Soft Rock Top 45位~41位
45位 Joe Rosanova & The Vineyard「Somehow, Someway, Someday」1968年
米国ナッシュビル出身のドラマーJoe Rosanovaを含む4人組サイケポップ・バンドThe Vineyard。1968年に発表された『In Dedication To The One's We Love』の裏ジャケに記載された謝辞・クレジット以外にこれといった情報は無く、恐らく唯一作と思われます。各メンバーについて軽くググってみましたが、ほぼヒットせず微々たる曖昧な情報はあっても同一人物かも分からず、確かな詳細は不明。何かと謎の多いバンドですが、同年に発表されたOrpheus『Ascending(1st)』 やThe Moon 『Without Earth』、1969年のThe Chosen Few『S.T.』、1971年The Changing Scene『S.T.』等々…Soft Rock系サイケ・ポップの名盤と肩を並べて紹介したい程の素晴らしいアルバムです。
Muro氏推薦盤として本国でも知名度が上がってきたこのアルバムは、James Brownを手掛けたKing Recordからのディストリヴュート盤ではありますが、あまり黒っぽさは感じず、全体的なサウンドは見事なまでに正統派のサイケ・ポップ然としています。相田毅氏の言及通り、1968年ベトナム戦争真っ只中という時代背景において、政治・学生運動に無頓着でスパイスの効いてない音楽は侮辱・酷評を浴び、Rockは正に新時代へと突入する黎明期。
呑気にラブソングを歌っている場合ではないのです!!と、言いたいところですが、何しろリ ード・ヴォーカルBart Fioriの書く曲があまりに美しい。幽玄風Mellow PopのA面3曲目「Now That I've Lost You」を始め、弾むリズムとキャッチーなポップ感覚が最高のB面2曲目「Since You've Been Away」、凍てつく程に美しいHarmonyが印象的な幻想系メロー・サイケ「In Dedication To The One's We Love」等々。流麗で甘いメロディと浮遊感漂う美しいコーラス・ワークの組み合わせが最高に心地良く、聴く程に病みつきになります。 正直Psychedelicなサウンド云々はむしろどうでもよく、耳障りの良い甘いメロディにただひたすら漬かりたい、と思わせる程です。
そして極めつけは全Soft Rockファン素通り不可避な極上キラー・トラック「Somehow, Someway, Someday」!! とにかくメロディ展開が秀逸。切なくも甘いメロディ、間奏で聴かせる華麗なエレピ・ソロ、後半のビルド・アップまで全てを含めて完全に調和されており、全く隙も無駄も無い完璧な3分間。Soul Pop系上質Soft Rockとして後世に語り継がれるレベルです。
44位 Sunshine Express「Sunshine Day」
米国テネシー州ナッシュビル出身のCCM系Soft RockグループSunshine Express。ショウバンドとしてBobby Goldsboro・The Lettermen・Anita Bryant・Jim Nabors・Loretta Lynn・Tennessee Ernie Ford等の大物アーティストとステージで共演したことのある実力派で、恐らく唯一作と思われる年代不詳の『S.T.』では、非常に重厚感ある濃厚Chorus & Harmonyを披露。CCM という特性上カントリーやゴスペル寄りの楽曲も含まれていますが、選り好 みすればなかなか楽しめる内容になっており、A面冒頭に収録されたCCM定番ソング「Sunshine Day」が特に素晴らしいです。豪華なブラス・セクションをバックに可憐な女性ヴォーカルをフィーチャーした内容で、ポップに彩られたサウンドと爽やかにして濃密なChorusの絡みが最高な1曲。一聴の価値は有。
ちなみに、この作品でアレンジ・指揮を担当しているStan Morseとプロデュース担当Gary Henleyの2人。Life『That's… Life』という作品でも全く同布陣にて制作されており、 サウンド・内容面でも酷似、さらには米国の通販サイトでも両盤がセットで売られていることが多い為、恐らく兄弟作であり、彼らにとっては【CCM系濃厚コーラス・プロジェクト】 なのでは?と勝手に推測。
ともあれ、こんなにもパワフル且つ重厚な男女混声コーラス物が全くの無名で埋もれているのですから、CCMは本当に奥深いなと感じます。正に大量の砂の中からダイヤを見付けた感覚…。
43位 The James Boys「Give Your Love A Chance」1976年
作曲家・プロデューサーとして英国の音楽シーンを支えてきたBradleyと StewartのJames兄弟。彼らの音楽キャリアは若干10歳と9歳の頃(70年代初頭)に始まり、ロンドン周辺の市民会館や劇場・アマチュアコンサートで演奏しているところを、The KinksやThe Troggsのプロデューサーで有名なLarry Pageが発掘したことでプロの世界へ進出します。1973年に《The James Boys》という名義で、Larryが自ら創設したPenny Farthing Recordsからレ コード・デヴュー。
「The Osmondsに対する英国からの解答!」という謳い文句で、当時米国で人気が沸騰していたThe OsmondsやJackson5、The Partridge Family(空想家族)、The Cowsills等のファミリー・グループに対する対抗馬として売り出されました。「ファミリー・グループというより兄弟デュオでは?」とツッコミを入れたくなりますが、同年1973年にカナダからThe DeFranco Family、オーストラリアからThe Daltons等、The Osmonds人気の後を追うファミリー・グループが相次いで輩出された影響もあったのでしょう。彼らの1st Single『Over&Over』は、英国ではTop39とマイナー・ヒットに留まりましたが、Larry Pageによる国際的なプロモーションが功を奏し、ドイツ・スペイン・スカンジナビア・極東にてTop10の大ヒットを連発し、全世界で100万部を超える売り上げを記録。James兄弟はシングル1枚のみでゴールド・ディスクを獲得するという快挙を達成し、それを受けてアルバム制作から海外でのライブ・ツアー、欧州でのTV出演等々…一気にスターダムにのし上がります。
学校を卒業した1978年以降は、作曲家・ミュージシャン・アレンジャー・プロデューサーとして、Barbara Dickson・Paul Young・Imagination・Amii Stewart・The Nolans等々… 多くのアーティストを裏方でサポート。1986年には英国で最も売れたNick Berryによるシングル「Every Loser Wins」の作曲とプロデュースで数々の賞を受賞し、その年のワールドカップのオフィシャル・ソングも作曲。1990年以降も同様に楽曲提供・プロデュースをメインに行い、制作に携わった多くのアルバムが英国のアルバム・チャートで好成績を残します。さらに収益性の高いTVマーケティングに目を向け、大手レコード会社の特別マーケテ ィング部門と協力しながら俳優のアルバム制作、宣伝用のリラクゼーション系コンセプト・ アルバムの制作、クラシックのロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団への指揮・スコア制作の担当等々…活動の幅を広げてマルチに活躍し、様々な分野で英国音楽産業の促進に貢献してきました。
【Soft Rockファンが注目すべきThe James Boys名義作品】
Soft Rock系兄弟デュオ《The James Boys》名義でリリースされたアルバムとLP未収のシングルについてサクッと解説していきたいと思います。まず、彼らは約3年の活動期間の間にアルバム3枚・シングル10数枚をリリース。被り楽曲が複数あるものの全作品共に非常に充実したSoft Rock的な内容になっております。丁度同時期に米国ではAndy & David Williamsという兄弟デュオが人気を博しており、サウンド的にも良く似た雰囲気がありますが、甘いバラードに最大の魅力があるWilliams Bros.と比較すると、The James Boysはとにかく聴いていて「明るく」「楽しく」「笑顔になれる」ポップ・ソングで目白押し。では、実際に見ていきましょう!
★アルバム3作品
①1973年『Introducing』(Penny Farthing)
モロ直球のバブルガム・ポップ「Funny Little Things」、「Love Me Love My Dog」、「Sally Don't You Run」辺りは聴き易く好感が持てます。Soft Rockファンの方、またはティンパン・ アレー系が好きな方にとっては Kincade「Dreams Are Ten A Penny」とStamford Bridge「Roly Poly」、この John Carter作曲の2曲は要チェック!個人的にはThe Troggsの名曲 「With A Girl Like You」のカバーがお気に入り。重たく印象的なベース・ラインとJames兄弟による爽快ヴォイスのコントラストがかなりCool。
②1973年『Here Come The James Boys』(Pye Records)
こちらは米国向けにリリースされた2nd Album。前作と5曲も被っていますが、パンチの効いた爽やかポップ「Help Me Pretty Baby」とメロー・バラード「Please Mrs. Bell」の2曲は必聴!!!
③1974 年『The James Boys』(Penny Farthing)
スペインのみでリリースされた実質ラスト・アルバム。全12曲中10曲が前 2作品との被り曲。ダイナミックなギター・ポップ「Keep Moving」、キャッチーなミディアム・バラ ード「Same Old Way」…う~ん、どちらも秀逸な出来。
★LP未収シングル
①1974年『I Love You / Pick A Bale Of Cotton』
こちらのEP盤は、The James Boysの作品群の中でも恐らく日本で一番知名度が高いかと思われます。というのも、プレカツ集大成の名著『Record Hour(編集:鈴木雅尭)』で取り上げられたから。主にDJ界隈に人気なのはThe James Boysらしさが全快なハッピー・ ポップチューン「I Love You」。日本のトップFunk DJである黒田大介氏の言及通り、日本でもお馴染みの手遊びソング「グーチョキパーで何作ろう」のパロディ・ソングです。フランスの伝統的な民謡「Frère Jacques」が元ネタで、英語圏では「Are You Sleeping」として知られています。DJネタとしての重宝するアイテムかと思いますので、気になる方は是非!
②1976 年『Don't Ever Leave Me (Baby) / Give Your Love A Chance』
子供の成⾧は早いもので、直近のシングルから声変わり&容姿も大人っぽくなっています。 両曲共モダン・ポップなサウンドで、SailorやThe Hudson Brothers・後期Bay City Rollersが好きな方に激烈推薦したいシングル。大人っぽくなったMellow Voiceと弾けるポップ感覚 …最高です!!この時期にアルバムを残していたら間違いなく名盤が完成していたはず。彼らのラスト・シングルに相応しい最高のダブル・サイダー!!特にB面「Give Your Love A Chance」が必聴トラックです!!!
42位 Stephanie Taylor「Dum-De-Dum Song」1975年
カナダ産Soft Rockの名盤と呼ばれる重要作品の大部分を占めるのが、即席バンドで構成された一過性プロジェクト。『The Sycamore Street Singers』『Johnny Burt Orchestra & Chorus』『Six People』『The Billy Van Singers』『Johnny Cowell & His Orchestra & Chorus』『The Jerry Toth Singers』『The Jimmy Dale Orchestra & Chorus』…等々、どれも続編は一切無く1作品で完結しており、こういった作品群は例を挙げ出したらキリがない程。コーラス物は男女構成が基本スタンスで、選出される人脈も大抵が常連メンバーで固定化されています。女性陣で言うとRhonda Silver・Kathy Collier・Lynne McNeil・Patty Van Evera 辺りが良く目にするレギュラー・メンバー。そして女性コーラス隊の中でも引く手数多で多数の即席コーラス隊に参加した一番の功労者がStephanie Taylor(本名:Stephanie Lillian Taylor)。
世間一般ではTighten Up調のGroovy Killer Track「I'm Going To Make You Love Me」 が収録された唯一のSolo Album『I Don't Know Where I Stand』の知名度が異常に高く、Barbara Gryfe・Judy Singhに次ぐカナダ産Soft Rockにおける三大歌姫としても認知度の高い御方ですが、彼女の通算キャリアにおいては、セッション・シンガーとしての側面が大部分を占めております。 彼女の活動の極初期に当たるのが、1960年頃に同郷同界隈の女性シンガーであるDiane Miller・Rhonda Silverと共に結成したGirls Group《The Girlfriends》。
彼女らはCBCの『Music Hop』という音楽番組で裏方ゲストとして往年のヒット・ソングを歌っていたところ注目を浴び、レギュラー・トリオとして定期的にTVで出演することに。加えて番組でヒットした楽曲をNYでレコーディングすることが決まり、1964年に1st Single『I Will / Once In A Lifetime Boy』をリリース。しかし当時同名のグループが複数存在していた為、差別化を図るためにグループ名を《The Willows》に。改名後のデヴュー作1966年作「My Kinda Guy」が空前のスマッシュ・ヒットを記録。その後はカナダでのライブ演奏をしたB5のOpening Act(前座)を務めたり、ティーン向けコスメ系CMのジングルを吹き込んだりして活動をしておりましたが『Music Hop』の打ち切りがきっかけで《The Willows》も自然消滅。
解散後のDiane MillerとRhonda Silverは《Six People》。Stephanie TaylorはLaurie Bowerに引き抜かれ、The Laurie Bower Singersを筆頭にThe Mutual Understanding・Hagood Hardy & Montage・The Sycamore Street Singers・Johnny Burt Society・The Corporate Image等のCanadian Talent LibraryやCBC Radio Canada関連の数多くの作品群に女性コーラス隊の一人として参加。各作品で正に水を得た魚の様な活躍ぶりでその美声を轟かせ、この狭き界隈ではいつしか《コーラス・クイーン》と称される程に。その後は80年代中期頃まで⾧きに渡り、スタジオ・セッション・シンガーとして活動を続けることになります。
彼女自身にスポット・ライトが当たった作品は、アルバムでは1970年発表の唯一のSolo Album『I Don't Know Where I Stand』と彼女のVocalに焦点を当てて制作された翌年1971年リリースのJohnny Burt Orchestra & Chorus名義『A Christmas Wish』の2枚。シングルでは1975年『Standing Room Only / Play With Me And Talk With Me』とBilly Vanとのカッ プリングEP盤『Dum-De-Dum Song』、翌年1976年『Satisfying Love / After The Thrill Is Gone』の計3枚になります。
上記楽曲群の中から1曲選ぶとなると、個人的には断トツで「Satisfying Love」、Soft Rock観点で言うと「Dum-De-Dum Song」になりますでしょうか。前者はWest Coast Rock然とした極上のMellow Ballad。に対して後者は最高にキュートなX’mas系ポップ・チューン。 どちらの楽曲にも共通して言えるのは、Stephanie Taylorの歌声が美し過ぎて悶絶モノということ。Karen Carpenterを彷彿させる、柔らかみを帯びた可愛らしくも瑞々しい歌唱は完全にトロけます。旦那様Eric Robertsonがアレンジでクレジットされているのが影響しているのか、アルバムよりもリラックスして伸び伸びと歌われてる気もします。両曲共に死角なき名曲とうことで入手は必須。
41位 The Osmond Brothers「I've Got Loving On My Mind」1967年
1970年代に社会現象を起こしたアイドル・グループ「The Osmond Brothers」。1959年から4人兄弟(三男Alan四男Wayne五男Merrill六男Jay)で音楽活動を始めた彼らは、各地のイベント会場で歌唱を披露しておりました。可愛らしいパフォーマンスと抜群のコーラスワークで会場を沸かせ、Disneyとの契約を結び、さらには「The Andy Williams Show」の出演も決定します。1962年には七男Donnyが参加して5人グループに。1970年に入ると「The Osmonds」と改名し、バブルガム系RockやThe Jackson5系のR&Bスタイルを踏襲したサウンド志向になり、「One Bad Apple」「Double Lovin'」「Yo-Yo」「Down By The Lazy River」「Crazy Horses」等々…スマッシュ・ヒットを連発します。Donny在籍ラスト作になった1976年作『Brainstorm』以降は、再び名義が「The Osmond Brothers」に戻ります。
60年代の極初期作品はThe Andrews Sisters顔負けの圧巻なアカペラ・コーラスを売りにしておりましたが、やや大衆歌謡~讃美歌寄りのサウンドでした。時代の流行と共にRock色が強くなっていきますが、バブルガムに傾倒する前夜にリリースした1967年作『The Wonderful World Of The Osmond Brothers』は濃厚なChorus & Harmonyはそのままに、程良いRock感が入れ混じり、極上のSoft Rockサウンドを披露しております。厳密に言うと、その前作に当たる『The New Sound Of The Osmond Brothers』でもB5「I Get Around」を狙った「Mr.Sandman」というSoft Rockサウンドにも通じる Surfin' & Hot Rod系の楽曲はありますが、アルバム全体でSoft Rock的な趣向に傾倒しているのは『The Wonderful World Of The Osmond Brothers』の1作のみ。あのCurt Boettcherさえも蒼褪めるであろう鋭角的なChorus Workは一聴の価値があります。
兄弟5人から成る肝心のChorus & Harmonyは、圧倒的なバス・ヴォイスが不在な為に広がりに欠ける部分はありますが、声変わり以前のDonnyによる超高音ヴォイスのおかげでそこを上手くカバーしております。個人的なお薦めは、A面1曲目「I've Got Lovin' On My Mind」と5曲目「Mary Elizabeth」の2曲。両曲共に美しいメロディと濃厚なChorus & Harmonyが印象的で、Soft Rockファンを唸らせるには十分過ぎる程の好内容です。特に前者「I've Got Lovin' On My Mind」の出来は圧巻で、超絶に甘いFlower Popなメロディとビルド・アップに伴う濃厚Chorus、サビで展開する開放感!!!正に完全無双な最強Soft Rockナンバー!!! 鳥肌モノの高音パパパ・コーラスが登場する1分38秒辺りからは、完全にCurt Boettcher降臨してて笑うしかないです。
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