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ATC Journal

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龍谷大学社会学部・椿原ゼミによる読書案内とエッセイ。
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なぜアメリカは同性婚を成しえたのか

[紹介書籍]小泉明子(2020)『同性婚論争「家族」をめぐるアメリカの文化戦争』.慶應義塾大学出版会株式会社  2015年6月、アメリカ合衆国において同性婚が実現された。過去に苛烈な同性愛者差別があった保守傾向の強いアメリカで、なぜ同性婚は実現しえたのか。この謎を紐解くために本書は、同性婚の実現を目指す権利運動と保守派のバックラッシュがもたらすダイナミズム、エイズパニックによる差別の激化など同性婚実現までの様々な歴史的背景を追っていくのだが、その中で私が常々疑問であった保守

性的マイノリティはなぜ、カミングアウトをするのか。

[紹介書籍]砂川秀樹(2018) 『カミングアウト』朝日新書. 「カミングアウトは、伝える側と伝えられた側との関係が作り直させる行為だ。いや、作り直される行為の始まり、という方が正しいだろう。なぜなら、カミングアウトは伝えればそれで終わり、というものでもないからだ。」(p3) 筆者は冒頭でこのように語る。  カミングアウトをする側はもちろんのこと、された側の反応、態度などからも互いに相手のことを改めて知るのだ。さらに、性的マイノリティの当事者には、カミングアウトの先に伝え