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風景のレシピ #3“松林の散歩者”| nakaban

「旅と記憶」を主題に絵を描いている画家のnakabanさんが、風景画の制作過程をレシピ化するこころみです。序文はこちら



風景のレシピ#3“松林の散歩者”

調理時間:1h

材料:
松:たくさん
階段:ひとつ
道:ひとつ
降り注ぐ光:適宜 
日陰に咲いた花:適宜
寂しさ:数片


1.道に立ち、周りを見渡す。
  一気に松の木々を生やす。
  木の幹をうねらせる。(100年が一瞬のように松の木を成長させる)


2.松の香りを風に乗せる。


3.数段の浅い階段をつくる。
  階段を登り切ったところで道行きを視界から消す。


4.われわれには知覚できない、植物たちの会話。
  そのことを思いながら枝振りを整える。小花を咲かせる。


5.ふと、道を振り返る。同じ松林の道がどこまでも続いている。


6.枝間から降り注ぐ光を散らす。
  朝の光か、午後の光か、そのときの気分で。
  全体を整えて、できあがり。


調理のコツ
*やや粗野(Rustique)な手つきですばやく。香りを失わないように。

松の木の株元に残る夜気の名残り
差しはじめる朝の陽光
松の木のどっしりとしたうねり
できあがり。クリックすると拡大して見られます。


◎プロフィール
nakaban (なかばん)
画家。絵画、書籍の装画、文章、映像作品、絵本を発表している。
新潮社『とんぼの本』や本屋「Title」のロゴマークを制作。
著作に『ダーラナのひ』(偕成社)『ことばの生まれる景色』(辻山良雄との共著、ナナロク社)『窓から見える世界の風』(福島あずさ著、創元社)など。
好きなことは果樹栽培、ポストカード収集、そしてもちろん絵を描くこと。
本を読むのが遅い。
広島市在住。www.nakaban.com

★「風景のレシピ」マガジンページはこちら
#1 “眠たい海辺の町”
#2 “石と流木のある部屋”



◎好評既刊◎
『窓から見える世界の風』福島あずさ著、nakaban絵(創元社、2018年)
『あの日からの或る日の絵とことば』筒井大介編(創元社、2019年)