第4話・森の危機!乾物ヒーロー反撃だ!

静かな朝の光が森を穏やかに照らし、新たな一日が始まっていた。
鳥たちの歌声が森の空気を満たし、若葉が太陽の光を浴びてきらきらと輝いている。まるで森全体が、この日が来るのを喜んでいるかのようだ。

タカシは再びしいたけ老師の元を訪れ、前日の清掃活動の成果を楽しんでいた。
みんなの努力で森は見違えるほどに生き返った。
リスたちは木から木へと巧みに飛び回り、新しく実った木の実を試すかのように、こっそりと近づいては戯れていた。
鳥たちも彼らの歌で森に生き生きとした音楽を奏で、時には地面に舞い降りては落ち葉の中から昆虫を探していた。

「すごいね、しいたけ老師。森がこんなに生き返るなんて!」タカシは感激して叫んだ。
僕の目には、森の美しさが新鮮に映った。小動物たちが安心して遊ぶ姿に、僕は自分たちの行動が正しかったと再認識した。

しいたけ老師はタカシの隣で優しく微笑みながら、静かに頷いた。
「これもすべて、タカシくんのおかげじゃよ。君が街で行動を起こし、森に関心がある人たちを連れて来てくれたおかげじゃ。そのおかげで、自然とともに生きることの大切さを、多くの人々が再認識してくれたのじゃ。わしは嬉しい。本当にありがとう、勇者よ。」

嬉しそうなしいたけ老師の姿を見て僕も嬉しかった。
けれど、やっぱり、勇者と呼ばれることには違和感がある。だって、僕にできることなんてほんのちっぽけなことだ。
昨日の森の清掃だって、実際に力仕事をこなしてくれたのは、大人たちの方だったんだ。

ぼくは、のんびりと七輪でしいたけを焼くしいたけ老師に質問してみた。
「僕は、自分が勇者と言われることにとても抵抗があります。だって、僕はまだ小学生で、なんの力も持ってないし、世界を救うなんて言われても到底無理だ、としか思えないんです。なぜ僕が勇者だと思われているんだろう。僕は一体、これからどうしたらいいんでしょうか。」
しいたけ老師は僕をじっと見た後で、焼きたてのしいたけを皿に載せながらこう答えた。
「君は、自分は勇者の器ではない、と、そう思っているのかな?」

「はい。正直、勇者だと言われるたびに胸が苦しくなります。」
「そうか。君はまだ、自分の力に気がついていないのじゃな。」
しいたけ老師は優しくそう言いながら、食べなさい、としいたけを差し出した。

しばらくの間、ぼくとしいたけ老師は言葉を交わさずにいた。
今日も焼きたてのしいたけはおいしい。このおいしさを味わってしまったら、もうスーパーで売っているしいたけは食べられないな、と思いながら、2個目のしいたけに手を伸ばした。

ふいに、しいたけ老師が話し始めた。
「タカシくん、わしはな、先週初めて会ってから昨日まで過ごして来て、君こそが世界を救う勇者だと確信しておる。この30年ほど、人々が離れ、どんどん荒れていく森を、わしは悲しい気持ちで見つめていた。しかし、どうすることもできなかった。しかしどうだ、今朝の森は。生き生きと輝いている。これはまさに、勇者による奇跡じゃ。そんなことができるのは勇者だけじゃ。」
しいたけ老師は追加のしいたけを網に乗せ、塩を振りながら話し続ける。
「じゃが、君がそう感じないのであれば、まだ目覚めの時期ではないのかもしれない。なに、焦ることはない。時が来れば、きっと君にもわかる。」

老師は優しくそう言ってくれた。しかし、勇者として具体的に何をすればいいのかは言ってくれなかった。
僕のモヤモヤした気持ちは残ったままだ。
とにかく今のままでは、僕は自分のことを勇者だなんて思うことができない。だって、子供の僕にはムダラスを倒すことなんてできない。
大根畑で何もできずにムダラス達に追い返された悔しさを思い出す。

森の手入れだって、平日は学校に行かなきゃいけないし、休みの日だって家族の予定があれば毎回来れるわけじゃない。
僕1人ではできることなんて、本当に限られているんだ。
森の再生のことを勇者が起こした奇跡と言われても、どうにもピンと来ないのだ。

モヤモヤした気持ちを抱えたまま、5つ目のしいたけに手を伸ばそうとしたその時、遠くから聞こえる機械のモーター音と木が倒れる大きな音が、静寂を破った。

小鳥たちが大きな音に驚いて、一斉に空へと飛び立った。
「一体何の音?!何が起こってるの?」
タカシとしいたけ老師は顔を見合わせ、何事かと警戒しながら音のする方へと急いだ。

森の入り口の反対側に到着すると、そこには衝撃的な光景が広がっていた。
巨大な伐採機械を使って、ムダラスの手下たちが無差別に木を切り倒しているのだ。

タカシはその場に立ち尽くし、小動物たちが恐怖で逃げ惑う姿を見て、心が痛んだ。
「どうしてこんなことをするんだ!」と大きな声で叫んだが、機械のモーター音で阻まれてしまう。
僕は自分が無力な小学生であることを思い出し、自分には何もできないと落胆した。

爆音で木を薙ぎ倒している林業用の機械の横には、トラックが止まっている。
その荷台には、1mくらいの何かの木の苗がたくさん積んであるようだ。
「あれは、杉の木の苗じゃ。奴らめ、この森を杉だらけの森に変えようとしておるのか・・・!」しいたけ老師が悔しそうな表情で話す。

「どういうこと?なぜ、わざわざ木を植え替えるの?」僕はそう聞いた。
「タカシくん、杉の木は、非常に速く成長するから、森林を商業的に利用する人々には魅力的なんじゃ。彼らは建築資材として高く売れる杉の木を植えるため、今ある木々が邪魔なのじゃろう。
しかし、今森に生えている落葉樹は、動物たちの餌を供給してくれる。大切な役目がある。
この森を、ただ一つの種類の木で埋め尽くすことは、ただ単に商業的な利益を追求する行為じゃ。それによって失われるものの方がはるかに大きい。私たちは、森の多様性を守り、すべての生命が共存できる環境を大切にしなければならないんじゃよ。」

しいたけ老師のその言葉を聞いて、僕の心の中で小さな火が灯った。
この森を、守りたい。たくさんの生き物たちが生き生きと暮らす森を、必要以上に破壊されるのは嫌だ!
けど、どうしたらいい?どうしたら、あの機械を止めることができる?
大きくてモンスターのように見える林業機械を止めることは僕だけではできない。だけど、1人ではないのなら。

「助けて!切り干しレンジャー!」

タカシの叫びが森に響き渡った。
「HAHAHAHAHA!」
まるでアメリカのアニメのような笑い声を上げながら、僕のカバンから切り干しレンジャーが飛び出した!昨日の夜、切り干し大根の煮物を食べたからか、今日は一段とマッチョな姿をしている!しわしわだけど!

「問題ない、タカシくん。僕がいる。森を守ろう!」切り干しレンジャーの声には力が満ちていた。

「ま〜たおまえか、ヒョロガリの切り干し大根が!」林業機械からダミ声が聞こえた。みると、やつらは以前に市場でやっつけたムダラスの手下、ギザミーズだ。
「今日は負けねーぞ、蹴散らしてやる!」意地悪そうに笑いながら、ギザミーズは一段と大きな音を立てて、木をへし折りながらこっちに向かって来た!

切り干しレンジャーは太陽光を集めながら力強く両手を天に掲げ、ギザミーズに必殺技を放った。
「サンシャインウェーブ!」
太陽フレアと似た強烈なエネルギー波は、機械を停止させる力がある。
その強烈で輝かしい波が機械に襲い掛かり、一瞬、機能を停止させたかに見えた。

「ぐへへへ!その攻撃は、前に一度見たんだよ!」
しかし、ムダラスの手下たちは前回の敗北から学び、今回は特別に装備を強化していた。エネルギー波を吸収するアルミの盾を自由自在に動かして、サンシャインウェーブの攻撃を無効化したのだ。
機械は再び動き始め、森を破壊し続ける。
切り干しレンジャーは悔しそうに唇を噛んだ。
「くそっ、やつらの注意を逸らしてあの盾を一瞬でも止めることができたなら・・・!」

「切り干しレンジャー、僕にも戦わせて!」
背後から、シイタケンも姿を現した。しいたけ老師が連れてきてくれたみたいで、ずいぶん後方にゼエゼエいってるしいたけ老師の姿が見える。

大丈夫かな。

「切り干しレンジャー、僕が隙を作るから、その間にエネルギーを蓄えて!」
シイタケンはそう言うと、仮面ラ○ダーが変身する時のような動きを始めた!

「乾〜燥、とおっ!!」

シイタケンの体は乾いてみるみる堅く硬化していく!
彼は干し椎茸ヒーロー、干しシイタケンにグレードアップした!
強固な防御力を最大限に発揮する構えだ!

干しシイタケンは硬くなった体をさらに丸めて、ググッと力を溜めている。
「な、なんだ、変なシワシワのばけもんが増えたぞ!?」ギザミーズ達は動揺している!
「ふ、ふんっ!このアルミの盾があればどんな攻撃も防げるのだ、うろたえるな!」
リーダーらしき男が叫び、さらに森を破壊しようと機械を動かした。

「もうこれ以上、僕らの森を破壊するのは許さん!いくぞ、必殺!ドンコアタ〜〜〜ック!!」
傘を固く閉じ、体を丸めた干しシイタケンは、ロケットのように飛び出して、ギザミーズの機械へ一直線に飛んでいった!まるで大砲の弾のようだ!

「ぐわあっ!?」
干しシイタケンが直撃した林業機械はグラッと大きく揺れて体勢を崩した。

機械は動きを大幅に鈍らせ、ギザミーズの注意がそれた。
「今だ、切り干しレンジャー!!」
その隙を切り干しレンジャーは逃さなかった。
「ありがとう、シイタケン!くらえ、サンシャインウェーブ!!!!」
再び日光のエネルギーを溜めた切り干しレンジャーから必殺技が放たれた!

どかーん!
今度は切り干しレンジャーの攻撃が直撃した。
強力なエネルギー波が機械を包み込み、機械の機能を完全に停止させた。

「まずいっすよ、兄貴!」
「くそー、またムダラス様に叱られる!お前ら、覚えてろよ〜!」
捨て台詞を吐いて、ギザミーズ達は森の外へ逃げていった。

「やったぞ、シイタケン!君の助けがなければ、これは不可能だった!」
切り干しレンジャーは勝利の喜びを共有するためにシイタケンの方を向いた。
「僕のほうこそありがとう、切り干しレンジャー!おかげで、森の平和は守られました!」
シイタケンは乾物特有のシワシワな顔で、とても嬉しそうに笑った。

ムダラスの手下たちは撤退し、森の静けさが戻った。
「切り干しレンジャー、シイタケン、君たちって本当にすごいんだね。助けてくれてありがとう。」
タカシは心からの感謝の気持ちを表した。が、切り干しレンジャーの表情はまだ重かった。

「タカシくん、今日はよく戦ったね。でもね、この森だけが危機に瀕しているわけじゃないんだ。世界中のさまざまな自然が、今、ビジネスだけを考える大人たちによって脅かされている。森や海、湖、川が毎日、無理な開発や汚染で少しずつ破壊されているんだよ。」

タカシはその言葉に驚き、同時に新たな使命感を感じた。
彼は環境問題の深刻さを理解し、自分に何ができるのかを考え始めた。けれど、何をしたらいいのかやっぱりわからない。

「僕たちに何ができるんだろう?」
たまらない気持ちになって、タカシは切り干しレンジャーに聞いた。

切り干しレンジャーはにっこりと笑い、肩を叩く。
「僕たちだけでは無理かもしれない。だけど、力を合わせればね、もっと大きなことができる。
そうだ、世界中にいる仲間たちを集めよう。一緒に、地球の環境を守る活動を広げていこう。
乾物チームを結成して、困っている生き物や環境を守るんだ!名付けて、乾物戦隊干すんジャーだ!
タカシ君、君も力を貸してくれるかい。」

タカシは深く考え込んだ。
僕1人でではなくて、乾物ヒーローたちとなら、僕だって本当に、地球の未来のために何か役に立てるかもしれない!
「うん、やろう!地球を守るために!乾物戦隊かあ、しわしわだけど、かっこいいな!」

「あの〜、そういうことでしたら、僕の旨み仲間でご紹介したい奴がいるんですが・・・。昔から日本中を冒険してきた乾物なので、きっと、いろんな仲間と繋がっていると思います。」

次回、いよいよタカシたちは海の乾物に会いにいく!
地球を守る”乾物戦隊干すんジャー”を応援してね!

【続く】

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