【エッセイ】和菓子
私は和菓子がちょっと嫌いです。特にあんこは美味しいと思ったことは、あまりありません。
だから自分から買うことはほとんどありません。買うとすれば、和菓子が好きな人のお土産を選ぶときぐらいです。でも何を選べばいいのか分からないので、最近はお煎餅にしてます。お煎餅なら大丈夫なので。
私の父はあんこや羊羹など甘い和菓子が大好きで、たくさん食べていました。子どもの頃は家が貧しく食べ物に苦労し、特にお菓子は夢のまた夢だったようです。
「贅沢だなあ」
小学生だった私や兄がお菓子を食べていると、よくそう言っていました。父の喜ぶ顔が見たくて、父の日に羊羹をあげた記憶もあります。
ところが父が健康診断か何かで、肥満だと言われてから、母の<和菓子制限>が始まりました。羊羹を切るときも1人分はダメで、必ず半分。
「もう少し、大きく切ってくれよ」
「ダメよ。そんなこと言ったらもっと小さくするわよ」
<男子厨房に入るべからず>の信念があったのか、父には自分で羊羹を切って食べる発想はなかったようです。
父の肥満は止まりませんでした。羊羹はだんだん薄くなり、とうとう皿の上に薄く乗せられるようになった頃、父に糖尿病の診断が下りました。
今考えると、和菓子は低カロリーだそうなので、肥満の原因は他にあったのかもしれません。でも、とにかく<和菓子=体に悪い>としっかりと刷り込まれたようで、気がついたら嫌いになっていました。
5月の端午の節句には柏餅が売られます。柏餅だけは縁起の良い象徴らしいので、たまに買って食べます。この中のあんこだけはちょっと美味しい気がするのです。
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