記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

【そこまで荒唐無稽に見えない…】シビル・ウォー アメリカ最後の日

作品紹介

あらすじ

連邦政府から19もの州が離脱したアメリカ。テキサスとカリフォルニアの同盟からなる“西部勢力”と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。「国民の皆さん、我々は歴史的勝利に近づいている——」。就任 “3期目”に突入した権威主義的な大統領はテレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。ニューヨークに滞在していた4人のジャーナリストは、14ヶ月一度も取材を受けていないという大統領に単独インタビューを行うため、ホワイトハウスへと向かう。だが戦場と化した旅路を行く中で、内戦の恐怖と狂気に呑み込まれていくー

https://happinet-phantom.com/a24/civilwar/

おすすめ度:3.8(5点満点)

こういう人におすすめ:戦争映画好きな人、ディストピアものが好きな人、アメリカの政治に興味がある人


—————以下ネタバレあり鑑賞後用レビュー


勢力解説

出てくる勢力が見ていてよく分からなかったので、調べてみました。それぞれの州が以下4つの勢力に分かれていますが、基本的には、Western Forces、Florida Alliance、New People’s Armyの3勢力が大統領側のLoyalistと対立しているという構図です。州の細かい詳細は下記のとおりです。

  • Western Forces
    カリフォルニア州、テキサス州

  • Florida Alliance
    アラバマ州、アーカンソー州、フロリダ州、ルイジアナ州、ミシシッピ州、オクラホマ州、テネシー州

  • New People’s Army
    ワシントン州(ワシントンDCとは関係ない別の州)、オレゴン州、アイダホ州、モンタナ州、ワイオミング州、ユタ州、ノースダコタ州、サウスダコタ州、ミネソタ州

  • Loyalist
    ネバダ州、アリゾナ州、ニューメキシコ州、コロラド州、ネブラスカ州、カンザス州、アイオワ州、ミズーリ州、ウィスコンシン州、ミシガン州、イリノイ州、インディアナ州、ケンタッキー州、オハイオ州、ウエストヴァージニア州、ペンジルヴァニア州、ニューヨーク州、ヴァーモント州、ニューハンプシャー州、メイン州、マサチューセッツ州、コネチカット州、ニュージャージー州、デラウェア州、メリーランド州、ヴァージニア州、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、アラスカ州

参考にしたのはこちらのサイトです。こちらのサイトには地図もあるので、地理的な勢力図がよく分かると思います。

ちなみにワシントンD.Cというのは州ではなくDistrict of Columbiaという連邦直轄地で、特別な区画となっている都市です。
主に出てくるのはWestern Forcesですが、カリフォルニア州とテキサス州が手を組んでいるというのが意外です。カリフォルニア州はいわゆるブルーステイト(Blue state:歴史的に民主党の支持基盤)で、テキサス州はレッドステイト(Red state:歴史的に共和党の支持基盤)なのですが、この2つの州が手を組んでいるというのは、本当の対立は政治的対立ではないという暗喩でしょうか。

気になってしまった音楽の使い方

劇中シルヴァー・アップルズやデ・ラ・ソウルの曲が使われています。それぞれメッセージがある曲がセレクトされており、シーンに意味を与えていますし、私も以前はこういったカッコいい曲がかかり、シーンがスタイリッシュになるのは大好きだったのですが、これだけ現状アメリカで分断が進み、戦争も全くのおとぎ話でなくなってきている状況においては、個人的に「戦闘シーンカッコよく見せてる場合じゃ無いんじゃ…」と感じてしまいました。

意義を見失ったベテランの辛さ

主人公のリーはベテランの戦場カメラマンなのですが、生業としているジャーナリズムの無力さを感じています。
新人のジェシーは全てが新しく新鮮で、その分ショックも受けますが、だんだんと戦場での動きもイキイキとしてきます。
リーの相棒であるジョエルはアドレナリンジャンキーという言いますか、スリル依存症のような感じもある男です。
 最後の戦闘シーンでは、それまで淡々と仕事をこなしていたリーですが、恐怖から動けなくなってしまいます。このシーンがなんとも切なかったです。自分がやっている事に意味なんてないのではないかと感じ、その上に、もうベテランなので、昔のように新鮮味もなく、アドレナリンもそんなに分泌されない、もうそうなると恐怖に飲まれて動けなくなってしまう、この感じは中高年の人は分かる方も多いのではないでしょうか。仕事も人生もだんだんそんな感じになっていく悲哀を感じました。

その他個人的にリアルだと思ったところ・リアルじゃないと思ったところ

リアルだと思ったところ

  • 米ドルが機能していない
     リー達が道中ガソリンスタンドでガソリンを買おうとする際に、最初は売ることを拒んでいた店主ですが、リーが「カナダドルだったらどう?」というとそれならいいとガソリンを売るシーンがありましたが、現在世界でも基準通貨の一つとなっている米ドルが作品中では機能しなくなっています。当然と言えば当然ですが、貨幣の価値はその国の政府への信頼と直結していますので、政府が機能しなくなると貨幣も価値を失います。もし米ドルが機能しなくなったら、世界経済は大混乱に陥りますので、アメリカの人々にはこの映画を観て、これ以上の分断は良くないと思って欲しいところです。

  • 失われる多様性を守ろうという理想主義
     アジア系である記者達が真っ先に射殺されるシーンがありますが、ああいった戦争状況下、特にアメリカでは、200%ああいうことが起きるでしょう。平和時には機能していた多人種の共存というのは全く意味を為さないというのは、もうこれは悲しくも紛れもない事実なのだと感じます。

  • 皮肉にも人の繋がりが復活しているように見える
     
    戦争状況下なので、難民キャンプが点在しており、リー達も途中で立ち寄るシーンがあります。インターネットが使用できない状況になっているので、その分みんなで会話をしたり、遊んだりしているシーンが、皮肉にも現代人よりなんだか幸せそうに見えました。

ちょっと無理があるかなと思ったところ

  • 武器を持っていない
     リー達は全く銃器を保持していません。自分たちは記者であるということで、意図的に銃器を持っていないということかと思いましたが、あの状況下のアメリカでは皆真っ先に銃器を手に入れると思うので、いくらなんでも全く持っていないというのは少し不自然な気がしました。

  • 太り過ぎの戦場記者
     サミーというベテランの記者が出てくるのですが、もうかなり高齢かつ肥満で、足も不自由な人です。さすがに戦場に赴く記者であのような健康状態の人はいないのではないかと思いました。

  • 効かなかった防弾チョッキ
    主人公のリーは映画の終盤、ホワイトハウスでの銃撃戦で、背中を撃たれ死んでしまいます。あれだけ防弾チョッキの重要性をジェシーに言っていたリーで、防弾チョッキもちゃんと着ていたように見えましたが、なぜだか全く機能しなかったのが、不自然に見えてしまいました。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集