姿勢から捉える呼吸の理学療法
みなさんこんにちは!!
月末理学療法士そうです
今月は前回の"歯医者の理学療法士監修呼吸について"記事を踏まえて、呼吸と姿勢について実践How Toの部分を記事にしていきます
まずはじめに姿勢評価になりますが、通常はケンダルの分類を用いて高緊張筋や弱化筋などの推測を行います
この部分に関しては腰部疾患の記事で取り上げていこうと考えています
では本題です
現代スマホなどで光刺激が多いことや、人によっては痛みが原因で交感神経が優位になっていることが多いです
呼吸にアプローチする理由として、直接的なパフォーマンスアップよりは副交感神経を優位にしたり、様々な面で抑制に働かせたりすることが挙げられます
前回の記事にも載せていますが、呼吸を理解する上で必要な筋肉を紹介していきます
下図の筋肉でコアハウスやインナーユニットと呼ばれるものを形成します
コアハウス筋の機能をかなり簡単にまとめると
腹横筋は
上部は肋骨を締め
中部は腰部まで周り、いわゆる胸腰筋膜として腰部の筋を囲うことで安定性に関与
下部は骨盤の安定させます
多裂筋は各腰椎の安定性を担保します
それを上下から横隔膜と骨盤底筋で支える形になります
ゾーンオブアポジション(ZOA)
横隔膜と骨盤底筋が向かい合っている姿勢が理想です
肋骨がニュートラルもしくは内旋位にあると横隔膜が沈む幅が大きくなるため呼吸には良いとされます
逆に外旋位にあると横隔膜の沈みが浅くなるため、吸気量も減ってしまいます
また横隔膜が前下方を向くため骨盤底筋と向かい合わず、力がうまく伝わりません
骨盤が前傾していても相対的に外旋位(リブフレア)になります
→骨盤を中間位に持っていくと肋骨が外旋しているように見える
片脚重心
リブフレアがあると横隔膜が前下方を向くため骨盤底筋と向き合わず、力が伝わりにくいいわゆる”腹圧が抜ける”姿勢になります
そのためリブフレア側に荷重が乗りにくい傾向にあります
足を崩してどちらが立ちやすいか聞くとリブフレア側を前に出しやすい印象です
またこの姿勢を取ると、前に出している方の骨盤は前傾することが多いです
リブフレア
一番は背部筋緊張と腹筋群の筋力低下が原因ではないかと思います
他にも隣接関節で見ていくと
骨盤前傾
股関節伸展制限
足背屈制限
などでも起こりやすいです
静止アライメントにおいて既にリブフレアしているとそれ以上の動きをする際に他の関節に負担がかかります
肋骨の内旋を促す主な筋は腹斜筋だと言われています
腹斜筋を促通するエクササイズを下記で紹介します
評価
理学療法所見や整形外科テストも今回は省略しますので、現場ですぐに行えるスクリーニングを紹介します
マルチセグメンタルローテーション
肩軽度外転位、外旋位で体幹を回旋させます
胸椎、股関節、足関節の複合運動が観ることができます
前から見たときに逆の肩が見えるのは基準ですが、左右差を確認しましょう
プレッツェル
骨盤後傾、腰椎後弯させることでそれぞれが固定され、靭帯性にも安定するため胸椎の回旋を単独評価することができます
プレッツェルで左右差がなく、マルチセグメンタルローテーションで左右差がある場合は胸郭以外が問題であるとざっくり評価します
エクササイズ
ドローイン
はいはい!!ドローインとブレーシングね!!と思う方もいるかもしれませんが、やはり大事な部分になるので紹介させていただきます
ドローインは腹横筋の単独収縮も狙うことができます
腹横筋(中部)の収縮が得られると胸腰筋膜の張力が得られます
そのため腰方形筋や多裂筋、脊柱起立筋群、僧帽筋、大臀筋などが適切に収縮できる環境が作ることができます
腹直筋の横から触診し、平べったく触れるのが腹横筋です
諸説ありますが、個人的に触診した際にパンッと張ってくるのは腹斜筋であると思っています
また重心が上がるとも言われています
そのためジャンプなどに間接的アプローチとしてはいいかもしれません
私個人ではパラドックス呼吸にならなければそれほど重心が上がらないのでは?とも感じます
ウエストが細くなる"ような力"が加わるため、スクワットなど高負荷運動には向いてないという意見もあります
※正しく呼吸ができることで間接的にウエストが細くなることはあるかもしれませんが、ドローインをすればウエストが細くなるという訳ではありません
~ポイント~
口すぼめ呼気をする
肋骨の内旋(絞る)させる
クライアントが動きがわからない場合は、重錘などを腹部の上に置いてエクスターナルキューイングをすると良いと思います
シンクロ呼吸とパラドックス呼吸
上記のドローインをする際や他の呼吸エクササイズをする際に注意するべき動きがシンクロ呼吸とパラドックス呼吸があります
シンクロ呼吸
胸郭と腹腔が同じ動きをする呼吸
パラドックス呼吸
胸郭と腹部が異なる動きをする呼吸
アンチパラドックス呼吸と言われることが多いですが…
評価として意識的にパラドックス呼吸が可能か、分離運動ができるかくらいはチェックしても良いかもしれません
私自身この動きはダメだ!!と断言するのはあまり好きではありませんが
シンクロ呼吸をしようとしているにも関わらず、胸郭のみが動いてしまうパラドックス呼吸になってしまうと上部の胸郭しか使えていないと解釈したり、肩や頚部の筋緊張につながってしまうと考えます
ブレーシング
お腹を膨らませた状態で呼吸を行います
ドローインよりも腹斜筋活動が増加します
また脊柱を長軸方向に牽引する力が働くと言われています
(ヨガなどで言われるエロンゲーションのような効果)
それにより腰胸筋膜の適正な張力を保ちます
重心位置に対するエビデンスは見つけられませんでしたが下がるイメージです
そのためスポーツでいうコンタクトプレーなどに良いと感じます
~注意~
圧高まって痛い人(ヘルニアなど)
高齢者で呼吸止まりやすい人
3month position ex
姿勢
股関節屈曲90°以上
軽度外転、外旋位
~メリット~
外旋筋がニュートラルになる
骨頭の接触面積が多い
閉鎖筋緊張が取れる
骨盤底筋群がニュートラルポジションになる
横隔膜と対をなすため呼吸がしやすい
上前腸骨棘と10肋骨が一直線になりやすい(理想とされるポジション)
この姿勢でも肋骨外旋してしまう人は、リブフレアを助長しまっている原因を取り除いてから行うか、手で肋骨の内旋をアシストしながら行うと良いでしょう
例えば…
背部の緊張で肋骨が外旋してしまっている人は背部のリラクゼーション後に3month position exを行うなど
90-90ヒップリフト
リブフレア側の骨盤が前傾する”ことが多い”です
右リブフレアを例に方法を説明します
~方法~
①股関節と膝関節を90°屈曲位に保ちます
②骨盤を後傾位に保ったままお尻を上げます
そうすることでハムストリングスの収縮を促します
③例では右骨盤後傾、左骨盤前傾を促したいので、左膝を伸展します
この操作により左腸腰筋も働くため、骨盤前傾を促すことができ左右差を整えられます
④さらにリブフレアを抑えたい場合、右上肢を左骨盤に向かってリーチすることで右肋骨の内旋を促せます
モビリティーやスタビリティー、アジリティーの部分に関してはもっと深掘りした記事を出す予定ですのでそちらをお待ちください
普段のリハビリや治療で骨盤の前傾や後傾に対してアプローチすることは多いと思います
その際に当たり前にやれている方もいるかもしれませんが、左右差を特に注意して介入できると良いでしょう
〜以上、月末理学療法士/そう でした〜
こちらのコンテンツは「巨人の肩の上」という言葉があるように、文献などを参考に臨床経験(失敗体験も含む)も交えて発信しています
またメディカルに完璧な正解がないことをひしひしと感じます
そのため、あくまでも自身の治療の〝引き出しの一つ〟にして頂けると幸いです
参考文献、書籍
Donald A.Neumann(原著者)PaulD.Andrew 有馬慶美 日高正巳(監訳者)筋骨格系のキネシオロジー2018
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