9/19開催レポート「防災と自治 人とまちをつなぐ”関わりしろ”を考える」
毎月第3木曜日に、地域課題や、課題だと思う種を持ち寄り、課題解決へ向けた連携が生まれる場として開催しているセッション。
今回のテーマは、「防災と自治 人とまちをつなぐ”関わりしろ”を考える」。
太白区長町を拠点に地域交流イベントや市民大学などを企画する一般社団法人ながまちマチキチ代表の加藤隆さんに、多様なセクター同士をつなぎ方や、転入者を含む地域住民や地域外の人たちが、主体的にまちに関わる仕組みづくりについて伺い、一人ひとりがまちの問題解決に取り組む社会づくりについて考えました。
1.長町のまちの構成と変遷について
長町は、JR長町駅を中心に半径2km圏内に39,536世帯、79,092人が住む地区(2023年4月時点)であり、長町、長町南、あすと長町の3つのエリアが共存している地域です。
長町には、一丁目商店街、サンカトゥール商店街、駅前商店街の3つの商店街からなる連合の「長町商店街」があり、250の事業所が入っています。
かつての長町は、人流の拠点、物流の拠点、交通の拠点として、人が集まっていたため、商店街が形成されていました。
商店街は地域コミュニティの核であり、生活の安全・安心を守る場であり、地域活動の担い手でした。
しかし、青果市場の移転(1963年)や貨物操車場の閉鎖(1984年)、秋保電鉄の廃止(1961年)や路面電車の廃止(1976年)に伴い、商店街だけが残り、商店街の役割も人を集めることに変化していきました。
2.まちの課題について
長町は、住民や来街者も増えて、イベントも多く、団体活動も活発です。
商店街や大型商業施設もあり、フリーペーパーなども充実していて、一見すると地域としてヒト・モノ・カネ・情報が充実しているように見えます。
しかし、コミュニティの希薄化やイベントも単発のものが多いため、点が多数存在していて連携や連動性が少ないのが課題です。
点と点をつなぎ合わせて面をつくることで、展開も広がりコミュニティの形成も促進されていきますが、自然に面ができるわけではなく、そこにはつなぎ役や仕掛けが必要となってきます。
そのつなぎ役や仕掛けづくりを、ながまちマチキチが行っています。
3.ながまちマチキチ(事例紹介)
近年続いた長町地域での開発も終盤を迎えて、本格的にまちづくり事業を展開すべき時期に入ってきました。
そこで、今まで培ってきた「長町地区の文化」と「新しく生まれる文化」を融合させて、「地域文化の継承・育成・発掘・発展」を進めるために、今後のまちづくりの基盤となるプラットフォームをつくろうと、2021年4月にながまちマチキチ(以下、マチキチ)を設立しました。
マチキチは少人数で運営していますが、商店街連合会や地域支援団体、学校、行政など多くの団体とつながって活動しています。
まずは住民が安全・安心に暮らせる環境を基盤とし、ヒト・モノ・カネ・情報の動きが活発に動き、賑わいが生まれることを目的としたまちづくりを考えて活動しています。
具体的な活動例をいくつかご紹介します。
これまでのプロジェクトはこちらからご覧いただけます。
①ナガマチトレジャーウォーク
長町エリアで、謎解きをしながら、親子でまち歩きをするチーム対抗型イベントを行っています。
まち歩きする中で、親子の会話が生まれ、普段は親が通らない通学路を親子で通ることで危険な箇所の再発見につながったという声もアンケートで寄せられました。
②ながまち・みんなのぽけっと大学(通称ぽけ大)
大学のゼミのようなもので、地域活動などのやりたいことを出し合い、仲間を募って活動する場です。
現在、20~50代までの幅広い世代の24名が参加しています。
ぽけ大から波及して、学生の参加も募りたいとのことで、今年から、マチキチユースサポーターズ(略称MYSマイズ)を立ち上げました。
月1回のペースで食事会を開催し、マチキチが企画する各イベントへ参加するなど大学生の活躍の場を創出しています。(現在13名の大学生が登録)
③たこっこ市
蛸薬師如来堂の境内で地域交流機会の場を設けています。
高齢の方が凧やコマやけん玉など昔ながらのおもちゃで子どもたちと遊ぶ場をつくっています。来年からは毎月開催しようと考えています。
④SABORI-BA GISUKE
もともと、飲み屋として営業していた場所をリノベーションして「大人が堂々とポジティブにサボれる場所を作ろう。それが次への活力になる」というコンセプトで2023年9月から始めたコミュニティスポットです。
現在は、平日の午前中は「ママの居場所」として地域団体にスペースを貸しています。今後は、飲食店のチャレンジショップとしても活用予定です。
このようにマチキチは、地域の点と点が縦と横につながることで顔の見える関係性をつくり、地域を活性化するために色んなイベントを行っています。
まちが多様につながることで防災につながればと願っています。
⑤あすと長町中央公園でおそとde読書(次回は10/5にあります)
大人も子どもも楽しめる、本をコンテンツとしたイベントで、読書ブースやコーヒーの販売などあります。
次回は、10月5日(土)10時~15時@あすと長町中央公園で開催されます。
4.話題提供を受けてのセッション
話題提供を受けて、3つのトピックについて、加藤さんに質問させていただきました。
①まちの関係者を増やして育てる“関わりしろ”のつくりかた
地域活動をしたい人は既に何か動いているため、私たちは「一歩踏み出せない人たち」にアプローチするようにしています。
一歩踏み出せない人たちは、毎回は参加できない、一日中は参加できないなど、地域活動に参加はしたいけれど、参加に制約がある人が多くいるため、できるだけ参加のハードルを下げて、100%の参加を求めないようにしています。
まちづくりにとって30~40代は、核となる世代ですが、その世代は責任のある仕事をしていたり、子育てをしていたり、忙しい方も多いです。
その人たちに「100%参加してください」というのは、ミッションを与えることになり、嫌がられます。
できるだけゆるく参加できるように配慮しています。
半年ぶりにまた参加した時に「久しぶり」と言ってあげられる関係性が大事で、ゆるい関係の集まりでも、母数の人数を増やすことが大事だと考えています。10人声をかけて10人手を挙げることを目指すのではなく、10人中1人でも手を挙げてくれたらラッキーと思って活動しています。
一歩踏み出せない人たちに刺激を与えると何人かは手を挙げてくれるため、その母数を増やすことが最も大事です。その一歩踏み出せない人たちにまちづくりに関心を持ってもらうためには、ある程度根気も必要で、イベントも各種多様なものを数多く用意する必要があります。
②共助の輪をつくる、つなぐ
地域と企業が関わろうとすると、地域側は大企業に声を掛けづらい、企業側も地域とどのように接点を持っていいのか分からない、と規模が大きくなればなるほど関わり方が分からなくなる傾向にあります。
その解決策にヒントをもらったのが、ある高校の先生からの「中学校の先生と接点がない」という声でした。
同じ地域の教育について話ができるように、小学校から大学までの先生を集めてつながりづくりをサポートしました。みなさん、つながりを求めていたけれど、つなぎ役がいなかったのです。
地域と企業をつなぐ時も同様に、つなぎ役が必要なのだと思います。
③まちに関わる人、多様な共助の輪が増えることと防災の関係
災害は防ぎようがないため、災害が起きた際に何ができるかだと思います。
日頃から顔が見える関係をつくることで、誰が何が得意かを把握できていると、災害時に誰に頼ればいいのかが分かり、すぐに動けます。
最初から防災に活かすためと思って活動するのではなく、誰でも気軽に参加しやすいライトなイベントを数多く企画することで次第に顔が見える関係性をつくれるのだと思います。
5.質疑応答
次回のセッションは10月17日(木)19時~20時半
テーマは「防災と自治 八木山の教訓から もしも と いつも の関係づくりを考える」です。
詳細はこちらをご覧ください。
みなさまのご参加お待ちしております!