自社メディアを運営して「PMF」を実感したときの話
こんにちは。株式会社マイノリティの代表の柳澤です。
このnoteでは、何回かにわたって、「スタートアップや大企業の新規事業がPMFするために必要なこと」について解説しています。
こちらのマガジンにまとめていますので、よかったら読んでみてください。
今回は私自身のPMFの経験について振り返ってみたいと思います。
PMFというとSaaS製品や特定のプロダクトのことを想像しがちですが、実は企業が運営するオウンドメディアのような媒体にもPMF、つまり市場への適合は存在します。
というわけで、PMFした事例というのは私が運営しているサイト、「ソーシャルセリング.com」です。
このサイトは、「ソーシャルセリング」という営業手法についての情報を発信するメディアです。
当初は、いわゆるコンテンツマーケティングという手法を用いて、SEOが効く良質な記事をたくさん作ってトラフィックを伸ばしていこうと考えていました。
具体的には、「おすすめの分析ツール」のようなお役立ちコンテンツを作って関連する企業のプロダクトを取り上げ、その企業からも応援してもらおうと思っていました。うまくいけばその企業のホームページでソーシャルセリング.comを紹介してもらって、リンクを貼ってもらえるかもしれません。
1記事作るごとに10社ぐらいから被リンクを獲得して、サイトの評価を高めたいと考えていました。最初の3ヶ月ぐらいで簡易的なサイトを作って、十数本の記事を載せました。これである程度の基盤ができたと思ったんです。
でも、結果的にこの方法はうまくいきませんでした。
コンテンツが魅力的でなく、PVも伸びない
いま振り返ると当たり前ですが、ツールを紹介した企業は思ったほどリンクを貼ってくれないですし、PVも思ったように伸びません。
さらに言うと、SEO対策の記事を外注して作ってもらい、僕がレビューするという作業そのものがめちゃくちゃつまらなかったんです。
本当に全然おもしろくない仕事でした。やはりSEOだけを意識して記事を量産すると、内容も浅くなってしまう。これは読者にとって魅力的なコンテンツとは言えないんじゃないか…と感じていました。
その上、誰からも記事を紹介してもらえない、サイトの評価も上がらない。二重に辛い状況でした。
サイトをいちから立ち上げ、コンテンツマーケティングを推進することの難しさを実感しました。
しかし、その一方で「ソーシャルセリングを知る」のように、ソーシャルセリングを啓蒙するために魂を込めてつくったコンテンツは、自分の経験や知識を活かせるので書いていて楽しいし、読者にとっても価値があるように思えました。
でも当然ですが、こういった記事は量産しづらいんです。質の高いコンテンツを作るのには時間がかかります。
そんな中で、予想外の展開がありました。意外な流入経路からトラフィックが増え出したんです。
BtoBでソーシャルセリングを実践しているインフルエンサーを取材した記事を何本か出したところ、その記事を自分のXの固定ポストに貼ってくれるインフルエンサーが現れたんです。
1万人以上のフォロワーがいるインフルエンサー数人が固定ポストに貼ってくれて、その影響力は想像以上でした。
これは本当に嬉しかったです。僕が好きな人たちしか載せていないので、インタビューに行くのが楽しい。そして、魂を込めて書けるコンテンツです。
仕事としても充実感があって、長続きする方法だと思いました。
最初は小さく早く立ち上げて、荒い状態でPDCAを回しながら、SEOで流入させていこうと思ったんですが、走りながら試行錯誤していった結果、自分にとっても楽しく、サイトの運営も持続可能で、読者にとっても有益な情報を出せるようになりました。
方針転換した結果、メディアが営業支援ツールに
当初の目的としては、ソーシャルセリング.comをベースに問い合わせをガンガン取っていこうと考えていましたが、その想定も全然違ったものになりました。問い合わせはそこそこは来ますが、期待したほどではありません。現実を突きつけられた瞬間でした。
でも、その後の展開が興味深かったのです。
ソーシャルセリングをBtoB企業向けに導入していく「ABS(Account Based Social Selling)」というサービスを立ち上げたのですが、その営業をするときにソーシャルセリング.comが活きてきました。
地道に良質な記事を増やしていったおかげで、「うちはこういうメディアを運営してます」と、顧客の信頼を得るためのコンテンツになったんです。
コンテンツマーケティングや自社メディアをベースに問い合わせを取るのではなく、それを運営してること自体が強力な名刺代わりになることに気づきました。これは本当に予想外の効果で、貴重な学びでもありました。
SEOコンテンツは想定通りにはいかなかったのですが、インフルエンサーが固定ポストに置いてくれたり、何度も拡散してくれる人がいたりして、メディアのファンもできて、トラフィックがどんどん増えいきました。
まさにソーシャルセリング.comのコンセプトに近い、SNSでのトラフィック増加が実現しました。
そして結果的に、自社で展開するABSという新規事業を売るためのドライバーにもなりました。まさに小さく早く立ち上げて、うまくいった事例です。
これをじっくりとのんびりやっても、良くなるわけでもありません。むしろ、素早く行動して、フィードバックを得ながら、成功のきっかけをつかむことが重要だと実感しました。
“失敗するなら早くしろ”
小さく早く始めても、失敗するものは失敗する。Googleのラリー・ペイジも「失敗するなら早くしろ」と言いましたが、まさにそうだと思います。
この経験から学んだのは、最初から完璧を求めるのではなく、まずは小さく始めて、実際のユーザーの反応を見ながら軌道修正していくことの重要性です。
そして、自分が本当に情熱を持てるコンテンツを作ることが、長期的には成功につながるということです。
新規事業やスタートアップの世界では、予想外の展開がたくさんあります。でも、それこそがおもしろいところで、柔軟に対応しながら進んでいくことが大切です。
最初の計画通りにいかなくても、そこから学んで新しい方向性を見つけられる。それがスタートアップとPMFの醍醐味だと思います。
「スタートアップや大企業の新規事業がPMFするために必要なこと」を書いていく連載。シリーズ第6回は“私自身の直近のPMF経験"についてのご紹介でした。
次回は「PMF前にやること/やってはいけないことリスト」です。よかったらnoteをフォローしてお待ちください。
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