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風景のレシピ #22 “知らず知らずの境界にて”| nakaban

「旅と記憶」を主題に絵を描いている画家のnakabanさんが、風景画の制作過程をレシピ化するこころみです。序文はこちら



風景のレシピ #22 “知らず知らずの境界にて”

調理時間:20時間

材料:
真冬の澄んだ空:全体に
道:一本
石壁:左右に適宜
壁に置くオブジェ:適宜(ここでは果物)
樹木:たくさん
ヤドリギ:適宜
太陽:ひとつ
遠くの門:ひとつ


1.冬の冷たい空気を全体にひろげる。


2.中央に道を通し、遠くに寂しげな門を置く。門の向こうの風景は、想像できない。


3.空の中央あたりにハロを纏った太陽を浮かべ、それを取り囲むように枝を這わせる。


4.枝の根元をしっかりと着地させ、100年ほど熟成させた石壁で囲う。


5.石の上には忘れ物のようにオブジェを置き、木々にはアトランダムにヤドリギを付着させる。それらが知らず知らずのうちに全体の佇まいを整える。


調理のコツ
*誰もがここで立ち止まってしまう風景となるように

ヤドリギと落葉樹の共生
冷気を放射する石壁
暖をとるように取り囲む枝
できあがり。クリックすると拡大して見られます。

◎プロフィール
nakaban (なかばん)
画家。絵画、書籍の装画、文章、映像作品、絵本を発表している。
新潮社『とんぼの本』や本屋「Title」のロゴマークを制作。
著作に『ダーラナのひ』(偕成社)『ことばの生まれる景色』(辻山良雄との共著、ナナロク社)『窓から見える世界の風』(福島あずさ著、創元社)など。
好きなことは果樹栽培、ポストカード収集、そしてもちろん絵を描くこと。
本を読むのが遅い。
広島市在住。www.nakaban.com

★「風景のレシピ」マガジンページはこちら
#1 “眠たい海辺の町”
#2 “石と流木のある部屋”
#3 “松林の散歩者”
#4 “夕景・手・オブジェ”
#5 “通り”
#6 “木立と川と蜃気楼の町”
#7 “Symmetria”
#8 “やさしい夕暮れ”
#9 “大きな駅”
#10  “夜想の海”
#11  “橋と暗い渓谷”
#12  “階段”
#13  “霧深き日”
#14  “忘れる広場”
#15 “捨てられたモノ”
#16  “都会の夜明け前(トーキョー風)”
#17  “地図にない場所”
#18  “家具のための野外劇場”
#19  “イタリアかさ松のある町”
#20  “朝焼けの海”
#21  “鳩小屋”