
ファッション回帰の旅、始まる。
1月17日。
阪神淡路大震災が起こった日。
早朝に強い揺れで目覚めたが、
「もしかして、今日の午前中の授業が休講になったりしたら、思いっきりギターの練習できちゃうなあ」
なんて呑気に思いながら二度寝して、起き出してTVで惨状を目の当たりにし、衝撃を受けた思い出。
京都という土地は災害に強いようで、大きな被害は出なかった記憶がある。
この日が来ると、決まって
「自分は生かされたのだから、天命を全うしなければならない」
と思うようになった。
自分の能力を生かした、世の中の役に立つ仕事をしたい。
それがこの仕事に就いた理由。
年明けから早速、新製品のイメージが日々むくむくと湧き出して止まらない。
初めて勤めたバッグメーカーの社長に今の自分の成長した姿を見せにご挨拶に伺うという初夢を見てからというもの、ファッションが好きで楽しくて仕方なかった頃を思い出しては
「あのブランド、あのセレクトショップ、あの服やあの靴、大好きだったな」
など思い起こすようになった。
それはおそらく、昨年リリースした新製品の3wayバッグに採用したUltra200という素材との出会いが大きく影響しているように思う。
ヴィンテージのヘヴィリネンのようなテクスチャーが、私の大好きだったファッションととても相性が良いからである。
そんなわけで、昨年は7年ぶりに京都へ里帰りした「原点回帰」の年だったが、今年は「ファッション回帰」 の年になるような気がしている。
アウトドア業界に飛び込んでからというもの、長らく忘れていた、あの、ファッションにワクワクドキドキし、ときめいていた心を取り戻したい。
これからのクリエイションの起爆剤にすべく、もう手元には残っていないものも含め、私が好きなファッションやアイテムの回顧録をアウトプットしていくことにした。
手始めに、私がこれまでの人生でいちばん好きだった靴をスケッチ。
便利なデジタルお絵描きツールはたくさんあるけれど、昔から好きな筆ペン一発画。
初期衝動を大切にしたいから、敢えて手直しできないアナログ手法。
トップバッターは、tricot COMME des GARÇONSの、パーフォレーション(メダリオンとも表される穴飾りのこと)が施された、牛革エナメルのワンストラップシューズ。

見た瞬間、「ズッキュン!」と音がしそうなほどにハートを射抜かれて一目惚れし、即購入。
「これぞ、私が好きなクラシック×アヴァンギャルドの融合だ!」
ブラウンのエナメル革の穴飾りの下には、真っ赤なレザーがのぞいていた。
確か黒もあり、そちらは赤ではなくブルーだったような気がする。
かれこれ20年以上前に購入したもので、あまりに好きすぎて、エナメルがバリバリにひび割れるまで履いていた。
マニッシュなワイドパンツに合わせたり、女学生風のロングプリーツスカートに合わせたり。
本当に大好きだったなあ。
身につけるアートみたいな感覚で、これを履いて出かけるといつも気分が上がったものだ。
つくづく、残しておけばよかったと後悔。
Webで検索しまくればもしかすると画像が見つかるかもしれないけれど、なんとか記憶を掘り起こしてみた。
今ならこんな服に合わせたい。
そう思い描く服がある。
けれど、世の中にないから自分の手で作るつもりだ。
SO FAR SO GOODというブランドを始めてからこれまでは、ファッション業界で培ってきた知識や経験、感性をアウトドア用品に投影してきたように思うが、今年は、アウトドアのものづくりで得た知見をファッションに投影してみたいと思っている。
2025年が楽しみで仕方ない。