8点【感想】へんな西洋絵画(山田五郎)
オススメ度 8/10 (絵画の楽しみ方を教えてくれたので)
(へんなせいようかいが)
→出版社HP
可愛くない子どもたち、どう見てもおかしな動物……
偉大な西洋画家たちが描いた“へんな絵”で、
笑って学ぶアート入門
誰もが知る傑作から、知る人ぞ知る名画まで、
選りすぐりの“へんな絵”120点を掲載。
美術評論家・山田五郎氏が、絵につっこみを入れながら、
どうして「へん」なのかを真面目に解説しています。
笑いながら読んでいるうちに西洋美術の知識が身につく、
これまでにない一冊
純粋におもしろい絵が見たい人にも、
西洋美術の教養を身に付けたい人にもおすすめです!
【目次】
・可愛くない子どもたち
・なにぶん昔のことですから
・見たことのない未確認生物[UMA]たち
・小さいおじさん、大きいおばさん
・多すぎ、描きすぎ、細かすぎ
・あえてそう描く、その意味は?
・自分で自分をへんに描く
「西洋絵画史とへんな絵の流れ」年表つき
【著者】
山田五郎
(やまだごろう)
【出版社】
講談社
【読む前の独断と偏見によるジャンル】
おバカな本
【読もうと思った理由】
表紙借り
【貸出日】
2020/10/15貸出
【感想】
「スーパージャンプ」という集英社の昔の雑誌で『ゼロ THE MAN OF THE CREATION』という、隔週で一話完結で連載しているのが信じられへんくらい、密度の濃い漫画作品があってん。
「ゼロ」と呼ばれる主人公は、年齢、国籍等一切不明の贋作者。「神の手」を持つ男とも称され、本物と一切見分けがつかない贋作を産み出すことが可能で、その手法は原作者に完全になりきることである。
と、まあ、いわゆるゴルゴの美術版みたいなんと思ってくれたらええねんけど、なんしか原作者になりきるあまり、
エキセントリックなこと(自殺未遂はザラ)をしたり、
依頼者がその贋作が必要となる理由(死んだ妻との思い出とか、死にかかっている祖父がどうしてもみたいとか)の人情話やったり
とか、とにかくおもろい漫画やってん!
せやけど、一切、美術品のこととか覚えてへんねんけどな!
と、まあ、この本と直接関係ない話ですいませんが、とにかく私の美術に関する知識なんて、全く無い無教養の人間やと思って、この感想を読んで欲しい!!
っていう言い訳です。長なってすいません。ほんなら感想を言います。これも著作権とかややこしそうやから、画像とかは表紙以外載せませんので、気になった方は、図書館行くなり、古本屋や書店で買うなりして、自分でみてくださいね。
せやから、あんまりネタバレするのもあれやし、わいが一番おもろいと思った話を紹介するわ。
アルブレヒト・デューラー(1471生-1528没)っていうめっちゃ絵が写実的で上手い人がおって、キリスト教会の祭壇画を書いたりしてはるねんな。
ほんでそこに、制作費を負担した寄進者とか、その一族の肖像が描くことがあったらしいねんけど、聖人と同じ大きさで書くことは憚られて、小人として登場させたりするらしいねん。重要なんほど大きく書くってことね。
つまり、「描くべきテーマ」≫「お金を出したスポンサー」って状態やね。
スポンサーが絵の中に登場するのは、今で言う「スポンサーに配慮」ってやつなんかな?
ドラマとか映画で、特定の商品をやたら登場人物みんなが使ってたりみたいなん。
これがあまりにも強調されて、テンポが悪くなったりで不自然になりすぎた場合は、独特の味わいを作品に与えることがあって、おもろいよね。
現代の場合は「お金を出したスポンサー」≫「描くべきテーマ」って露骨になりすぎると、スポンサーが叩かれたりも起きてるけど、昔は宗教っていう共通の価値観があったから、スポンサーも自分らないがしろの方がええってなってたんやろな。
現代風に言うなら、大好きなシリーズにエキストラで出演みたいな嬉しさかも。
何しか、宗教というか思想というか価値観が人の認知に与える影響の凄さを感じる。
現代はあまりにも写実的なものが一般化しすぎて、やたらデッサン狂ってるとかで叩いたりしがちやけど、その人のフィルターを通して見た世界が作品に現れていることの素晴らしさを、ちゃんと認めて大切にした方が世の中に面白い物がたくさん溢れて、楽しい世界になると思うわ。
せやからクリエイターのみなさん、「丸まれ」と外野に突っ込まれても気にせんとあなたの好きなように作品を作って欲しい!
ワイはとんがったやつが大好きや!
本のことに話を戻すと、このデューラーの絵『ウムガルトナー祭壇画』とか『キリストの哀悼』には、小人化(身長50センチくらい?)したスポンサーがたくさん出てきて、画面になんとも言えへん違和感を生み出しとる。
写実的な絵や写真に見慣れた現代人からしたら、このちっちゃいおっさんとかが気になって、本来のテーマの聖人が目に入らんくなってるの。
『バクマン』っていう漫画で言ってた「シリアスな笑い」がここにはある気がする。
最近の作品で代表的なんは『宇宙戦艦ティラミス』とか『北斗の拳いちご味』。
何百年も昔の絵画でも「シリアスな笑い」があるんやって、この本によって、温故知新的な発見ができたわ!ありがとう!山田五郎さん!
また、脱線で「スポンサーへの配慮」の話になるけど、キャラクターのデザインの一種に落とし込んでいて、上手いこと違和感無くやってるのはアニメの『TIGER&BUNNY』とかかな。
ほんで、思い出したんが、関西テレビ制作の神話戦士ギガゼウスという特撮ドラマで、「スポンサーへの配慮」をギャグにした演出があってめっちゃ好きやった。
◎スポンサーのチラシを身体に付けて怪人と戦ってるけど、「ロゴが見えないから見えるように戦えって」、広告担当に怒られる
◎登場人物たちが泊まる旅館の良いところ(景色がええだとか)を急に言い出してPRする
このネタ以外にも、とにかくギガゼウスはおもろい(目の前で怪人暴れてるのに、集合時刻じゃないから何もしない防衛隊員とか)から見てくれ!絶対に損はさせへん!
と、まあ、今回は完全に脱線したままで、話を終わります。
表紙絵のアンリ・ルソー(1844生-1910没)のキ○ガイさ(自分を天才と信じて、依頼もされていない絵を相手に送りまくるけど、画力なさ過ぎて、足元を草で隠すとか狡いことをしていてワロタ)とか、他にも、面白いことをこの本は教えてくれるねんけど、とりあえずこんなもんで、感想文は終わります。
芸術に関する細かい正しい細かい知識なんて無くても、作品を楽しんでもええんやなって、この本の感想を書いていて気づきました。
せやから、芸術は後世に可能な限り残してかなあかんのかもね。今はウケなくても、いつか後世の誰かがめっちゃおもろいって感じることあるやろうし。
人々を楽しませる可能性があるので、芸術は大事だと僕は思いました(←小並感)