リードナーチャリングで成果を出すための5つの条件
このnoteではBtoBマーケティングの戦略の立て方から、個別の戦術や施策について順序をたてて解説しています。
こちらのマガジンにまとめていますのでご覧ください。
今回は前回からの続きで、「リードナーチャリング」で成果を出すための心構えと必要な条件について解説します。
たとえば、BtoBマーケティングをやっていると、よく直面する以下の問題。
これだけを聞くと、「費用対効果が合わなかった」と思いがちですが、それは「間違いである」と前回記事の最後で書きました。
なぜなら、初年度に4,700万円の受注があれば、費用対効果が合わないどころか、かなりの成功ケースであると考えられるからです。
上記の会社の受注を継続してトラッキングしていくと、2021年に8,000万円になり、2023年には1億1,000万円になり、ということがよくあります。
BtoBマーケティングで獲得したリードは1〜3年後に売れはじめるのです。
そして、そのお客さんが2年、3年とリピートしていけば、売上はもっと上がります。
顧客が自社にもたらしてくれる生涯売り上げのことを「LTV」(Life Time Value)と呼びますが、そのLTVという観点で見ると5,000万円投下したマーケティング費が3億円の成果を生むことも十分あり得るわけです。
初年度が良かったのか、それとも悪かったのか。その判断についてはもちろん提供するプロダクトによって異なりますが、マーケティングコストに対して若干売り上げが下回るくらいであれば許容範囲です。
一方で危険信号としては、マーケティングに5,000万円投下して売り上げが2,000万円程度になっている場合はうまくいっていないと考えたほうがいいでしょう。
いずれにせよ、数年かけて見込み客をトラッキングしていかないと成果が出ているのか、そうでないのかがわかりません。
「失注」さえも立派なリードナーチャリング
BtoBの場合、最初にMQL(Marketing Qualified Lead)として認識されてから実際に取引が成立するまでに2〜3年はかかりますし、その間に何度もアプローチを重ねます。
それらのデータが一気通貫で記録されていないとマーケティングの費用対効果は出せません。
私は営業が初回商談で失注することもリードナーチャリングであり、立派な「見込み客の育成」だと考えています。
そもそも、初回商談で決まることなんてほとんどないんです。初回商談で受注できる確率はせいぜい10%がいいとこ。
ただ、3年間かけてリードをトラッキングをしていると、過去に失注してから1〜2年後に掘り起こされた商談は受注率が高いことがわかってきます。
ということはつまり、「3年かけて受注につなげればいい」と割り切って考えられる。
たとえ失注したとしても、1〜2年後に再び案件化した時に決まる確率が高いので、それも含めて見込み客の育成だと考えるのが大事です。
実際、弊社の支援先で、マーケティングに力を入れている会社のデータを見ても過去に失注した案件からの受注率が一番高いですし、私が自分で営業をやっていたときもそうだったと感じています。
もちろん営業担当は「この商談で契約をとりたい!」という気持ちで行くわけですが、中長期的に俯瞰して見てみたときに、失注という結果でさえも意味のあるデータなのです。
「初回商談は自社の認知を得るためのもの」「覚えてもらうためのきっかけ」だと割り切って、ぜひ次に繋げてほしいと思います。
最初からそういう考えが社内に浸透し、仕組み化されている会社は、「5,000万円を投下して初回商談がこれだけ取れた、それなら3年後の1億円を取りに行ける」と判断でき、中長期的に腰をすえた施策を実行しやすいわけです。
リードナーチャリングで成果を出すための5つの条件
でも、そもそもの話、うちの会社にリードナーチャリングは必要なのか…?
そんなご相談をいただくこともあります。
結論からいうと、リードナーチャリングを実施して成果を出せる会社はだいたい決まっていて、5つの条件があります。
条件1:2万件以上のハウスリストを保有している
条件2:毎年1,000件以上の新規リードを獲得している
条件3:月1本以上のコンテンツが制作できている
条件4:インサイドセールスが稼働している
条件5:MA(マーケティングオートメーション)を活用できる
条件としてはこの5つ。
条件1は、そもそものリード数がなければ、メールを使ってハウスリストから案件発掘をしようとしてもあまり意味がないんです。
理想はハウスリスト数が2万件を超えること。この数を超えていればハウスリストから毎月数十件は案件発掘できるようになるので、まずは2万件までいきましょう、というお話をよくしています。
この「2万件」には明確な根拠もあります。
たとえば、2万人にメールを送ったとして、メールを見る人はその内の4,000人です(メールの開封率はよくて20%)、そこからメールのリンクをクリックする方は1,000人。で、その中から創出される商談は50件ほどとなります。この割合はそんなにぶれません。
となると、最初から500件しか送る相手がいないのであれば、商談は月に1件あるかないかですから、高額なMAツールを導入する必要はありません。
そして条件2にあるように、毎年1,000件以上の新規リードを獲得できていなくてはなりません。
すでに2万件以上のリストがあったとしても、オプトアウトされたり、退職されたりすることもあるので、新規リードを常に獲得しないと厳しいです。リードは育てると同時に獲得できている必要があります。
条件3は、月1本以上のコンテンツ制作。これはそんなにむずかしいことではないと思います。
コンテンツはnoteやブログの記事でもいいですし、ホワイトペーパーや顧客事例でも良いです。少なくても月に1本以上のコンテンツをつくる体制を用意しておきましょう。
以前も書きましたが、コンテンツのつくり方においては、購買プロセスを分解して、見込み客に刺さるようなコンテンツをつくることが重要です。
(上記記事のなかにある、キーエンスのホワイトペーパーの事例は、「センサーを買おうとしている人は助成金を申請して買っている」という顧客理解に基づいています)
条件4は、インサイドセールスが稼働していること。メールで送ったコンテンツに対して「どういう反応をしたのか」というデータがどんどん貯まってきたら、そこにアプローチをする必要があります。
フィールドセールスには“今すぐ客”の対応を行なってもらい、ニーズが顕在化していない見込み客の対応はインサイドセールスがしたほうが成果が出やすいです。
そして最後に、MA(マーケティングオートメーション)を活用できるリソースも必要です。ツールを使って分析できる人がいないといけません。
ただ、大企業じゃないとできないわけではないです。MAツールは従業員が10人くらいの会社でも使っています。
MAツールはたくさんありますが、最近よく使われているものは、Salesforce社のAccount Engagement。Salesforceを使っている人であれば連携して使いやすいです。
スタートアップにはHubSpotも人気です。この2つのどちらかが使われているケースが多いです。
最後に
私がBtoBマーケティングに携わる時には「3年以内の受注率」という指標を意識しています。
その年に獲得したリード全体から3年以内に受注できる確率はだいたい6%〜8%です。実際に弊社の支援先を見ていても、高いところであれば10%まで上振れるケースがありますが、どの会社も3年以内の受注率はほぼこの範囲におさまります。
BtoBマーケティングは1年で行うものではなく、「3年かけて結果に繋げる」という理解をしなければ無駄になってしまいます。
弊社に依頼していただく会社さんには、自力で行うと3年かかることを1年で到達できるように躓くポイントを全部お伝えするようにしています。
それだけリードナーチャリングと3年以内受注率の密接な関係性は、初見では意識しづらいものである、というお話でした。
次回の記事はちょっとしたTips集です。見込み客にメールを送る際に使えるテクニックをたくさん紹介します。
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