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ダイズはなぜとれないのか

前回、稲の優秀さについて語りました。

稲は極めて優秀な作物であり、それを用いた水田作というのは世界に誇る日本を代表する農業技術です。

さて、日本人の生活にはもう一つ欠かせない穀物が『ダイズ』です
しかし、ダイズは収量が低迷しています

実際のデータをみながら確認しましょう

ダイズ収量の比較:日本と世界

上記は日本全体のダイズ収量をまとめたものです。
みていただくとわかりますが、ダイズの収量は昭和ごろまでは右肩上がり
しかし、平成に入ってからは横ばいを続け平成12年の192 kg/10a以降は低迷を続け、平成30年の反収は144 kgです。

世界のダイズ収量についても農水省のHPに記載があります

2018年における世界の10a当たり収量の平均は288kgであり、日本の平均単収(167kg:2018年)に比べ7割ほど高くなっています。
主産国の単収は、アメリカ:347kg/10a、ブラジル:324kg/10a、アルゼンチン:328kg/10a、中国:189kg/10a となっています。(資料:USDA「PS&D」)

日本が如何にとれない国かわかりますでしょうか。
アメリカ等は油、日本は食用と生産目的が異なるというのはあります。
それにしてもとれない!!

そこに対して、ただ愚痴りたいだけなのです。
お時間あればお付き合いください。

なぜ根粒菌との共生をはじめてしまったのか

ダイズには『根粒菌』という物が根についております。
どこかで習ったと思いますが、窒素固定を行う微生物です。
教科書では、ダイズは空気中の窒素から栄養を取り込むことができると書いてあります。

しかし、この根粒菌というのが極めて厄介です。
一般的にダイズの全窒素吸収量の半分が根粒菌由来と言われています。
そのため、根粒菌を活発にするというのは正しいアプローチのはずなのです
しかし

基本的にどれもうまくいっていない

それが現状です。そもそもうまくいってたら、とっくに収量伸びてます
また窒素肥料をダイズにあげると、逆に根粒菌はつかなくなる。
また根粒菌をたくさんつけるというアプローチもうまく行かない。
何様なのだお前は。

土壌化学的アプローチは基本どれもうまくいっていない

ダイズといえば、窒素pHと言われます。しかし、私の見解は

どちらも明確な効果がみられない(少なくとも日本においては)

ダイズで窒素肥料をあげる理由は、ダイズのためではなく、現状は土のためです。
一般的にダイズは地力を下げる作物と言われ、水田から畑へ転換する割合が増えると地力窒素が下がる現象が認められています。

またpHは根粒菌のためだと言われています
『それならもう少しがんばれよ』と思うのは僕だけではないと思います。
pHと収量に関して、明確な関係を示した報告は実は少ないです。

その他の栄養元素は、基本的に軒並み失敗しています。
そもそも成功してたら、散布しろっていいますわな

一部、効いてるかも?という元素は、現状ではホウ素(B)です。
こちらはブラジルでは増収効果報告が散見されます。
しかし、有効域が狭い元素なので、要検証です。

唯一うまくいっているのは、土壌物理的アプローチ

これは日本特有の問題ではありますが、日本のダイズは水田を畑にした『水田転換畑』で80%が作付されています。

少し考えてみてください。

水田→水を貯める

畑→水をできるだけ貯めない

そもそも田を畑にする時点で何かがおかしいのです。
ただ減反政策で水田は余ってるから、やるしかないのです。

水田転換畑で特に問題になるのは、排水性です。
水田は代かきを行うため、団粒をはじめとした土壌構造が発達しないからです。

排水性が悪いところにダイズを植えると根の伸長が止まってしまいます。
これが『湿害』と呼ばれる現象です。

そのため、ダイズの排水性改善には、『明渠を掘る』『暗渠の設置』『カットブレーカーなどを用いた弾丸暗渠の実施』などが挙げられます。

ただ後々論文が出ますが、ダイズは思っているよりも湿害よりも『乾燥害』を受けているのではないかという話があります(特に西日本)。

兎にも角にも、ダイズの物理性改善はダイズがそもそも育つ場所を作るという意味でとても大事なのです。

結びに

ここまでまとめると、ダイズがとれない理由は収量を『+α』する要因が見つかっていないことです。

近年、ヴィーガンの方々を中心に、ダイズ食というのが流行りつつあります。
しかし、反収が伸びていない現状、国産需要は伸びても供給が追いつきません。

なので、みなさんもダイズ収量低迷を打破するために研究しませんか?

何かご質問あれば、こちらでもTwitterでもお待ちしています。
時間あるときにご回答いたします。



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