稲と土壌肥料を繋ぐ唯一の接点:窒素
土壌肥料は、土壌と植物をつなぐ分野です。
日本においては、稲を中心に土壌肥料は発展してきた歴史があります。
土壌にある多くの元素のうち、稲と土壌肥料を繋ぐ唯一の接点は窒素です。
稲と窒素の関係がなければ、土壌肥料という分野は存在していません。
ではなぜ土壌肥料分野として、窒素が重要視されているのか。
そこについて書きたいと思います。
窒素の多少で、籾数が制御できる
いきなり結論で申し訳ないですが、見出しの通りです。
『色が薄くなったら、窒素をあげる』
『草丈大きい品種は、窒素控えめに』
なども、もちろん大事です。しかし、土壌肥料の立場で窒素を考えると
『窒素の量で籾数を制御できる』
ということが一番大切です。
こちらに古川農試での試験結果(ひとめぼれ)を貼っておきます。
横軸が窒素吸収量、縦軸を籾数としたグラフです。
極めて綺麗な相関があるのがわかりますでしょうか。
また幼穂形成期の窒素吸収量と特に強い直線関係があります。
追肥の時期が、この辺りに推奨されているのは、これが主な理由です。
つまり、窒素の施肥量で籾数をコントロールできるのが重要です。
このことを頭に入れておけば、収量が少なかった場合を想定しましょう。
まず籾数をみてから、以下のように考えます。
(1)籾数が例年よりも少ない→稲が窒素を吸えていない?
(2)籾数が例年よりも多い→窒素の与えすぎによる登熟不足?
籾数が確認できれば、水田の窒素の多少は想像できるということです。
草丈×茎数×SPADという魔法の言葉
『生育途中に稲の窒素吸収量が分からないと、窒素なんてやれないよ!』
そのために出てきたのが生育診断という技術です。
稲の場合は、ACのCMの如き魔法の呪文があります
『草丈×茎数×SPAD』
こちらは土肥誌(浪川ら2016)から引っ張ってきました。
窒素吸収量と綺麗な相関があるのがわかりますでしょうか。
さて、1個目の見出しで最初に書いた
『色が薄くなったら、窒素をあげる』
『草丈大きい品種は、窒素控えめに』
これらは、この生育診断の結果に基づくものです。稲は窒素に対して、綺麗に応答します。
だからこそ、日本を代表する穀物であり、土壌肥料の立場があったわけです。
近年では窒素吸収量とNDVIとの間にも相関があることも知られています。
こちらも土肥誌(浪川ら2016)から引っ張ってきました。
ドローンで生育診断するというのは、NDVIで行ってる場合が多いです。
なぜそれができるのかというと、このように窒素吸収量と綺麗に相関がみられるということが前提にあります。
結びに
稲と窒素の強い繋がりがあったからこそ、土壌肥料は発展してきました。
稲で培った技術は他の作物でも応用されています。
日本の生育診断技術は稲がベースとなって発展している場合が多いです。
どこかで私の研究対象でもある、穀物の劣等生『ダイズ』についても簡単に説明できればと思います。
長文ありがとうございました。
【参考文献】
佐々木ら 2004. 温度変換日数による水稲の窒素吸収パターンと籾数推定. 研究成果情報
浪川ら 2016. 携帯型NDVI測定機によるNDVI値と水稲窒素吸収量の関係.土肥誌,87, 450–454.
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