ていると それは白でも銀でもなくて 水のひかりだと気づく 水を含んだ布がひかりと輝いている この世界でががやくものは水 何かかたちのないものを映し わたしたちに届ける 水のひかり 〈 today’s art 〉 Title : coast / photograph / Place : Ireland / Yuko
京都の街とパリの街 それがかさなる 御池通の並木道を夜遅く歩く オレンジ色がかった電灯とその間を潜り抜ける秋の葉が あの頃のパリの香りを彷彿とさせたのだろう ここはパリの街よりもいろいろなものが爽やかに映るけれど あのパリのスモークがかった空気、その背後にある街の色彩が懐かしい 凛とした秋の空気が流れこむカフェのテラス席で 友人とディナーを共にした後 混雑したバスに乗り込んでひとり家へと帰る 夜遅いのにもかかわらず、バスの中は混みあっていて 数人の談笑が歪みながら響く
鳥の声が微かに耳の裏に伝わって ゆっくりと目を覚ます そのまま鳥の音色に耳だけをしんとすませながら朝の透明な沈黙にひたる 頬を触るとひんやりとした青さが指に伝わる そこだけが空気の冷たさを含みさらに冷たく湿る 頬に夢の余韻を残し 無意識下で眠っていた私がそこにいる 空気を少しだけ吸う、吐く、 深く、吸う、吐く いつぶりだろうか、こんなにも自分の内側を感じたのは 鳥の声はすりガラスの外から静かに美しく入ってきて まるでこの場所で起きているかのように、この高い天井を舞って響
雨が降っている その降り落ちる音がピシャピシャと家の外から聞こえる この雨は、昨日そして夜の間に降り続けた雨 私と一緒に眠り続けた雨 私はキッチンの赤いテーブルの前に座って ただその音を聞いている いま自分は内側にいるのだと強く思う 何かの内側に この雨音がその感覚を明瞭なものとして そして同時にここは守られた空間なのだと気づく ようやく明るくなってゆく空の色が キッチンのすりガラスから仄かに見えてきて 雨の青と混じった朝の白い青は、美しいだろうと想像した 昔住んでい
こんな私でもたまにはお菓子というものを作りたくなる 何故だかはわからない いつもバスで通る交差点を少しだけ西へと入ったところにある 赤い構えの小さなフランスの料理屋さん お店のショーケースに並べられた小さな料理たち 夏野菜のクスクス、冷たいビシソワーズ、紅茶のブリュレ、タコとアンチョビのサラダ 右端にある白いお菓子に目に止まった 白いフロマージュ 「紅茶や珈琲、又は赤ワインと共に・・・」と書いてある 丁寧な夕食の後、グラスに半分だけ残ったボルドーに染まったワ
街は美しい ヨーロッパの街の中心には、いつだって川がある パリだって、ダブリンだって、ベネチアだって、アムステルダムだって、 その形は少し違うにしても、そこにはちゃんとその街の川が存在している 川というと、何か澄み切っていて、その色が規則的に動いていくような そんな水の流れを連想してしまうけれど 時としてそれは 薄い氷のように微かな水面であったり、土埃に紛れて濁っていたり、 メローな音楽のようにゆっくりとした流れであったりする その町を象徴しているかのように 地下の底から
ふとんの中で、窓の外で鳴っている雨粒の音を 寝ぼけた耳でずっと聴いていたのだろう ちゃんと目を覚ました頃には 私はすでに今日は一日中雨が降り続けることを知っていた バスタブにお湯を溜め、目を覚ます 広い浴室は、いちいち音が反射する この何でもない音がなぜこんなにも悲しく聞こえるのかは疑問だった バスルームのすぐ横の部屋では さっきまで流していたショパンのピアノの旋律が鳴り続けている 静かな空間 哀愁の滴 私は一人 そう、 そうなりたかったのだ 街へでる 日曜日の雨 街
あの悲しい街を歩いていたら あの赤い自転車だって 道端にほかられた持ち主がいないかわいそうな犬のようにみえる たとえそれが本当は大切にされていて 明日の夕方になったら、持ち主が何事もなかったかのように取りに来る品であったとしても そんな風に この街には風はなく そのかわりにただの空気が流れる それは、この場所を微かに満たす湿度で湿っていて それでいて土埃が舞っているような そんな街 〈 today’s art 〉 Title : no name / photograph
最近、なぜか朝はやく目が覚める ペールブルーのカーテンの隙間から、朝がくる前の深くて青い光が差して それが部屋の壁を染めてゆくのをぼーっと見ている ベットフレームの影が壁に線状に映り、それがやけにリアルだった 時は5時くらいだろうか もう少しだけ青が白くなったら街が明るくなる そしたらパリの街はいつものように、あの色でみんなを包むのだろう あのブルーがかったパステルカラーでいっぱいにするんだろう その頃には きっとあのブーランジェリーのクロワッサンも焼けていて それは
宙に舞ううわさ話は何の役にもたたない そしてもっと頼りにならないものは、自分が作り上げた概念や決まりごとだ “ 何故イタリアにまで来てベネチアに行かないの? “ その言葉が私にまとわりつき そしてそれはいつしか渦になり 最終的に、とりあえずベネチアへ行って見るという行動に変わる サンタマリアノッベラ駅に着き 幕が上がるようにそこから一気に水の都へと繰り出す 目の前の水面に浮かぶ礼拝堂、それを取り巻く風景は 紛れもなくここがベネチアという水の都であるということを教えてくれ
“Caffe Espresso” “キャッフェ エスプレッソ” この国でCaffeというとそれはEspressoという濃い液体のことになる そしてこの民族は本当によくこの液体を飲む 朝の目覚め、10時の休憩、豪勢なランチの後、仕事にも飽きてきた夕方、 夜はわからないけれども、、、 この薄いキャメルの色に霞めらた街を歩いていると BARと太い文字で描かれたお店をいくつも目にする ここのBARは、お酒を飲むところではなくカフェのことだ 亭主は、朝の早い時間からお店を開け
もしこの世界が本当に素晴らしいもので 誰もが平等な世界なのだとしたらどんな未来を描くのだろう 毎日の朝、鳥と共に目を覚ましてストレッチをする 自分の体の感覚を確かめるように背を伸ばす 川のセセラギが瀬を伸ばすように 私は、インスピレーションをもらえるような そんな魂に近いところで生きていて それはとても大きな自然の中 ひっそりと佇む そこから生まれる物語、音楽、芸術は、澄んだ黄金の色 そして夜には銀の色になる 私のパートナーは しろとくろの小柄なコリー 名前は ” u
夢はきっと妄想 月がきれいに頭上で輝いている間に わたしが勝手にいろんな世界をかけめぐって はちゃめちゃに好きなことをやってしまうんだ そんなときわたしは本当にわたしで 他の要素や物質なんて何ひとつも持ち合わせていない あのカフェは モンマントルの坂を上がってそして下って ちょっと西の方角の道を歩いていった角に建つ 朝は、濃いエスプレッソ 夜はきっと特別においしいワインとあたたかい煮込み料理 日曜日には恋人たちのために特別なブランチを用意しているような そんなふつうの