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風景のレシピ #37 “さいはて町”| nakaban

「旅と記憶」を主題に絵を描いている画家のnakabanさんが、風景画の制作過程をレシピ化するこころみです。序文はこちら



風景のレシピ #37 “さいはて町

調理時間:10時間

材料:
砂混じりの海:一面
岬のある陸地:ひとつ
古風な街並み:一帯
防波堤:一本
木々:適宜
人、犬、猫、自動車:適宜


1.明るい空に水平線をひとつ引く。
  砂混じりの海をよく混ぜて波を発生させる。


2.砂が堆積して海岸線が出来上がると、その先端を岬の形に整える。
  現れた陸地をよく陽にさらす。


3.陸地に木々を植えて赤茶けた建物を建てる。
  砂浜に古そうな防波堤を沿わせる。
  建物の窓は、時おりの海風を受けてガタガタと音を鳴らすように。


4.見えない街陰に人や犬を散歩させて、そこかしこに停まった車を置く。


5.波の音とリズムが全てによく染み込んだら、できあがり。


*調理のコツ
空気、建物の材質、その土地の料理、すべてに塩分を多めに含ませる。

さいはて町立郷土資料館
昼寝する自動車
灯台の跡地
できあがり。クリックすると拡大して見られます。


◎プロフィール
nakaban (なかばん)
画家。絵画、書籍の装画、文章、映像作品、絵本を発表している。
新潮社『とんぼの本』や本屋「Title」のロゴマークを制作。
著作に『ダーラナのひ』(偕成社)『ことばの生まれる景色』(辻山良雄との共著、ナナロク社)『窓から見える世界の風』(福島あずさ著、創元社)など。
好きなことは果樹栽培、ポストカード収集、そしてもちろん絵を描くこと。
本を読むのが遅い。
広島市在住。www.nakaban.com

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