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風景のレシピ #24 “漂着海岸”| nakaban

「旅と記憶」を主題に絵を描いている画家のnakabanさんが、風景画の制作過程をレシピ化するこころみです。序文はこちら



風景のレシピ #24 “漂着海岸”

調理時間:5時間

材料:
入り江:ひとつ
曇り空:全体を覆う
砂:大量
丘:適宜
建物:数件程度
群衆:10人程度
海獣:1 匹
船:1、2せき


1.静かな入り江をひろげ、曇り空の下でよく佇ませる。
  周囲を丘のように盛り土し、いくつかの建物を建てる。


2.砕けた貝でできた砂で海岸を縁どる。


3.入り江の中心に流れ着いた海獣を置く。浅瀬に乗り上げ瀕死状態になっている。


4.見物人を海獣の周囲に配置する。終わらない会話が波の音に混じる。


5.どうすることもできないまま、夕闇が迫ってきたら、できあがり。


調理のコツ
*どこかで本当にあったであろうこのような情景を思い起しながら。

いろいろなモノが流れ着く入り江
無念な瀕死状態
「今日はなんて日だ。日記に書いておこう」
できあがり。クリックすると拡大して見られます。



◎プロフィール
nakaban (なかばん)
画家。絵画、書籍の装画、文章、映像作品、絵本を発表している。
新潮社『とんぼの本』や本屋「Title」のロゴマークを制作。
著作に『ダーラナのひ』(偕成社)『ことばの生まれる景色』(辻山良雄との共著、ナナロク社)『窓から見える世界の風』(福島あずさ著、創元社)など。
好きなことは果樹栽培、ポストカード収集、そしてもちろん絵を描くこと。
本を読むのが遅い。
広島市在住。www.nakaban.com

★「風景のレシピ」マガジンページはこちら
#1 “眠たい海辺の町”
#2 “石と流木のある部屋”
#3 “松林の散歩者”
#4 “夕景・手・オブジェ”
#5 “通り”
#6 “木立と川と蜃気楼の町”
#7 “Symmetria”
#8 “やさしい夕暮れ”
#9 “大きな駅”
#10  “夜想の海”
#11  “橋と暗い渓谷”
#12  “階段”
#13  “霧深き日”
#14  “忘れる広場”
#15 “捨てられたモノ”
#16  “都会の夜明け前(トーキョー風)”
#17  “地図にない場所”
#18  “家具のための野外劇場”
#19  “イタリアかさ松のある町”
#20  “朝焼けの海”
#21  “鳩小屋”
#22  “知らず知らずの境界にて”
#23  “Mill House”